「75歳の母」
とある街に、一人暮らしの老婆が居ました。
老婆は結婚した事が無く、ましてや子供にも恵まれた事がありません。
老婆は、結婚して子供を産んで幸せな家庭を築き上げるのが夢でしたが、老婆は醜いせいか誰からも相手にされず、男性から煙たがれ、女性から馬鹿にされる人生を送って来ました。
老婆は、せめて子育てする経験をしてから天国へ行きたいと思い、孤児院に行って子供を恵んで欲しいと頼みに行きました。しかし、孤児院は老婆が高齢と言う事もあって、なかなかOKを出しませんでした。
老婆は
「どんな子供でも良いから恵んで下さい」と、
涙ながらに懇願した為、孤児院は渋々犯罪者の子供を老婆に明け渡す事にしました。
子供はまだ赤ん坊だったので、愛情たっぷりに育てれば素晴らしい人間に育つに違いないと老婆は思い、生まれて初めて手にした我が子を抱きかかえて家に帰りました。
老婆は、「おっぱいですよ」と、乳の出ない乳房を子供に咥えさせたり、一緒にお風呂に入ったり、眠れなくてぐずつく子供に添い寝したり、子供に絵本を読み聞かせたり…と、老婆は自己欲求を満たす形で子育てをしました。
子供が学校に行くようになってから、授業参観に参加した老婆は、自分が結婚適齢期に結婚して子供を産んでいた場合の子供と同じ位の年代の保護者から稀有な目で見られる事もありました。
子供と二人、幸せな毎日を送っていた老婆でしたが、子供が高校に上がる頃に老衰で天国へ旅立ちました。
老婆の死後、子供は親戚に引き取られる事になりましたが、子供が犯罪者の子と言う事もあり、親戚同士で親権の押し付け合いになりました。
子供は、母が高齢で管理出来ないと言う理由で運動は一切禁止の生活を送り、母が高齢と言う事もあってか機械に疎く携帯電話を持たせてくれなかったりと言う事もあってか、恋人は疎か友達も出来なかった子供は、自分は普通の人間じゃ無いんだと思う様になりました。
子供は、新しい両親から「お前の本当の父親は犯罪者だ」と、打ち明けられると、あの世に興味を抱くようになりました。
子供は高校卒業後に就職して働きますが、その頃から若い女性を狙い、自分の欲求不満を満たすかの様に若い女性を地獄に落とし始めました。
子供は、標準的で幸せな人生を送った人間に強い憎悪を抱いていて、そんな人間達が地獄に落ちて行く様を見て清々しい気持ちになっていました。
子供は、性行為については全くの無知で、人間の子供は自然発生して行く物だと思っていました。そのせいか、人間は次々に湧いてくる虫の様な物だと子供は思っていました。
子供は、いつしか若い女性だけで無く、老若男女問わず人間を見るだけで憎悪が湧き、どんな人間でも地獄に落とす様になって行きました。
子供は、いつしか不老不死になり、色んな土地をさ迷うようになりました。
「子犬工場」
子犬工場には、由緒正しき家庭から来た犬達がいました。
犬達は皆、血統書と言う紙切れを持っています。
この工場にいるメスのチワワも、お父さん、お母さん共にチワワの血しか流れていない由緒正しき家庭から来ました。
子犬工場は、血統書付きの犬を作るための工場で、チワワはチワワ、トイプードルはトイプードルと言った同じ犬種のオスメス二匹で子供を作り続けなければなりません。
子犬工場の環境は劣悪で、狭い檻に同じ犬種のオスメス二匹を閉じ込められています。餌はほんの少ししか与えられません。シャンプーやカットや爪切りや肛門絞りと言った体のケアはさせてもらえません。
メスのチワワも、同じ檻のオス同様にワンワン吠えて餌やシャンプーを要求しますが、犬達を管理している人間が来て、犬達を怒鳴り散らし、犬達が吠えなくなるまで棒で殴り続けました。
体中は泥だらけのように汚れてしまい、突然同じ檻に入れられた見知らぬ犬と毎日のように交尾して、子供を産み続けなければならない日々。同じ仲間の中には、病気になり、治療もさせてもらえず天国に行ってしまう犬達もいました。
メスのチワワはいつしか鳴かなくなり、人間に何されても抵抗出来なくなったある日、夢を見ました。
いつも檻部屋に来ている人間の他に、見た事の無い人間が来ました。いつも来ている人間は、
「この犬、子供産まなくなったんで引き取って下さい」
と、見た事の無い人間に言って、見た事の無い人間は、メスのチワワをキャリーケースに入れました。メスのチワワは、
「どこに連れて行かれるんだろう?」
と、不安でした。保健所に連れて行かれた場合、殺処分される可能性が高いからです。メスのチワワは震えていると、見た事の無い人間は、
