叫ぶための声は、でませんでした。
叫ぶまえに枯れてしまいました。
声を圧し殺して泣くのに慣れてしまったからでしょうか。
いつだって喉の奥に呑み込ませて、呑み込ませて、それでも苦しいときには生きているって実感する証を何度も何度も切り付けて。
そうやって言葉を呑み込んできた、口無しの私は、自分の感情すらうまく吐き出せないのです。
言いたいことはありません。
伝えたいこともありません。
口無しの私は呼吸の仕方もしらない。
あなたの理想とは違うかもしれないけど、あなたに理想をぶつけられて中途半端に歪んでしまった私だ。
こんな歪んでる人間を愛してくれる人なんていない。理想になれなかった私じゃ価値がない。もともとの手の加わってない私はもういない。
わかっている。わかっているのに、この手をすり抜けるすべてが愛に見えた。
お願いです。
生きてていいよって、私が透けていくまえに、だれでもいい。認めてください。
─声が枯れるまで─ #101
始まりは少し背伸びをしてしまう。
自分をすこしでもよく見せようとしてしまう。
でもちょっと背伸びしてみて、気づいたらその身長になってることだってある。
でも背伸びって結構きつい。
きっと私は他人に存在意義を求めてしまっている。
背伸びをして、背伸びをして、くるしくなって。
いつの日か、虚像の自分を作り上げて走らせていることに気がつく。
でも、それでも他人に存在意義を求めて、誰かに認められたくて。
虚像の自分を、背伸びしている自分を、無理やり走らせる。
疲れたら背伸びは一旦やめよう。
それで幻滅されても仕方ない。その人たちは私の虚像が好きだっただけ。
本当の私を受け入れてくれる人がひとりでもいたら、それは虚像で稼いだ数字より嬉しくなる。
自分を見つけよう。
背伸びなんてやめて、ありのままでいよう。
─始まりはいつも─ #100
(背伸びしているから書けなかったんだ)
最初から分かってはいた。
あ、この人僕のこと好きなわけじゃない、って。
でも、それでもあなたのとなりにいられるならそれでよかった。
虚像でもよかった。
なのに、最近はあなたのとなりにいるとくるしくなる。
吐いても吐いても醜い感情が喉の奥から止めどなくて。
付き合っているのに、僕の片恋。一方的。
吐き出したすきはやっぱり僕を苦しめる。
「…今日は、ありがとうございました」
小さく頭をさげた。
「…いーえ」
やっぱり返事は冷たくてなんの温度も感じられなくて。
ささくれ立つ心がくるしい。
久しぶりに連絡を入れた昨日のこと。
適当にデート…デートもどきをして、別れ際。
「今までごめんなさい」
恋人という名で縛っていて、ごめんなさい。
自分勝手で、ごめんなさい。
「…別れましょう」
ぐっと唇を噛んで下を向く。
油断すると溢れてしまいそうだった。
「…なんで」
「っ、な、なんでって……」
いやだ。やめて。
いつもみたいに、あそ、とか、ぜんぜん分かってなさそうな分かったでいいんだよ。
心が抉るようにつらくなる。
「もう、さすがに無理かなって…やっぱり両方が釣り合ってないとだめ、みたい」
「…あそ」
「っ、」
突き放されたら突き放されたで、苦しくなって。
…ああもういやになる。どこまでも自分勝手。
─すれ違い─ #99
(昨日投稿したと思ったらできてなくて、書いたやつなくなってるし、やっと満足のいくもの書けたのにぃって一瞬で目が覚めました。まあいいか、と思い付いたもうひとつのほう書いときます。
てか連絡した次の日にあってくれてるとこ見逃すなよ、主人公くん。めちゃくちゃ好きじゃあないか)
まるで早送りのドラマのように過ぎていった、あの秋のからっとした澄んでいて冷たい空気の思い出に浸っていた。
─秋晴れ─ #98
書けない
忘れたくても忘れられない。
金木犀がつれてくる、甘くて切ない想い出。
あの日、僕が先輩にたった二文字だけ返していたら。
あのとき、ちゃんと引き留めておけば。
金木犀の香りは甘い想い出ばかりのはずなのに、それは同時に梅雨の苦しい思い出まで連れてくる。
忘れたくても忘れられない。
…ううん、ちがうね。
忘れたいのに、忘れたくなくて、ぐちゃぐちゃになる。
あの梅雨の日を思い出すから苦しい。なら、先輩とのことぜんぶぜんぶわすれたい。
でも先輩と過ごした金木犀の季節は確かに色鮮やかで、わすれたくない。
先輩。
僕はもう、先輩のいない世界でどう生きればいいのかわからないんです。
─忘れたくても忘れられない─ #97
(トラウマ的な忘れたくても忘れられない思い出がよぎったときには、あーしにたい、と呟いてむりやり記憶に一時的な蓋をしています。よくはないことだとは分かってるけど、これが一番効果あって楽になるんだよなぁ)