忘れたくても忘れられない。
金木犀がつれてくる、甘くて切ない想い出。
あの日、僕が先輩にたった二文字だけ返していたら。
あのとき、ちゃんと引き留めておけば。
金木犀の香りは甘い想い出ばかりのはずなのに、それは同時に梅雨の苦しい思い出まで連れてくる。
忘れたくても忘れられない。
…ううん、ちがうね。
忘れたいのに、忘れたくなくて、ぐちゃぐちゃになる。
あの梅雨の日を思い出すから苦しい。なら、先輩とのことぜんぶぜんぶわすれたい。
でも先輩と過ごした金木犀の季節は確かに色鮮やかで、わすれたくない。
先輩。
僕はもう、先輩のいない世界でどう生きればいいのかわからないんです。
─忘れたくても忘れられない─ #97
(トラウマ的な忘れたくても忘れられない思い出がよぎったときには、あーしにたい、と呟いてむりやり記憶に一時的な蓋をしています。よくはないことだとは分かってるけど、これが一番効果あって楽になるんだよなぁ)
10/17/2024, 1:50:08 PM