「キレイにしてあげるからね」
と、メスのチワワに優しく語りかけました。
着いた先は保護施設。メスのチワワは栄養価の高い餌をお腹いっぱい与えられ、トリマーの男性に生まれて初めてシャンプーやカットや爪切りや肛門絞りをやってもらいました。トリマーの男性は、モサモサに生えて、所々毛玉になっているメスのチワワの毛のカットに苦戦しましたが、見事にポスターに載っているチワワらしい外見に仕上がりました。メスのチワワは嬉しくて、思わず「ワン」と吠えました。
「これで新しい飼い主さんを見つけるだけ。もっと鳴いたりして犬らしく生きても良いんだよ」
トリマーの男性はメスのチワワに優しく語りかけました。すると、雲に乗った人間が現れて、メスのチワワを空の国へ連れて行ってしまいました。
「安心して下さい。雲の上の世界は苦しい事も辛い事も悲しい事もありませんよ」
朝になり、オスのチワワはメスのチワワを起こそうとしましたが、メスのチワワは動きませんでした。
「きらい」
とある小学校に、人気のある男の子と人気のある女の子がいました。
そして、男の子は人気のある女の子、女の子は人気のある男の子が好きでした。
男の子は、平凡な顔立ちのどこにでもいる普通の子です。学校中を走り回ったり、自分で考えた遊びで友達を楽しませていました。
男の子は、人気がある女の子を見つけると胸をときめかせて、いつかお話出来る日を心待ちにしていました。
バレンタインデーの日、男の子はあんまりチョコをもらえる程じゃ無いのですが、毎年の様に人気がある女の子からチョコをもらえるのを楽しみにしていました。
男の子は廊下を歩いていると、女の子の友達から女の子のチョコを渡されました。
男の子は、女の子の事はあまり好きではなく、その様子を人気がある女の子が遠くの方で見ていたのを見て
「オイ、アイツがチョコを渡したぞ」
と、不機嫌そうに言いました。
女の子が
「違うよ!このチョコは人気のある男の子に渡そうとしたの!」
と、言ったので、男の子は自分がおちょくられていると思い、女の子の事が一気に嫌いになりました。
それからと言う物、男の子は友達やクラスメートからからかわれる様になり、黒板に男の子と女の子の相合い傘が書かれてるのを見てから、男の子は女の子をイジメるようになりました。
上靴をゴミ箱に入れたり、
女の子の机に落書きをしたり、
黒板消しをぶつけたり、
冬にホースの水をかけたり…
もう、人気がある女の子は自分の事は好きになる事が無いんだなと絶望の気分になった男の子は、担任の先生にバレンタインの日の出来事を話しました。
担任の先生は、
「それは辛い思いしたね」
と、男の子に寄り添いました。男の子は涙を流しました。
数日後、男の子は友達から
「人気のある女の子に、お前の恥ずかしい画像や動画見せるぞ」
と、言われました。男の子は止めてくれと友達に言うと、
「だったら、女の子が嫌いだって証拠見せろよ」
と、言われたので、男の子は理科室に忍び込んで塩酸を持ち出し、女の子の顔にかけました。
「お前、陰キャだしブサイクだから大っ嫌いなんだよ!コレで学校に来れねーだろ」
女の子は大泣きしました。男の子はこの時から学校中から後ろ指を差され、虫ケラを見るような目で見られるようになり、イジメはエスカレートして、男の子は転校を余儀なくされました。
「あんな女、大っ嫌いだ…」
男の子は、塩酸の件を担任の先生や両親に言いました。担任の先生は男の子をかばいましたが、塩酸の件がSNSで広まってしまい、男の子は転校先でもイジメに遭って不登校になってしまいました。
男の子の友達は、
「ライバルが減って良かったな。まさか女の子の友達が協力してくれるとは思わなかったし」
と、和気あいあいと話しました。
「きらい」
とある小学校に、人気のある男の子と人気のある女の子がいました。
そして、男の子は人気のある女の子、女の子は人気のある男の子が好きでした。
女の子は、お友達に人気のある男の子とお近づきになりたいと相談しました。
お友達は、
「男の子の方がお似合いだよ」
と、口々に言って、女の子と男の子と無理矢理引っ付けようとしました。
女の子は、男の子はひょうきん者で、いつも先生を困らせる悪ガキだったので、男の子の事はあまり好きではありませんでした。
女の子は
「困るよ」と、お友達に言っても、お友達は
「大丈夫、お似合いだから!」
