お題『愛言葉』
萌香と真珠星(すぴか)は無我夢中で湖畔から自分達のグループがいるBBQの場所まで走った。
萌香「な、何あいつ〜!?やばいよぉ」
真珠星「超ウケる〜。覆面マスクって……ふっふふふ(笑)」
萌香「笑えないって」
萌香は泣きそうになっていた。それに対して真珠星はお腹を抱えて笑っている。
2人の前に丸メガネをかけた委員長が不機嫌な顔をして仁王立ちしていた。
委員長「もぅ、2人共何してたの?野菜焼き上がってっるよ!!」
そう言ってBBQ串に刺さった野菜を萌香達に手渡した。委員長から受けると同時に、萌香達はさっきの出来事を話した。委員長は真珠星と同様に笑っている。
数分後同じBBQメンバーが担任と一緒に、表面が丸焦げになった巨大なお肉の塊を持って登場した。
担任「本場(アメリカ)仕込みBBQ専用のお肉だよ!!さぁクラスの皆んな食べてくれ!!」
担任の一声でお肉に群がるクラスメイト達。担任が1人1人に約2〜3cmくらいに分厚く切ったお肉を2切れずつ渡していく。これはBBQというよりステーキ肉に近い。委員長が担任に質問した。
委員長「こんなお肉どこで買ったんですか?」
担任は自慢げに語る。
担任「肉屋にオレがどれだけBBQの事を愛しているか小1時間話したら、感動して分けてくれたよ。愛の言葉ってのは強いね!」
クラスの半数は担任の話そっちのけで肉に夢中でカブリついていた。一部生徒はその話を聞きお肉屋さんに同情し何やら申し訳ない気持ちになってしまった。
愛言葉……重すぎるのは良くないと学ぶのだった。
End
お題『友達』
船星(ふなぼし)は歩みの止まらない大神の元へ走る。しかし足の遅い船星は中々追いつけないでいた。
湖畔までそう遠くないのに––––。
船星「どうして。僕は……」
息を切らしてやっと大神に追いついたと思い、顔を上げたらすぐ近くにあの女子生徒が居た。
その姿を見た瞬間僕の心臓の音は走っていた時より早く鳴り、無意識に僕より遥かに身長の高い大神の後ろに隠れた。
一方大神は萌香達と談笑している。
突然話しかけてきた大神に最初萌香は戸惑っていた。
大神「こんにちわ〜。2人して何してんの?」
萌香「え、えっと。あの……う、海を見てて」
真珠星(すぴか)「っ!?萌香、海じゃないって!?湖畔だって」
萌香「そ、そう。湖畔!湖畔を見てたの!」
顔が赤くなる萌香、呆れる真珠星に爆笑する大神。
大神「自分(萌香達の事)ら、面白いなぁ。漫才コンビ?」
真珠星「違うし。同クラ(同じクラスの事)で友達。……で私らに何よう?ナンパ?」
大神「そうそう、ナンパ。……俺の背中に隠れている、友達の船星君が自分らにナンパしょう言うてな……」
僕は焦っていた。背中にいる事が大神にはすでにバレていた事もあるが、ナンパではないと誤解が取れないまま、あの女子生徒と話すことになってしまう事に。
あと僕は家族以外の女性と話すのが苦手だ。
だからジャケットの裏ポケットから狐風の覆面を取り出し、被ってあの子の前に頭をペコペコ下げながら登場した。
そしたら案の定あの子は引いてしまい、友達(真珠星)の手を掴み逃げるようにその場から去ってしまった。
End
お題『行かないで』
物陰から1人の黒髪の男子生徒が萌香達を見ていた。
男子生徒は萌香達に声をかけようか悩んでいる。
黒髪の男子生徒「どうしよう……どう声かけたらいいんだろう……」
すると男子生徒は背後に忍び寄った人物に肩を叩かれ
驚いて声を上げた。
黒髪の男子生徒「わあぁ!?」
黒髪の男子生徒の肩を叩いた男子生徒はきょとんとした顔をしたまま声をかける。
驚かした男子生徒「船星(ふなぼし)何もそこまで驚く事あらへんやろ。お前BBQで焼く野菜を取りに行ったきり戻って来うへんから、同じメンバーの奴ら先に肉だけ焼いて食べ始めてんで」
驚かした生徒、大神 天河(おおがみ てんが)に名前を呼ばれた黒髪の男子生徒、船星は萌香達をチラチラ見ながら謝った。
船星「ご、ごめん。急いで取りに行く」
大神「ちょい待ちぃ」
そう言って大神は船星の手首を掴んで、こそこそと内緒話を始めた。
大神「男やったら先にやることやってから野菜取りに行かな、あかんやろ!」
船星「やるって……何を?」
大神「ナンパやろ?湖畔におる女子に……ちゃうの?」
船星は何も言い返せない。
間違っているようで間違いではない、ただあの日あの女子生徒(萌香)が屋上から誰に向かって、叫んだのか知りたくて声を掛けようか迷っていた。
迷っていたら大神にナンパすると勘違いされてしまった。返す言葉を考えていたら、大神は僕を置いてあの女子生徒へ歩き出しているではないか。
僕は心の中で『まだ心の準備ができていないんだ。だからまだ行かないで!!』と叫んでいた。
お題『どこまでも続く青い空』
今日は、校外授業という名の遠足。
同じ学年同士、クラスの枠を超えて生徒だけじゃなく教師とも仲良くしようというのが目的らしい。
学校からバスで約1時間移動した先は都会から少し離れた自然豊かな場所だ。
最近流行りのキャンプもできる他、場所(エリア)によって異なる様々なアウトドアが充実している。
萌香達のクラスはBBQと酪農体験が出来る場所にいた。
萌香は空を仰いで歩いていた。
萌香「どこまでも続く青い空と……」
歩みを止めその先へ指を指す。
萌香「どこまでも広がる青い海!海はいいね」
真珠星(すぴか)が透かさずツッコミを入れる。
真珠星「海じゃねぞ〜。湖畔だ、湖畔。間違えるなぁ〜」
萌香「分かってるわよ!言ってみただけですぅ〜」
少し膨らました頬を真珠星に見せる萌香だった。
そのやりとりを遠くから見ている男子生徒が居たのをまだ萌香は知らない。
End
お題『衣替え』
高校生になってもうすぐ1ヶ月経ったある日。
教室のクーラーは稼働しておらず、窓を全開していたにもかかわず風が入ってこない教室で、朝のホームルームで担任が来るのを待っていた。
時間になって担任が半袖半ズボンという涼しくラフな服装で入って来た。それを見た生徒は皆険しい顔をしている。
担任「よ〜し。全員いるなぁO〜K!どうした?お前ら変な顔して?」
担任はわかっていないのだろうか。クーラーの効いていない蒸し暑い教室はさながらサウナ状態だ。それに加え冬服の制服のままである。
沈黙が続く中、クラスの“委員長“と呼ばれる少女が手を挙げた。
委員長「先生!私達の衣替えはいつですか?暑くてたまりません!!」
委員長の問いに生徒全員の目が輝く。早く、夏服に衣替えがしたいと……。担任は委員長の予想を超えた答えが返ってきた。
担任「あぁ。それな……今日の放課後職員会議で決めることになっている。決まり次第後日連絡するからそれまで冬服でよろしく〜」
私達の衣替えはまだ先になるみたい。
End