お題『冬になったら』
双子の姉からの手紙の書き出しは大体決まっていた。
『“春“になったら〜』、『“夏“になったら〜』、『“秋“になったら〜』と四季が入っている。
今回届いた手紙の書き出しは『“冬“になったら』
だった。今、季節は夏真っ盛り。季節外れにも程がある。手紙の内容はこうだ。
『愛する妹へ 冬になったらあなたは何をしていますか?私(わたし)は雪で雪だるまや、かまくらを作るのが好きです。もう15歳になるのに子供っぽい遊びをするでしょ(笑)だって田舎だもの。この前、村の集会で長老達が話している内容を偶然聞いてしまいました。私は16歳の誕生日に見知らぬ男性と結婚させるらしいのです。村の掟に基づいて。………助けて!可崘(かろん)私はまだ結婚したくない!それに彼氏もいるのよ!お願い!!助けて!!』
最後に書き殴った文字を見て私(わたくし)は怒りと寒気がした。
【私(わたし)の代わりになって】
冬になったら私は16歳になる、その時私の未来はどうなってしまうのかしら……。
End
お題『はなればなれ』
家族と離れ離れなってもう10年も経った。
私(わたくし)は5歳の頃に今住んでいる(父方の祖父母の)家へ預けられた。
家のしきたりとかなんとかで……。
私が13歳になった頃祖母が教えてくれた。
私の家系では双子が産まれると禍いをもたらすとされているらしい。だから3歳の時に何かしらの試験を行い、出来が悪い方が“禍い子“となる。つまり今、祖父母の家で暮らす私は“禍い子“として両親から嫌われている。2〜3ヶ月に1度、双子の姉から手紙が届くその内容が本当のことだろうか…… 。
だったら私は両親と離れ離れになって幸せと思う。
優しく我が子のように愛情を注いで育てくれている祖父母に私は離れたくない。そう強く思うのだった。
End
お題『子猫』
スーパーから家に戻り早速闇鍋風ピザ作りの料理を始めた。完成するまで約2時間半ほど掛かってしまいもはや昼食ではなくおやつの時間帯になろうとしていた。ピザの完成度は美味しい箇所最高だった。しかしチーズとの組み合わせの悪い食材の箇所はなんとも言えない味のようだ。一言でいうと不味い。
4人はピザを食べ終え、今度はポテトチップスやスナック菓子を食べ始めた。
大神が1枚ポテトチップスを食べ終えて話出す。
大神「船星、一つ質問ええか。あのBBQの時に物陰から見てた女子にお前は何をしようとしてたんや?好きで見てたと違ういうとるし……。他に考えるとしたら……痴漢か?あかんでそれは犯罪やで」
僕は慌ててすぐさま反論した。新たな誤解を生まない為に。
船星「ちちち、違うよ!そそ、そんな事考えてないよ」
僕はゴクリと唾を飲み意を決してあの時思ったことを正直に話した。
船星「昼休み僕らグランドでサッカーをしている時屋上で叫んでいる女子がいたよね。一時期その子を“子猫“ちゃんって大神君が言ってたの覚えている?」
大神は首を傾げていた。どうやら忘れてしまっているらしい。僕は続けて話す。
船星「その子猫ちゃんを偶然BBQの時見つけた僕は、屋上から誰を呼んでいたのかどうしても知りたくて……話掛けようとしていたんだ」
生徒A「別に誰でも良くね?」
船星「そ、そうなんだけど。僕、何か気になることがあると納得するまでずっと気になってしまうんだ。それに……僕の思い過ごしだと思うんだけど、一瞬だけ目が合った気がしたんだ」
生徒B(まるた)は同情した眼差しで船星の肩をポンと叩く。
まるた「船星の気持ちはよくわかった」
船星「ほ、本当!?」
しばらく黙っていた大神は急に立ち上がり船星を見下ろし人差し指を差し一言放った。