と、言って、聞く耳を持ちませんでした。
バレンタインデーの日、女の子は勇気を持って人気のある男の子に告白をしようとしました。
女の子は、人気のある男の子にチョコレートを渡そうとすると、お友達の一人がチョコレートを取り上げて、男の子に女の子のチョコレートを渡しました。
男の子は
「オイ、アイツがチョコを渡したぞ」
と、不機嫌そうに言うと、クラス中が大騒ぎになりました。
女の子は
「違うよ!このチョコは人気のある男の子に渡そうとしたの!」
と、言いますが、クラス中が大騒ぎになった以上、誰も女の子の聞く耳を持ちません。
それからと言う物、男の子は女の子に嫌がらせを始めました。
上靴をゴミ箱に入れたり、
女の子の机に落書きをしたり、
黒板消しをぶつけたり、
冬にホースの水をかけたり…
男の子は毎日の様に女の子を攻撃しました。女の子を虫ケラでも見る様な目で…
女の子は担任の先生に相談しましたが、
「バレンタインに参加したアンタが悪い」
と言う返事しか返って来ませんでした。
ある日、男の子は理科室に忍び込み、理科の実験で使う塩酸を持ち出しました。その塩酸を廊下に居た女の子の顔にかけました。
「お前、陰キャだしブサイクだから大っ嫌いなんだよ!コレで学校に来れねーだろ」
男の子は今までの憂さを晴らす様に言いました。
顔の皮膚が爛れた女の子は入院して、毎日の様に
「男の子なんてきらい。元からきらい」
と、言いました。女の子のお母さんは、
「小学生の間は、好きだって気持ちは誰にも言わない方が良かったのよ。告白しても男の子は困るだけよ」
と、遅れたアドバイスをするしかありませんでした。
「コレでライバルも減ったし、良い気味。人気のある男の子は私の物だから」
お友達の一人が携帯電話をイジりながら言いました。
「アイツ、馬鹿だよねー。アンタの恋に協力するって思ったの?」
「さよなら大好きなゲームと漫画たち」
男の子はゲームと漫画が大好きな普通の子です。
ゲームと漫画が無いと毎日がつまらない位、毎日のように漫画を読み、ゲームに明け暮れていました。
男の子には、同じ趣味の友達がいましたが、友達は男の子をからかいがいのあるイジメられっ子に思っていました。
ある日、男の子の家に友達が遊びに来ました。
友達は、あろう事か男の子のゲーム機に海賊版のソフトを差し込んでゲームを起動したり、男の子の家の住所を調べ、男の子に成り済まして、男の子の好きな漫画家に漫画の悪口を書いた手紙を書いて近所のポストに入れました。
その日は友達は何食わぬ顔で帰りましたが、その日の夜、男の子はいつものようにゲームで遊ぼうとすると、海賊版を起動した時の映像が流れてデータが消えてしまい、男の子は二度とゲームで遊べなくなりました。
数日後、ゲーム会社の人とおまわりさんが家に来て、男の子とお父さんとお母さんは事情を説明しました。男の子の親達は罪に問われませんでしたが、おまわりさんは海賊版の影響は残るだろうと言いました。
更に数日後、男の子はいつも読んでる発売されたばかりの漫画雑誌を読むと、男の子を傷つける内容が延々と描かれていました。一番酷く描いていたのは、男の子が大好きな漫画家の漫画でした。
男の子は泣いてしまいました。大好きな物が全て無くなってしまったのだから。
一方、友達は大笑い。
遊び半分とは言え、まさか男の子が泣いてしまうとはと、ハシャギながら別の会社のゲームをやったり、男の子が読んでる漫画を見たりして宴会状態でした。
男の子は、勉強をするだけの生活になりました。
そうなると、ゲーム仲間だった友達は男の子から離れて行き、男の子は塾に行くようになりました。
男の子は、勉強以外やることが無いので学級委員に立候補しました。男の子は、他の立候補者が居なかったので当選をして学級委員になりました。
中学生になった男の子は、生徒会活動に専念するようになりました。成績が学年トップになり、高校受験では最難関校に合格しました。
卒業式の日、男の子は小学校の頃のゲーム仲間に再会しました。男の子は、底辺高校に進学が決まったゲーム仲間達にこう言いました。
「勉強もせずに、ゲームや漫画に明け暮れたから、底辺校にしか進学出来ないんだよ、バーカ」
男の子は、高校進学後、一番難関な大学に受験して合格しました。大学卒業後は起業して大成功を収めて、政治家になりました。結婚もして家族に恵まれました。
一方、ゲーム仲間達は、底辺高校で問題を起こして退学し、ブラック企業で働く羽目になってしまいました。