最初から分かってはいた。
あ、この人僕のこと好きなわけじゃない、って。
でも、それでもあなたのとなりにいられるならそれでよかった。
虚像でもよかった。
なのに、最近はあなたのとなりにいるとくるしくなる。
吐いても吐いても醜い感情が喉の奥から止めどなくて。
付き合っているのに、僕の片恋。一方的。
吐き出したすきはやっぱり僕を苦しめる。
「…今日は、ありがとうございました」
小さく頭をさげた。
「…いーえ」
やっぱり返事は冷たくてなんの温度も感じられなくて。
ささくれ立つ心がくるしい。
久しぶりに連絡を入れた昨日のこと。
適当にデート…デートもどきをして、別れ際。
「今までごめんなさい」
恋人という名で縛っていて、ごめんなさい。
自分勝手で、ごめんなさい。
「…別れましょう」
ぐっと唇を噛んで下を向く。
油断すると溢れてしまいそうだった。
「…なんで」
「っ、な、なんでって……」
いやだ。やめて。
いつもみたいに、あそ、とか、ぜんぜん分かってなさそうな分かったでいいんだよ。
心が抉るようにつらくなる。
「もう、さすがに無理かなって…やっぱり両方が釣り合ってないとだめ、みたい」
「…あそ」
「っ、」
突き放されたら突き放されたで、苦しくなって。
…ああもういやになる。どこまでも自分勝手。
─すれ違い─ #99
(昨日投稿したと思ったらできてなくて、書いたやつなくなってるし、やっと満足のいくもの書けたのにぃって一瞬で目が覚めました。まあいいか、と思い付いたもうひとつのほう書いときます。
てか連絡した次の日にあってくれてるとこ見逃すなよ、主人公くん。めちゃくちゃ好きじゃあないか)
まるで早送りのドラマのように過ぎていった、あの秋のからっとした澄んでいて冷たい空気の思い出に浸っていた。
─秋晴れ─ #98
書けない
忘れたくても忘れられない。
金木犀がつれてくる、甘くて切ない想い出。
あの日、僕が先輩にたった二文字だけ返していたら。
あのとき、ちゃんと引き留めておけば。
金木犀の香りは甘い想い出ばかりのはずなのに、それは同時に梅雨の苦しい思い出まで連れてくる。
忘れたくても忘れられない。
…ううん、ちがうね。
忘れたいのに、忘れたくなくて、ぐちゃぐちゃになる。
あの梅雨の日を思い出すから苦しい。なら、先輩とのことぜんぶぜんぶわすれたい。
でも先輩と過ごした金木犀の季節は確かに色鮮やかで、わすれたくない。
先輩。
僕はもう、先輩のいない世界でどう生きればいいのかわからないんです。
─忘れたくても忘れられない─ #97
(トラウマ的な忘れたくても忘れられない思い出がよぎったときには、あーしにたい、と呟いてむりやり記憶に一時的な蓋をしています。よくはないことだとは分かってるけど、これが一番効果あって楽になるんだよなぁ)
きっと僕にはこれくらいがちょうどいい。
真昼の太陽より、真夜中の月。
あまりにもまぶしいと僕の汚い部分が浮き彫りになる。
夜は僕の汚い部分も見えなくして、やわらかな光で包んでくれるから。
もともと月もない真夜中の街で生きていた僕だ。
きみが月になって僕をいつの日からか優しく包んでくれた。
例え、これが許されない恋だとしても、僕はきみがいないと呼吸もままならないんだ。
─やわらかな光─ #96
気づいたときには、その鋭い眼差しに捕らわれていた。
埋まらない。足りない。満たされない。
僕を、僕だけを、その鋭い眼差しで射抜いて離さないで。
─鋭い眼差し─ #95
(最近歪んだ愛にハマってしまいました。他で書いていた短編がどんどん歪んだ狂愛になっていってしまい、書くのは楽しいんだけども、締め方が…ってとこです)