行かないで。
その一言が喉の奥につっかえる。
滲む視界が鬱陶しい。
泣くな、泣かないで。
最後まで、笑顔の僕でいてってば。
─行かないで─ #104
君の瞳に写る、どこまでも続く青い空ほど綺麗だと思った景色はない。
放課後の教室でじっと眺めていたら、君は視線を感じたのかこっちを向いて、ふわり、恥ずかしそうにはにかんだんだ。
触れたら壊れてしまいそうだった雪のような頬は、ほんのりと染まった。
窓から見える、抜けるような青の空には一本の飛行機雲がかかっていた。
…ああ、この“好き”を吐き出せたらどんなにいいだろう。
呑み込ませた“好き”が酷く心臓を締め付ける。
─どこまでも続く青い空─ #103
小さい頃、よく親に「そろそろ“子供替え”かな」とその子供替えの説明をされた。
私は親の言うことをきかない悪い子だからいらない。他の子供ととりかえようかしら、と。
向こうはたぶんもうそんなことを言ったことも忘れているのだろう。
そして、小さい頃の私にとって、それがどれだけ怖くて恐ろしくて、心を縛るものだったのか、知る由もないんだろうな。
まして今だってこうして忘れられずにふとしたときに心を氷色に染め上げているなんて知りもしないね。
─衣替え─ #102
(衣替えと聞いて真っ先に思い付いたのが子供替えのことでした。今の私、他のものを考えるほどの余裕なかったみたいです)
叫ぶための声は、でませんでした。
叫ぶまえに枯れてしまいました。
声を圧し殺して泣くのに慣れてしまったからでしょうか。
いつだって喉の奥に呑み込ませて、呑み込ませて、それでも苦しいときには生きているって実感する証を何度も何度も切り付けて。
そうやって言葉を呑み込んできた、口無しの私は、自分の感情すらうまく吐き出せないのです。
言いたいことはありません。
伝えたいこともありません。
口無しの私は呼吸の仕方もしらない。
あなたの理想とは違うかもしれないけど、あなたに理想をぶつけられて中途半端に歪んでしまった私だ。
こんな歪んでる人間を愛してくれる人なんていない。理想になれなかった私じゃ価値がない。もともとの手の加わってない私はもういない。
わかっている。わかっているのに、この手をすり抜けるすべてが愛に見えた。
お願いです。
生きてていいよって、私が透けていくまえに、だれでもいい。認めてください。
─声が枯れるまで─ #101
始まりは少し背伸びをしてしまう。
自分をすこしでもよく見せようとしてしまう。
でもちょっと背伸びしてみて、気づいたらその身長になってることだってある。
でも背伸びって結構きつい。
きっと私は他人に存在意義を求めてしまっている。
背伸びをして、背伸びをして、くるしくなって。
いつの日か、虚像の自分を作り上げて走らせていることに気がつく。
でも、それでも他人に存在意義を求めて、誰かに認められたくて。
虚像の自分を、背伸びしている自分を、無理やり走らせる。
疲れたら背伸びは一旦やめよう。
それで幻滅されても仕方ない。その人たちは私の虚像が好きだっただけ。
本当の私を受け入れてくれる人がひとりでもいたら、それは虚像で稼いだ数字より嬉しくなる。
自分を見つけよう。
背伸びなんてやめて、ありのままでいよう。
─始まりはいつも─ #100
(背伸びしているから書けなかったんだ)