お題『スリル』
大神達が船星の家に来て約1時間が経過した。お昼12時を過ぎたので僕は大神達に昼食はどうするのか尋ねた。すると生徒Aが気だるそうに答える。
生徒A「外、暑いから出るの怠くね?。船星の家で食べていい?」
生徒B「お前宅配でも頼むつもりか?」
生徒A「それいいな!ナイスだわ(笑)俺ピザ食いてぇ」
生徒B「金あんのかよ」
生徒A「ない!」
生徒B「威張るな」
船星が何か思い出して急に立ち上がり客間を出て行った。扉を閉めた音に反応した大神がテーブルに伏せていた顔を上げる。
大神「おい!船星が居らへんがな」
生徒B「さっき急に部屋から出て行ったよ」
生徒A「トイレじゃね?あぁピザ食いてぇなぁ」
生徒B「何度もピザピザ言うなオレまで食いたくなるだろ」
大神「何の話や?」
大神の問いに生徒A、Bは同時に答えた。
生徒A・B「昼飯の話」
大神「もうそんな時間か。なんか買って来ようか?」
船星が客間の扉を勢いよく開けた、走って来たのか息が乱れている。
船星「あ、あのさお昼ご飯皆んなで、闇鍋風ピザしない?」
大神「何やそれ?聞いたことあらへんで」
生徒A、Bも聞いたことない料理名に首を傾げる。
船星が小学生だった頃両親はよく家で、友人達を集めてホームパーティーをしていた。その時、友人の一人が闇鍋は飽きたから闇鍋風ピザはどうかと提案したところ両親、他の友人達はその案を受け入れた。
闇鍋風ピザとは闇鍋とほぼ同様出来上がるまでどんな具材が入っているか分からないスリルを味わう料理である。
船星はそれを思い出し急いで、2階にあるキッチンに向かい冷蔵庫の中を確認した。ピザに使えそうな具材もある、一番重要なピザ生地とチーズもあった、足りないのは飲み物くらいだろうと思い客間に戻ってきたのだ。
簡単に大神達に説明をして反応を伺う。
船星「どうかな?」
大神「スリルがあって面白そうやな!ほな足りへんもんだけ漢気(おとこぎ)じゃんけんで勝負して皆んなで買いに行こうや!!」
End
お題『飛べない翼』
パジャマパーティー当日の夕方、萌香の家の最寄り駅の改札口で待ち合わせすることになった3人。
当初は各自の家で夕食を終えてから夜20時頃に待合わせの予定だったが、女の子が夜出歩くのは危ないとの事で萌香の母親の計らいで萌香の家で夕食をご馳走になる事になった為予定時間が大幅に繰り上がった。
最初に待ち合わせ場所に到着したのは真珠星(すぴか)だった。携帯で時間を確認する。
真珠星「10分前か、ちょっと早すぎたかな」
真珠星は携帯アプリLe Lien(ルリアン)を開き二人に到着したを連絡を入れた。このLe Lienはメールは勿論電話や写真も遅れたりできる、よくある連絡ツールアプリである。
すぐに二人から返信が返ってきた。
萌香『わかった、あと3分くらいで着くよ』
委員長『ごめんさない。10分ほど遅れます』
真珠星は委員長の返信に驚いた。あの生真面目な委員長でも時間に遅れることがあるもんだな。きっと丁寧に理由を説明するに違いないと我ながら嫌な奴だと思いつつも楽しみに待ちながら委員長に返信していた。
真珠星『OK、気長に待ってるよ〜😏』
すると萌香が待ち合わせ場所に着いた。ほどなくして委員長も到着し合流した3人は、早速萌香の家に向かう。最寄り駅から徒歩で約20分かかる為3人は萌香の母親が運転する黒のワゴン車に乗り込んだ。委員長と真珠星は運転中に萌香の母親に軽く挨拶を済ませた。車を走らせること約2〜3分で家に着き、家の敷地内にある駐車スペースに車を停め3人は先に車から降りた。周辺は一戸建てが多く閑静な住宅街だ。萌香は玄関に真っ直ぐ向かい鍵を開け、扉を開き二人を呼んだ。
萌香「二人とも中に入って〜」
家の中に入リ目に飛び込んで来たのは飛べない翼を持つ鳥類キングペンギンの置物だった。
真珠星「大きいなぁ」
委員長「実物大かしら」
二人の会話に萌香がしれっと言う。
萌香「それ剥製だよ」
真珠星と委員長は驚きのあまり声にならない声を出していた。
End
お題『ススキ』
学校の近くのファミレスに来て約1時間半経過したところで委員長が小さな音を立てて一拍する。
委員長「ねぇ、そろそろお開きにしない?制服のまま居るのもあまり良くないし」
真珠星(すぴか)「うん。いいよ」
萌香「異議なぁし!……と言いたいけど、あたしまだ話足りない。そこで提案なんだけど、二人の都合が良ければ今夜あたしの家で夜パジャマパーティーしない?」
萌香の唐突の質問に真珠星は溜息をこぼし、委員長は目をパチパチさせ驚いている。
真珠星「どうした?急に」
