お題『冬晴れ』
伊多孝雄(いだたかお)の兄、藤雄(ふじお)が住むNZL(ニュージランド)を訪れて2日目の朝を迎えた。
孝雄は洗面所で顔を洗いリビングに行くと。藤雄がキッチンで朝食を作り、リビングテーブルに並べていた。
孝雄「おはよう」
藤雄「おう、おはよう。よく眠れたか?」
孝雄「ま、まぁまぁかな」
孝雄は数年前から不眠症に悩まされている。医者によれば精神的なストレスが原因だろうと診断され、どうしても寝付けない時は睡眠薬を服用するように処方された。ストレスの原因は解っている。しかし対処法が難しい。だから少しでもストレスを軽減させる為に日本を離れ藤雄のいるNZLへ訪れたと言っても過言ではない。
孝雄「兄さんが朝食を用意しているのかい?」
藤雄「朝食だけじゃないぞ。平日は俺が家事を担当している。フィラは忙しいからな、孝雄が起きる前に仕事へ行ったぞ」
藤雄の妻、ミクロフィラ(愛称はフィラ)は観光案内所で働くキャリアウーマンである。
藤雄が子供たちを起こしに行った。子供達は日本と違い学校に通っているようだ。
孝雄は1人で黙々と朝食を食べた。食べ終わった食器は流し台へ置くように言われている。その後孝雄は部屋に戻り、出かける準備をしながら、観光で訪れる場所の天気を携帯で調べていた。すると嬉しいことに今日の昼間は冬晴れであると表示されている。だが、NZLの天気は変わりやすい。雨具をボディバックの底に入れるのだった。
End
お題『幸せとは』
カラオケ店で友達に誕生日を祝って貰ったその日、友達と夕食を駅近にあるファミレスで済ませて、家に帰った。
萌香「ただいま〜」
と言って灯りの点いていないリビングの照明に電源(スイッチ)を入れると−−−−。
パ〜ン!パパ〜ンッとパティー用のクラッカーの音が鳴り、萌香に紙吹雪がかかる。
両親「誕生日おめでとう〜!!」
萌香は突然の出来事で驚いていた。
萌香の母親「サプライズ大成功〜🙌」
萌香の父親「だな👍萌香も16歳かぁ」
萌香の父親は目頭が熱くなり天井へ仰ぎ目頭を押さえて涙が出るのを我慢した。
萌香の母親「やだわ、パパったら泣いたりして(笑)」
萌香の母親は萌香についた紙吹雪を床に落としながら話しかける。
萌香の母親「萌香。改めて16歳、おめでとう。ママとパパのところに来てくれてありがとう」
と言って萌香の母親は白い無地の紙袋を萌香の手に渡す。萌香はそれを受け取った。紙袋の中にはプレゼント袋が入っている。
萌香「開けていい?」
萌香の母親「もちろん」
袋の中を開けると白の長財布と小さな香水のボトルが入っていた。香水の香りは萌香が好きな柑橘系でスイートオレンジの香りだ。
萌香「パパ、マミィありがとう。あたし大事に使うね」
『私達にとって幸せとは……隣にていつもと変わらない日常と笑顔が送れることが幸せ。あなたにはそう思える誰かとこの先素敵な出会いと幸せが訪れますように』
と書かれたメッセージカードが紙袋の底に入っていることを萌香は自分の部屋に戻ってから気づくのだった。
End
お題『日の出』
体が重く寝苦しいと感じ、目が覚めた。
カーテンの隙間から太陽の光が射している。冷房のタイマーはとっくに切れていて部屋の中が暑い。
ベットから起きあがろうとしたが、体がまだ重い。
目線を足元に向けると……妹の小魔莉(こまり)が俺の体の上で寝ていた。
大神(天河)「原因、お前か!?」
とツッコミを入れる。おそらく夜中起きてトイレへ行った帰り、自分の部屋に戻らず大神(長男天河)の部屋に入りベットの上に乗ったに違いない。大神は小真莉を起こさないようそっと抱え、小真莉の部屋のベットまで運ぶ。その時ふと壁にかけられた時計に目をやると朝の4時半前、ちょうど日の出したばかりの時間だった。
大神「あと1時間半くらいは寝れそうやな。小真莉起きてきたらうるさいから早よ自分の部屋帰ろう」
