しずく

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鏡の前で、数秒。
寒さでぼんやりとしていた頭は、それで瞬時に冴えてしまうから嫌気が差す。
くしゃりと髪を乱して、肺に冷たい空気を送り込む。
…これがいつまで続くのだろう。

双子の弟との最後が嫌でも脳裏に焼き付いて離れてくれない。
もう会えない可能のほうがずっと高いのに。

俺と双子の弟は鏡に写したかのようにそっくりだった。
鏡の中の自分を見るといつも双子の弟を思い出す。
性格は正反対。
だからこそ小さな頃から惹かれ合うのは、ごく自然なことだった。

ふたりでいることが当たり前だった小学時代。
弟との初めてをいろいろと知ってしまった中学時代。
弟とのことが周りに知られて、引き離された高校時代。

壊された人生。

「はやく忘れたいってのに...」



いつだって閉じ込められる鏡の中だ。




─鏡の中の自分─ #110

11/3/2024, 11:20:11 AM