よつば666

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お題『明日に向かって歩く、でも』(今回の物語はお題『風のいたずら』の続きです)

 委員長は買い物帰りに先日麦わら帽子を届けに来てくれた男性と偶然に再会した。そして約束通り男性は委員長の家の客間で麦茶をご馳走になっている。

委員長「ごめんなさい。まだ部屋の中暑くて……」

男性は委員長が持ってきたおしぼりで顔を拭う。男性の名は【芳野 月(よしの ゆえ)】(20歳)で大学生だと名乗った。

芳野「大丈夫やで。おしぼり冷たいから丁度ええよ」

なかなか汗が引かないがそれでも笑顔で応える芳野。
委員長が空になったコップに麦茶を注ぐ。

委員長「芳野さん。……あの……商店街でお見かけした時の話なのですが、何か悩んでらっしゃいませんでしたか?」

芳野「えっ?!」

芳野は驚いてそれ以上何も言えなかった。

委員長「私(わたくし)の勘違いでしたら申し訳ありません」

委員長は俯いてしまった。長年学校で学級委員長をしていて自分の近くや同じクラス人の不安なオーラに少し敏感になってしまいついおせっかいになってしまう


芳野「当てられてびっくりしたわ。秋更(あきざら)ちゃん。超能力者(エスパー)なん?」

委員長「ち、違いますよ」

芳野は淡々と悩み事を委員長に話した。それは進路の事だった。母親の実家がある京都の公立の医大に去年奨学金を借りてまで入学したけど、自分が本当に医者になりたいのか今考えると分からなくなったらしい。

委員長「これは私、個人の意見ですがそんな先の未来を見据えるより、今は明日に向かってゆっくり確実に今しか出来ないことを歩まれた方がよろしいのではないでしょうか。それでも立ち止まって悩んでしまったら私が一緒に打開策を考えますから!どうかおひとりで悩まないで勇気を持ってお話しして下さい」

と芳野に言いながら、本当は自分にも言い聞かせていた。冬の初めに家に訪れる姉への事で祖父母や友人にどう打ち明けるか頭の隅で委員長は悩んでいるのだった。

End

1/21/2025, 1:29:41 AM