地平線に消える声
きみはいま、どこにいるだろうか。
どこの空気に交わっているだろうか
どこの空の下に立っているだろうか
空を見上げることはあるだろうか
どんないろの空を、どんなきもちで?
問いかけても、声は遠くに伸びるばかりで
やがて
地平線にいなくなる。
かえってかない呼びかけの答えを、
今でもわたしは夢に描く。想像する。
あのとき横目でばれないように、
だけどじーっと見つめた君の背中を。
今日のさよならをしたあとの、振り返らないで
まっすぐを見てあるく君の背中を。
届かなかった声、届けられなかった声に
想いを馳せながら。
わたしの部屋の窓辺から、外から、
スッとした空気がやわらかく部屋に落ち、
光とおだやかな影をつくる。
太陽のひかりは穏やかで、あたたかい気持ちになる。
ぽかぽかしているほどいい。
太陽の真下は、どうなんだろう。
ジリジリと暑くて、
茹だるような夏、それとも冬なのだろうか。
太陽の下を、ただお気に入りのワンピースを着て、
君に揺られて、空に、雲に揺られて歩きたい。
そんな夏を過ごしてみたかった。
着たこともない、ピンクのセーター。
白い編み目に、麦みたいに一面穂をつけた、
やさしく細やかに紡がれた糸たち。
「麦みたい」一面のその世界の上に足をおろした君は、きっとそう言うだろうな。わかんないけど。
きたこともないコーデで、わたしは街を歩ける。
ほんわりほんわりと、宙をつかむように、足は雲のうえにぽっかりぽっかり、足をおろしていく。
リズミカルに、君がはしったあとを、
僕も ほそやかに こまやかに ふんわりと ほんわりと 雲の上をなでていく。
街中を歩く瞬間、スリルを感じる
人々が交差するとき、
波のさざめきのように空気が揺れ、
交錯する。
交じり合う。
だけど、混じり合わない。
誰かが発した大きな声が、
体格のいい波の交じり合いが、
わたしにはちょっとしたスリルであり、
ちょっとビクビク。
そんな波乗りの仕方もあるのかもしれない
ススキが揺れる。
澄み切った青にたなびく君は、ススキ。
生まれた時からそこにあったけど、
いつだって僕や街のそばにいてくれた
君がサンタクロースのように特別に目の前に現れてくれる、秋と言えば君、である存在のように
子どもの頃は思っていたんだよね。
だけど、いつしか時が経つにつれ、
僕が世界を見る目はただただ純粋でいることができなくなって、
いろんな目で世界を見るようになったとき、
君と目が合うようになっても、同じ感覚を持たなくなった。
子どもの頃の感覚が、僕の胸に今もまだあるのか、
いやもう僕はこの世界を通り過ぎることしかできなくなったのか、 わからない。
あの頃みたいに君を見て、ただただ喜べたらいいなぁ
そんなふうに思う