萌香「あたしさ……もっと委員長と仲良くなりたいの。勿論真珠星ともねっ」
真珠星「私はついでか?」
少し嫌味っぽく言う時の真珠星は大体照れている。その事に気がつかない萌香は、小馬鹿にされたと勘違いして反発する。
萌香「ついでじゃないもん!」
しばらく黙っていた委員長が萌香の問いに答えた。
委員長「輪通(わづつ)さん、そんな事言って貰えて私は嬉しいわ。けど……急で何も準備出来ていないから今夜じゃなくて明日に変更はどうかしら?」
真珠星「そうだな、それが良い。明日だったら学校休みだし、何より萌香の家でパティーするんだろ?親の許可いるだろうし?」
二人の正論に納得した萌香は二つ返事した。
萌香「わかった、それもそうだね。あたし勢いに任せて家の事や二人の事考えてなかった。ごめんなさい」
真珠星「分かれば良し!(笑)」
委員長「そう言えば、私(わたくし)二人の連絡先知らないわ。教えてくれない?」
女子会はまだまだ続く、ススキの花言葉のように「悔いのない青春」をしたいと思う委員長だった。
End
お題『脳裏』
生徒Aと生徒Bは大神に呼び止められた後再び掘り炬燵に座った。クーラーの冷房が効いた客間がなんとも言えない重い空気により一層冷えるのは気のせいだろうか。生徒Aは空気感に耐え切れず思わず–––––
生徒A「ふ、船星。トイレ何処?」
船星「扉を出て2階へ登る階段の左側にトイレがあるよ。案内しようか?」
生徒A「大丈夫。ありがとう」
そう言って生徒Aは立ち上がり客間を出た。その時大神の目がこちらを見て『逃げんなや』と言ってるように思え、生徒Aはゾクッと背筋が凍った。
大神は船星に向き直り問う。
大神「さっきの話やけど“違う“ってなんや?」
船星「僕にもまだその……好きかどうか分からなくて……だから多分としか言えなんだ」
この時船星の脳裏には萌香の顔が浮かんでいた。
大神「初恋か?」
船星「わ、分からないよ。そもそも僕は、家族以外の女性と話すのが苦手なんだッ!?」
大神「ホンマか!?そんなん俺が考えとるナンパ作戦壊滅やんか!もっと早よう言うてえや〜」
船星は首を2回縦に振ると大神は落胆してしまい。掘り炬燵のテーブルに顔を伏せた。そこへトイレから戻ってきた生徒Aが大神の様子を見て驚いていた。
生徒A「何があったんだよ!?」
生徒B「帰ってくるの遅せぇよ」
船星「大神が考えている作戦が僕のせいで崩れたみたいなんだ」
End
お題『意味がないこと』
船星「ごめん、お菓子とか何もない家で」
そう言いながら僕は客間の掘り炬燵に座る大神とその友達に陶器で作られた湯呑みに麦茶を注ぎ入れ配膳していた。
何故大神達が僕の家に来ているのかというと、前回ナンパ作戦を考えている時大神と二人で教室に残っていたら、担任と牛海(体育教師)に邪魔されたからである。その帰り道大神と一緒に帰る際学校から僕の家が近いというを知られてしまった訳で現在に至る。
ようやく1学期期末テストが終わって一息つけると思っていたのだが……。
大神「気にすんなや。急に来た俺らが悪いんやし」
生徒A「そうそう」
生徒B「食べたくなったら後で漢気(おとこぎ)じゃんけんして買いに行ったら良いんじゃん!近くにコンビニやスーパーあるし」
船星「漢気じゃんけん?」
生徒A「知らねぇの?」
船星「う、うん。」
生徒B「普通のじゃんけんだよ。ただし負けた奴が全員の好きなモノを奢るんだよ。俺の親父が家族全員巻き込んでよくやるんだよ」
船星「そうなんだ。仲がいい家族だね」
生徒B「全然そうじゃねぇよ。半ば無理矢理だぜ、ひでぇだろ」
僕は返答に困り笑うしかなかった。両親が仕事で忙しくほとんど家にいないから家族団欒というのを僕は知らない。だから生徒B(丸太)君の家族を僕は羨ましいと思った。
大神「そろそろ本題に入ってもえぇか?」
船星「う、うん。あ、あのさそもそも『ナンパ』ってする意味あるのかな?僕には……意味がないことのような気がするんだけど……」
僕はこの機会に大神の誤解を解こうと思った。
すると大神は僕を睨みつけている。
僕は心の中で−−−−
『こ、怖い、何かまずいこと言ったかな。言たかも』
大神「どういうこっちゃ船星。お前、好きな女おるからあそこでずっと見てたんとちゃうんか?」
船星「えぇ〜〜!?ち、違うよ……多分」
生徒A「おやおや。話が荒れてきそうですわよ。奥様」
生徒B「そうですわね。奥様私達は退散した方がよろしいかしら」
生徒A、Bはコソコソと内緒話を始め、船星の家を出ようと掘り炬燵から立ち上がったが大神に呼び止められてしまったのだった。
End