よつば666

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1/21/2025, 1:29:41 AM

お題『明日に向かって歩く、でも』(今回の物語はお題『風のいたずら』の続きです)

 委員長は買い物帰りに先日麦わら帽子を届けに来てくれた男性と偶然に再会した。そして約束通り男性は委員長の家の客間で麦茶をご馳走になっている。

委員長「ごめんなさい。まだ部屋の中暑くて……」

男性は委員長が持ってきたおしぼりで顔を拭う。男性の名は【芳野 月(よしの ゆえ)】(20歳)で大学生だと名乗った。

芳野「大丈夫やで。おしぼり冷たいから丁度ええよ」

なかなか汗が引かないがそれでも笑顔で応える芳野。
委員長が空になったコップに麦茶を注ぐ。

委員長「芳野さん。……あの……商店街でお見かけした時の話なのですが、何か悩んでらっしゃいませんでしたか?」

芳野「えっ?!」

芳野は驚いてそれ以上何も言えなかった。

委員長「私(わたくし)の勘違いでしたら申し訳ありません」

委員長は俯いてしまった。長年学校で学級委員長をしていて自分の近くや同じクラス人の不安なオーラに少し敏感になってしまいついおせっかいになってしまう


芳野「当てられてびっくりしたわ。秋更(あきざら)ちゃん。超能力者(エスパー)なん?」

委員長「ち、違いますよ」

芳野は淡々と悩み事を委員長に話した。それは進路の事だった。母親の実家がある京都の公立の医大に去年奨学金を借りてまで入学したけど、自分が本当に医者になりたいのか今考えると分からなくなったらしい。

委員長「これは私、個人の意見ですがそんな先の未来を見据えるより、今は明日に向かってゆっくり確実に今しか出来ないことを歩まれた方がよろしいのではないでしょうか。それでも立ち止まって悩んでしまったら私が一緒に打開策を考えますから!どうかおひとりで悩まないで勇気を持ってお話しして下さい」

と芳野に言いながら、本当は自分にも言い聞かせていた。冬の初めに家に訪れる姉への事で祖父母や友人にどう打ち明けるか頭の隅で委員長は悩んでいるのだった。

End

1/20/2025, 2:44:43 AM

お題『ただひとりの君へ』(今回の話はお題『あなたのもとへ』の続きになります)

 今だに手付かずの英語の課題、英和辞書を意味もなくパラパラを捲る。すると机の隅に置いていた携帯からピコンっと着信音が鳴った。萌香は気だるそうに画面を見ると【メール1通受信】と通知が来た。開いてみると送信者は大神であった。
萌香は嬉しくなってぱあぁと顔が明るくなる。

萌香「大神君だぁ。なんだろう」

『To 子猫ちゃん  From 大神天河
小真莉(こまり)は妹で健太(けんた)は弟やで。ホンマに間違ってごめんな。あと延期にしとったイルミネーションのやけど8/4〜8/6のどれかで行かへん?友達何人でも誘ってええから!ほな、返信待ってるわ」

萌香「妹ちゃんと弟君だったんだぁ。なぁ〜んだびっくりしたぁ」

萌香の中で小真莉と健太は親戚の子供で遊びに来ているとばかり思い込んでいた。

萌香「メール返さなきゃ。2人はいつが空いているのかな?少し遅い時間だけど電話してみよう」

萌香は連絡アプリLe Lien(ルリアン)を起動し、仲良しグループから2人に電話をかけた。

<<プルルル>>……<<ガチャ>>

最初に出たのは委員長だ。

委員長『あら、こんばんわ輪通(わづつ)さん。どうしたの?』

萌香「夜分遅くにごめんね。えっと延期になったイルミネーションの件なんだけど……」

遅れて真珠星(すぴか)も通話に参加する。

真珠星『2人共こんばんわ!萌香遅れてごめんね』

萌香は「ううん」と電話越しに首にを左右に振る。要件を2人に話すとどの日にちも今は大丈夫と答えてくれた。

委員長『他に変更はないか、確認をお願いしてもいいかしら?』

萌香「うん。任せて!!返信ついでに聞いてみるね。2人共ありがとう〜。じゃあバイバ〜イ」

通話を切った。忘れないように萌香は先に携帯のアプリ機能スケジュール帳にイベント追加し、ただひとりの君(大神)への返信を返すのだった。

End

1/19/2025, 7:26:19 AM

お題『手のひらの宇宙」

 大神小真莉(おおがみこまり)は机に向かい夏休みの自由研究について悩んでいた。大神家次男の健太(けんた)と共同部屋なので、小真莉の真後ろには健太が夏休みの宿題に取り組んでいた。

小真莉「健兄(けんにい)、自由研究やった?」

健太「ずっとしとるよ」

小真莉「ずっと?!終わってへんの?」

健太は手を止め小真莉の方へ椅子を半回転させる。

健太「うん。オレの自由研究は夏休み最終日で完成やからなぁ」

小真莉「小真莉も同じのしようかな」

健太「小真莉には無理やし、危ないからやめた方がえぇわ」

小真莉「何それ!?ってか健兄の自由研究なんなん?」

健太「晩御飯の献立日記」

晩御飯の献立日記とは、健太が夏休み入ってから終わるまで毎日の晩御飯を1人で作ったり、継母(母)や大神天河(アニキ)と一緒に作る等自分がその日食した晩御飯を絵日記にしてつけているのだ。夏休みに入ったその日に思いつき、真面目にコツコツと出来る健太にはピッタリな自由研究と言えるだろう。