大神「お前やっぱナンパしようとしてたんか!?」
船星は心の中で叫んだ。
『どうしてそうなるんだよ〜〜〜!!」
僕は正直に話す相手を間違ったかも知れない。
End
お題『秋風』
船星(ふなぼし)の家の近所にあるスーパー内で漢気じゃんけんをして負けた大神は生徒A、Bを見て呆れていた。
大神「お前ら、船星を見習って少しは遠慮せぇや」
生徒B「負けた奴が悪い」
生徒A「うん、うん。女々しいこと言うなよ」
船星「お金足りなくなったら僕が出すよ」
大神「だ、大丈夫や。気にすんなや」
と言った後会計をすると大神の有り金を全て出しても足りず不足分を船星が支払った。
大神「船星、ごめんなぁ。足りんかった分はバイト代入ったら返すわ」
船星「別にいいよ」
大神「あかん!金の貸し借りはきっちりせんと。どんなに中の良え恋人や夫婦でも“秋風が吹く“って言うやろ」
生徒A「それを言うなら“金の切れ目が縁の切れ目“じゃね?」
全員一瞬沈黙の後大神を除いた3人は爆笑していた。
大神は恥ずかしくなって一足先にスーパーを出て行ってしまった。3人は慌てて大神の後を追う。
秋風が聞こえてくるのはまだまだ先、夏の暑い日差しの中大神達は船星の家に帰って行くのだった。
End
お題『また会いましょう』
パジャマパーティーで萌香の家に訪れた真珠星(すぴか)と委員長は目の前のキングペンギンの剥製に驚いていると後ろから萌香の母親が嬉しそうに2人に話しかけた。
萌香の母親「よく出来た剥製でしょう〜。友達から譲ってもらったの」
と言って萌香の母は作りかけの夕食の準備をする為リビングのドアへ向かう。いいそびれたのかドアノブに手をかけたまま振り向き真珠星達にご飯が出来るまで自由にして良いからと伝え、ドアを開きリビングの奥にあるキッチンへ向かった。
剥製の前で立ったままの二人に痺れを切らした萌香は二人の手を取り、2階にある自分の部屋へと連れて行く。
荷物を置いて少しリラックスしたところで萌香の母が夕食が出来上がったと伝えに来た。
夕飯は煮込みハンバーグとサラダと冷製スープという洋食だ。夕食を終え順番に風呂に入った。萌香の母が2階の客間に3人の布団を用意したからと言ったのでその部屋へ3人は飲み物や軽いお菓子を持って向かった。いよいよパジャマパーティーの始まりだ。
話の内容は自分の好きなこと、今ハマっているもの、学校のことや恋愛のことを3人は語り合った。
萌香が恋愛のことで悩んでいるようだ。真珠星達は興味津々で聞いている。
萌香「屋上で見つけたあのかっこいい人、実は……この前の遠足の時にあったの!」
委員長は探偵や警察になった気分で話す。
委員長「……つまりあの人(星)は同い学年ってことね」
萌香は首を上下に振り、今更恥ずかしくなったのか顔をかけ布団で覆う。数分後ドアをノックする音が聞こえた。急に静まり返る3人。再びドアがノックされる。萌香は返事をした。
萌香「は〜い」
ノックの音の正体は萌香の母だった。
萌香の母「夜中12時回ったからキリのいいところで寝なさいね〜」
とだけ伝え部屋に入ることはなかった。3人は歯を磨き布団に入り寝ることにした。
翌朝、朝食を食べ終え午前中にはパジャマパーティーは終わった。母親が朝から仕事だったので歩いて駅の改札口まで向かう。萌香は笑顔で二人を見送っている。
萌香「今日はありがとう。また明日ね〜」
真珠星「うん。じゃあね」
委員長「こちらこそありがとう。楽しかったわ。明日、月曜日にまた会いましょう〜」
真珠星と委員長は手を振りながら駅のホームへ向かう。二人の姿が見えなくなるまで萌香は改札口に立っていた。
End