よつば666

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お題『風のいたずら』(再投稿)

 8月初めの朝。委員長(可崘)は庭で祖父が趣味である家庭菜園の雑草抜きの手伝いをしていた。

祖父「可崘(かろん)、日射病になるといけないから、麦わら帽子を被りなさい」

委員長「おじいちゃん、まだ大丈夫よ。さっき朝日が昇ったばかりじゃない」

しかし祖父は縁側へ行き麦わら帽子を手に取り委員長の頭に被せた。

祖父「なってからじゃ、遅いんだよ」

委員長「……それもそうね。ありがとう」

祖父が委員長の頭から手を話すと、急に突風が吹いた。風のいたずらとでも言えるくらいに被った麦わら帽子が飛び家の塀を軽々と超えてしまった。

委員長「あ!?待って。私(わたくし)の麦わら帽子」

委員長は庭から家の玄関へ行き塀の外に周った。けれどそこには麦わら帽子はなかった。

委員長「どこへ行ってしまったのかしら?」

周りを見ても無い。向かえの家に頼んで庭に入れてもらい探した。それでも見つからなかった。
今度は自分の家と隣の家の屋根の方を探す。それでも見つからず委員長は俯き、壁にもたれかかった。

委員長「本当にどこに行ってしまったの」

すると自分の家の左2軒先からこちらに歩いてくる1人の男性の姿が見えた。彼の右手には委員長の探しているものがあった。思わず委員長はその男性へ駆け寄る。

委員長「あの、すみません。その麦わら帽子見せてもらってもよろしいですか?」

男性「え?はい。どうぞ」

委員長「ありがとうございます」

男性はじっと麦わら帽子を確認する委員長を見て訪ねた。

男性「あのぅ?……秋更(あきざら)さんのお宅ってどこですぅ?」

委員長「私(わたくし)の家ですが?ご用件をお聞きしますよ」

男性「えぇねん、えぇねん。大した、用事ちゃういますから……あんさんにお渡した麦わら帽子、この近くの神社で拾っただけやから……」

委員長「そんな遠くまで、飛ばされたんですか!?……どうりで見つからないわけだわ(笑)」

男性「もしかしてタグの後ろに名前書いとった麦わら帽子の落とし主さんか!?」

委員長は笑顔で答えた。

委員長「はい。先程の風のいたずらで飛ばされてしまい探していたのです。わざわざ届けて下さってありがとうございます」

委員長は深々と頭を下げて礼を言った。続けて––––

委員長「あの、お礼と言ってなんですが麦茶でもお飲みになりませんか?」

男性は顔の前で片手を左右に振り遠慮していた。すると庭にいた祖父が玄関の入口まで出て来て、委員長の名前を呼んでいた。

祖父「かろ〜〜ん!!」

委員長「は〜〜い!……すみません。家のものに呼ばれてしまいましたので、ここで失礼します。縁がありましたらその時は麦茶ご馳走になって下さいね」

委員長はまた深く頭を下げ家の方へ入っていくのだった。

End

1/18/2025, 8:31:56 AM