ささやかな約束
「また明日」
何気ない一言に、
ずっと救われていた。
善い道に交わることも無く、
ただ衰弱していくしかない私に
明日への希望をくれたのはいつも貴方だった
貴方の言葉からはいつだって
未来に私を感じさせてくれた
だから信じようと思えた
夢を見ようと思った
今日はまだない貴方からの約束
貴方が私にくれた言葉を私も贈ろう
「「また明日」」
祈りの果て
貴方がいなくなった日から、
絶え間なく続く不安に吐き気がした
来る日も貴方を考えぬ日々はなく
貴方の無事を祈ってきた
その終わりの合図はいつも突然だった
見つかったと聞かされた安堵に
この世から去っていたと知った絶望に
誰が正気でいられようか
私はいつまでも無力で
盾になることも出来ず
矛になることも出来なかった
祈っても何も変わらなかった。
それでも祈るしかなかった。
祈りを聞きし者達よ、
叶えられぬ祈りの前に
何が神か、何が仏か。
心の境界線
僕を隔てた境界線は、
月日が経つ間もなく流れて消えた
いつだって前を向いてる人は
その小さな意思に気づきはしない。
心を閉ざさないことで精一杯で
顔を上げたときには、
視界を阻むほどの脅威がそばに居る。
それが続くなら線だけでは足りなくて。
線を積上げて壁を造った
これでよかったはずなのに、
喪失の思いだけ募るばかりで。
何を失ったかさえ分からないけれど、
今が正しいと信じ続ける道しかなくて。
脅威はもう身を蝕むことはないというのに
胸が孕むこの霧は何を示しているんだろうか
キンモクセイ
君が纏う香りは金木犀だっただろうか
年が過ぎる度君を感じられなくなっていく
1つ目は君の声を。
紡いだ言葉は鮮明だというのに
聞こえるはずの音は砂嵐のようだ
2つ目は君の顔を。
僕が覚える君の顔はぼやけてしまっているが、
笑ったときの小皺だけを覚えている
3つ目は君の言葉を。
僕の中の君はもう言葉を紡ぐことさえ許されなくて
いるのかすら分からなくなった。
君を忘れたくないと願うほど
残酷に僕は君を失っていく
それでも、あの儚い季節が来ると
君を傍に感じられるから
君の香りはきっと金木犀
終わらない問い
世の中は解のないことだらけで
誰かが諦めた問いだけが道端に落ちている
幸せの四文字を辿った
いくつもの死に体を抱きしめた
なんで抱きしめたのなんて問いの
答えも分からないまま
続く人生の目的地に僕の姿はありますか?
目的地も分からないのにその先を願ってしまう。
存在するかも分からない、
僕の最終地点に答えがあると信じて
目を凝らして足を踏み出して
終わらせるための1歩を