よつば666

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お題『新年』第2作目小説 72話

 今から10年前伊多孝雄(いだたかお)が萌香達の通う高校の校長に赴任する前の話。
 
新年の元旦から伊多家では親戚が続々と集まって男達は真昼間から宴会を始めていた。昭和感が抜けない大人達が多いので台所は『男子禁制』となっている。
男達が呑んでいる間母や嫁そして娘達等女性陣はお酒やおつまみを作ったり配膳していた。おせちがあるのだが、違うものが食べたいと父が言い出したからだ。

私は親戚の従兄弟や叔父さん達に囲まれながら空いたグラスを見つけてはお酌している。

孝雄「兄さん遅いな……」

そう思っていた矢先玄関から大きな声が聞こえた。

「ただいま〜!」

その声は兄の藤雄(ふじお)だった。玄関からまっすぐ
宴会場と化しているリビングに現れた。隣には金髪の女性が兄と腕を組んでいる。皆、兄とその女性に注目している。兄は両親に向かって一言言った。

藤雄「父さん、母さん。俺、隣にいるフィラと結婚するから!よろしく〜」

この場にいる全員が藤雄の突然の結婚発表に驚いた。私は驚きのあまり持っていたビール瓶を落としそうになった。

孝雄「に、兄さん。本気なの?」

藤雄「本気さ、そうじゃなきゃフィラをこの場に連れて来なさ(笑)」

孝雄「で、でも邦恵(くにえ)さんは……」

邦恵さんは兄が20代前半にデキ婚した相手である。兄が言うには邦恵さんとは2年前に離婚しているようで、子供の親権は邦恵(前妻)さんが持った。子供といってもすでに成人(20歳)を迎えているので教育費を支払う義務はないそうだ。因みにフィラさんと兄は仕事関係で知り合ったらしくお互い再婚同士だそうだ。
フィラさんは兄の腕から離れ母と父のところへ行き挨拶をしている。その後親戚の1人1人にカタコトの日本語で挨拶を交わしている。
父は「勝手にしろ!」と言って緩(ぬる)くなった日本酒の入った徳利を手にして直に呑み干した。

End

1/2/2025, 5:23:09 AM