しずく

Open App
11/8/2024, 11:44:31 AM

昔言い聞かされた、言い聞かせた言葉が今日も私の呼吸を薄くする。
“努力すれば報われる、報われない努力はまだ努力とは呼べない”
努力して、頑張って、頑張って。
そんなときに言われた「頑張れ」。
ねえ、もう十分頑なに張ってるよ。限界なの。なのにさらに壊れるまで頑なに張り続けろって、当たり前に使ってるようだけどさ、ちょっとふざけんなって思っちゃったな。

意味がないと分かっていても自分を守るために、自分を消さないために、努力して。
最終的には自分で「頑張れ」って追い詰めて、生きてることを許されたいがために自分を殺して。
意味がない。意味がないの。
こうして唱える「頑張れ」の呪文も、自分を殺しているのも、惰性で繰り返す呼吸も。
意味がないんだよ。



─意味がないこと─ #112

11/6/2024, 12:38:45 PM

いっそのこと、突き刺すように鋭い雨にしてくれれば。

柔い雨は遠くから静かな音を連れてくる。
冷たい雨粒が髪を伝う。雨の冷たい感覚すら、なくなってきてしまいそうだ。
ははっと嘲笑が漏れる。
ああ、わかってたのにな。
どうせこうなるなら、雨がふるなら、突き刺すように鋭い雨にしてくれればよかった。

───ねえ、知ってる?
「ゆう...! こんなとこにいた...!」
雨で汚れることを厭わないような雨を弾く足音。
勢いあまって腕に絡み付いてきた暖かい体温。
果てしなく続いていた空を遮断した淡い色の傘。
「冷たっ、風邪引くって...。...なにがあったの?...なんて聞かないけど、聞けないけど、俺はゆうの味方ってことだけ覚えといて、ほしい」
真っ直ぐに見つめてくるきみの視線が怖くて、また目を逸らす。
───その優しさがいちばんつらいんだよ。
無邪気な太陽を向けられる、醜い感情にまみれた人間の気持ちなんか、...知らないね。


いっそのこと、突き刺すように鋭い雨にしてくれれば。




─柔らかい雨─ #111

11/3/2024, 11:20:11 AM

鏡の前で、数秒。
寒さでぼんやりとしていた頭は、それで瞬時に冴えてしまうから嫌気が差す。
くしゃりと髪を乱して、肺に冷たい空気を送り込む。
…これがいつまで続くのだろう。

双子の弟との最後が嫌でも脳裏に焼き付いて離れてくれない。
もう会えない可能のほうがずっと高いのに。

俺と双子の弟は鏡に写したかのようにそっくりだった。
鏡の中の自分を見るといつも双子の弟を思い出す。
性格は正反対。
だからこそ小さな頃から惹かれ合うのは、ごく自然なことだった。

ふたりでいることが当たり前だった小学時代。
弟との初めてをいろいろと知ってしまった中学時代。
弟とのことが周りに知られて、引き離された高校時代。

壊された人生。

「はやく忘れたいってのに...」



いつだって閉じ込められる鏡の中だ。




─鏡の中の自分─ #110

10/29/2024, 3:04:30 PM

エピローグから始まる、そんな物語があってもいいってきみが教えてくれた。


─もう一つの物語─ #109

(しばらくお休みするかもです。なかなか書けなくなってしまって、一旦離れてみようと思いまして。でも必ず戻ってきます)

10/28/2024, 10:47:31 AM

暗がりの中で必死に手を伸ばしては、必死に呼吸をしようと
もがいていました。
いつか向こうの明るいところへ行けると、幸せになれると、
信じて。
でも、もがいても、もがいても、あの明るい場所には近づけませんでした。遠退くばかりでした。
いつの日か、なにかがぷつん。切れてしまいました。
あの明るいところへはどう頑張ったっていけないのか。もがいたってもがいたって、なにも変わらずに自分が苦しむだけなのか、と。
その日から、手を伸ばすことをやめました。呼吸することも諦めました。
そうして、そんな暗がりの中でぼんやりと生きてみると、案外自分に合ってる気がする、と。こっちのほうが生きやすい、と。気づいたのです。



─暗がりの中で─ #108

Next