瑠璃

Open App
9/18/2024, 10:18:12 AM

《夜景を見たがる理由と見せるもの》
(刀剣乱舞/包丁藤四郎)


「夜景が綺麗なとこ知らな〜い!?」

包丁藤四郎が審神者(男)の元に来て一言目がそれだった。

審神者は仕事の手を止め、「何を突然言うのかな、包丁?」と聞き返す。

「夜景が見たいんだよー!花火もいいけどさー?」

「なんのために?」

「そりゃ....人妻に綺麗な夜景を見せて、好きになってもらいたいからじゃん!」

あぁやっぱり、と苦笑いを浮かべる審神者。

とはいえこの審神者は恋人なんておらず、ましてやこんな環境下で出会いなどあるわけもない。

つまりは"夜景がきれいなとこ"なんて知らないのだ。


とは言え、願いを無下にする訳にもいかないという気持ちもある。


考えた末に審神者は景趣を変えることで手を打った。


《九周年 祝い花火》にすれば、現代の夜の景色。

つまりは夜景と花火が見れるから、という考えだ。


勿論、彼がそれで納得するかは分からないので

駄目だったらお菓子で機嫌を取ろうと思っているのは内緒である。

9/17/2024, 12:35:22 PM

《花の下で眠る願い》
(刀剣乱舞/五虎退)

その本丸の審神者は、季節によって景趣を変え、四季を楽しむことが好きな人間だった。

春は桜。夏は向日葵。秋は彼岸花。冬は椿。

他の花々も好きで、二十四節気に合わせて変える人だった。

だからなのか、ある日審神者は唐突にこう言った。


「死んだら、花の下に埋めて欲しい」


五虎退は反応に困り、「あるじさま....」と心配をする。

審神者は直ぐに笑い、「いつか来る日の話だよ」と言った。

人はいつか死ぬ。刀剣男士とていつか壊れて消える日が来るかもしれない。

それを受け入れ、前向きに生きるのは簡単なことでは無いことくらい、五虎退とて分かっている。

ならば、その終わりや、終わったあとの事を願うのは人も刀も同じだろうと。


「あるじさまはなんのお花の下に眠りたいんですか?」


審神者は五虎退の問いに「そうだねー....」と悩み、


「桜かな。大きな桜の木の下で眠って、春にはその桜の下で皆に花見をして、一緒に楽しみたいかな」

と笑って答えた。


五虎退は「絶対叶えます!」と笑って返した。

9/16/2024, 11:56:39 AM

《感情とリンクする空》
(刀剣乱舞/乱藤四郎)


その日、乱藤四郎はとにかくツイていなかった。

馬当番では馬に髪を食べられ、昼餉は苦手な物が出て、
気分転換に万屋に足を運んだが、欲しかった品が売り切れ、挙句帰り道は雨が降っていた。

「今日は上手くいかないなぁ〜.....」

嘆く乱の気持ちは、まさしく今の天気と同じく泣きそうだった。

「空も泣いてるのかなぁ.....」

乱は、燻る気持ちを吐露しながら雨が止むのを待つことにしていた。


暫くすると万屋街を繋ぐゲートに見慣れた人影が現れた。

「いち兄!?」

「乱が1人で万屋に行ったと聞いてね。傘も持たなかっただろうから迎えに来たよ」

それは粟田口兄弟の長兄・一期一振だった。

乱は大好きな兄の姿を見ると、先程までの心の曇りがすぐに無くなった。

「いち兄を独り占め〜!」

「こらこら。ちゃんと傘を差さないと濡れてしまうよ」

「はーい♪」


空は涙を流すように雨が降っている。

けれども涙と同じなら、いつか笑うように晴れるために流す涙と思えば、雨も悪くは無いと思えた。

9/15/2024, 10:23:52 AM

《待つ時間も楽しく思える》
(刀剣乱舞/博多藤四郎)


博多藤四郎は商人魂を持った短刀で、本丸内でも現代的なものに最も興味を持つ短刀だった。

現代遠征へ向かう際に渡されたスマホも早くに使いこなしていた。


手紙よりも声よりも早く届く電子ツールは、博多にとっては何よりも惹かれるものだった。


LINEも勿論使いこなしており、審神者や仲間たちとのメッセージのやり取りもそつなつこなしていた。

だからこそ、返事が来るのが待ち遠しく、もどかしく、楽しく思えるのだ。


「返事が来たァ!嬉しかー!」

9/14/2024, 11:01:07 AM

《この身が朽ちるまで》
(刀剣乱舞/秋田藤四郎)


秋田藤四郎は、かつての主の元では戦場に出ることが無く、秘蔵っ子だった。

故に外の世界に疎く、何にでも興味を持つ子供のような天真爛漫さがある短刀の刀剣男士。

けれども。戦に出ていないからと言って、弱い訳では無い。

その小さな体で、かつての主を守る守刀として務めてきた。


大きな逸話も戦績もない。


でも、守ることが出来る体がある。


今の主君を守る事こそが刀の役目。

たとえこの命が燃え尽き、破壊してしまうことがあれど、

《守刀》としての矜恃を保っている。


「お命貰います!」


血まみれになりながら敵を倒し、主君を守り、歴史を守る。


外の世界の恐ろしさも美しさも知った秋田藤四郎は、

その身に抱く子供らしさと刀らしさを見せながら、

その鋭き刃を今日も振るう。

Next