そう言って静かに扉を閉めた。
End
お題『今年の抱負』第2作目作品小説73話
7月31日今日は萌香の誕生日。3人は某有名なカラオケ店に来ていた。
完全ではないが、個室感がある。多少の大声でもカラオケ店だから許されるだろう。何よりソフトドリンクやアイス等無料でサービスしている。加えて飲食の持ち込みも可能であるときた。
別に歌わず、BGMとして好きな曲を入れて楽しめばいいし、カラオケの機種と曲によるが本人が歌っている映像だって観れるのでカラオケ店は利用者の使い方とその時のシチュエーションで考えるととてもコスパが良いと真珠星(すぴか)は、委員長と相談し場所を選んだ。
部屋に入って早々にコンビニで購入したケーキを食べた。その後1時間ばかり歌ったところで萌香は2人から誕生日プレゼントを受け取る。早速プレゼント袋を開けと委員長からは白熊が描かれた冷感タオルに汗拭きシート等暑さ対策グッズ。真珠星からは縦型の淡いピンク色の生地で作られた携帯収納バックと白ブチのサングラスだ。
萌香「わぁ。2人ともありがとう〜!大事に使うね!」
委員長「えぇ。」
真珠星「うん。萌香、サングラスかけてみてよ」
萌香「似合う?」
真珠星「まぁまぁ。かな(笑)」
萌香「そんなことないでしょ〜」
萌香はカバンから手鏡を出して自分の顔を映し確認した。
萌香「ちょっとだけ、大きいのかな?委員長どう?」
隣に座っている委員長に顔を向けた。
委員長「似合ってるけど、言われてみれば大きいかも……でも気にするほどでもないわ」
萌香「そっか。ありがとう、真珠星」
真珠星は頷きオレンジジュースを飲んだ。
委員長「輪通(わづつ)さん、16歳になった今年の抱負は何?」
真珠星からマイクを差し出され受け取った萌香は
萌香「もちろん!彼氏を作ることだよ!!」
と宣言するのだった。
End
お題『新年』第2作目小説 72話
今から10年前伊多孝雄(いだたかお)が萌香達の通う高校の校長に赴任する前の話。
新年の元旦から伊多家では親戚が続々と集まって男達は真昼間から宴会を始めていた。昭和感が抜けない大人達が多いので台所は『男子禁制』となっている。
男達が呑んでいる間母や嫁そして娘達等女性陣はお酒やおつまみを作ったり配膳していた。おせちがあるのだが、違うものが食べたいと父が言い出したからだ。
私は親戚の従兄弟や叔父さん達に囲まれながら空いたグラスを見つけてはお酌している。
孝雄「兄さん遅いな……」
そう思っていた矢先玄関から大きな声が聞こえた。
「ただいま〜!」
その声は兄の藤雄(ふじお)だった。玄関からまっすぐ
宴会場と化しているリビングに現れた。隣には金髪の女性が兄と腕を組んでいる。皆、兄とその女性に注目している。兄は両親に向かって一言言った。
藤雄「父さん、母さん。俺、隣にいるフィラと結婚するから!よろしく〜」
この場にいる全員が藤雄の突然の結婚発表に驚いた。私は驚きのあまり持っていたビール瓶を落としそうになった。
孝雄「に、兄さん。本気なの?」
藤雄「本気さ、そうじゃなきゃフィラをこの場に連れて来なさ(笑)」
孝雄「で、でも邦恵(くにえ)さんは……」
邦恵さんは兄が20代前半にデキ婚した相手である。兄が言うには邦恵さんとは2年前に離婚しているようで、子供の親権は邦恵(前妻)さんが持った。子供といってもすでに成人(20歳)を迎えているので教育費を支払う義務はないそうだ。因みにフィラさんと兄は仕事関係で知り合ったらしくお互い再婚同士だそうだ。
フィラさんは兄の腕から離れ母と父のところへ行き挨拶をしている。その後親戚の1人1人にカタコトの日本語で挨拶を交わしている。
父は「勝手にしろ!」と言って緩(ぬる)くなった日本酒の入った徳利を手にして直に呑み干した。
End