小真莉「小真莉、それイヤやわ」

健太「誰もしろなんて言うてないやろ。小真莉はどういう自由研究がしたいん?」

小真莉「すぐに終わるのがえぇなぁ」

健太「それやったら––––」

と席を立ち本棚に向かい、一番下の段にある図鑑を手にして、表紙を小真莉に見せる。

小真莉「宇宙図鑑?」

健太が提案した自由研究は『手のひらの宇宙』と言うタイトルをB5サイズの無地のノートに書く。その内容は太陽系の惑星を一つ一つ図鑑を見ながら手書きで写す。小学3年生から理科は始まるが宇宙に関して勉強するのはもう少し後かも知れない。しかし自由研究なら先行しても問題ないだろう。それに太陽系だけなら8個で終わる。仮に太陽を入れても9個しかない。すぐに終わらしたい小真莉にはうってつけである。

健太「うん。丸描いて、色塗って、惑星の大きさあとその惑星について思ったことを一言書いたら終わり(しまい)や。簡単やし、小真莉にも出来ると思うで」

小真莉「例えば?」

健太は図鑑を開き水星のページを捲り広げて説明する。

『太陽から1番近いところを回っている。大気や海がない。昼間の温度は最高で430℃、夜は-160℃。大きさ約4,879km 【ひとこと「1番小さい惑星やし、太陽に近いのに燃えないのは何故だろう」』

健太「……ってな感じで書いたらえぇんちゃう?」

小真莉「ふ〜ん。分かったやってみるわ」

健太「完成したら、確認したるで」

小真莉「え〜。1番初めは大神天河(お兄ちゃん)に見せるって決めたもん。健兄は最後やで」

ニヤリと少し意地悪な顔で話す。提案した健太よりも自分が1番好いている人から見せて褒めてもらいたい小真莉であった。

End

1/18/2025, 8:31:56 AM

お題『風のいたずら』(再投稿)

 8月初めの朝。委員長(可崘)は庭で祖父が趣味である家庭菜園の雑草抜きの手伝いをしていた。

祖父「可崘(かろん)、日射病になるといけないから、麦わら帽子を被りなさい」

委員長「おじいちゃん、まだ大丈夫よ。さっき朝日が昇ったばかりじゃない」

しかし祖父は縁側へ行き麦わら帽子を手に取り委員長の頭に被せた。

祖父「なってからじゃ、遅いんだよ」

委員長「……それもそうね。ありがとう」

祖父が委員長の頭から手を話すと、急に突風が吹いた。風のいたずらとでも言えるくらいに被った麦わら帽子が飛び家の塀を軽々と超えてしまった。

委員長「あ!?待って。私(わたくし)の麦わら帽子」

委員長は庭から家の玄関へ行き塀の外に周った。けれどそこには麦わら帽子はなかった。

委員長「どこへ行ってしまったのかしら?」

周りを見ても無い。向かえの家に頼んで庭に入れてもらい探した。それでも見つからなかった。
今度は自分の家と隣の家の屋根の方を探す。それでも見つからず委員長は俯き、壁にもたれかかった。

委員長「本当にどこに行ってしまったの」

すると自分の家の左2軒先からこちらに歩いてくる1人の男性の姿が見えた。彼の右手には委員長の探しているものがあった。思わず委員長はその男性へ駆け寄る。

委員長「あの、すみません。その麦わら帽子見せてもらってもよろしいですか?」

男性「え?はい。どうぞ」

委員長「ありがとうございます」

男性はじっと麦わら帽子を確認する委員長を見て訪ねた。

男性「あのぅ?……秋更(あきざら)さんのお宅ってどこですぅ?」

委員長「私(わたくし)の家ですが?ご用件をお聞きしますよ」

男性「えぇねん、えぇねん。大した、用事ちゃういますから……あんさんにお渡した麦わら帽子、この近くの神社で拾っただけやから……」

委員長「そんな遠くまで、飛ばされたんですか!?……どうりで見つからないわけだわ(笑)」

男性「もしかしてタグの後ろに名前書いとった麦わら帽子の落とし主さんか!?」

委員長は笑顔で答えた。

委員長「はい。先程の風のいたずらで飛ばされてしまい探していたのです。わざわざ届けて下さってありがとうございます」

委員長は深々と頭を下げて礼を言った。続けて––––

委員長「あの、お礼と言ってなんですが麦茶でもお飲みになりませんか?」

男性は顔の前で片手を左右に振り遠慮していた。すると庭にいた祖父が玄関の入口まで出て来て、委員長の名前を呼んでいた。

祖父「かろ〜〜ん!!」

委員長「は〜〜い!……すみません。家のものに呼ばれてしまいましたので、ここで失礼します。縁がありましたらその時は麦茶ご馳走になって下さいね」

委員長はまた深く頭を下げ家の方へ入っていくのだった。

End

1/17/2025, 9:15:40 AM

お題『透明な涙』

 大神小真莉(おおがみこまり)はポロポロと透明な涙を流しながら晩御飯の冷やし中華を食べていた。

健太(けんた)「何もなくことないやろ。明日には帰るって兄貴言ってたし」

小真莉「そうやど……でもぉ〜((泣))」

ずるずると冷やし中華を啜る。ついでに鼻水も啜っていた。涙いて少し目が腫れる、その姿を兄貴に見せてやりたいと心の底から思いながら健太は黙々と晩御飯を食べていた。すると母親が笑顔で小真莉に向かい話かけた。

母親「小真莉ちゃん。泣くか、食べるかどっちかにしなさい。健太くんと一緒に作った晩御飯が美味しく食べられへんやないの」

ピタリと小真莉は泣くのをやめ、透明な涙は枯れた。
笑顔の裏の母の顔が怖さが数分毎に増しているのを小真莉は肌で感じるのだった。

End

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