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「子犬工場」

子犬工場には、由緒正しき家庭から来た犬達がいました。
犬達は皆、血統書と言う紙切れを持っています。

この工場にいるメスのチワワも、お父さん、お母さん共にチワワの血しか流れていない由緒正しき家庭から来ました。

子犬工場は、血統書付きの犬を作るための工場で、チワワはチワワ、トイプードルはトイプードルと言った同じ犬種のオスメス二匹で子供を作り続けなければなりません。

子犬工場の環境は劣悪で、狭い檻に同じ犬種のオスメス二匹を閉じ込められています。餌はほんの少ししか与えられません。シャンプーやカットや爪切りや肛門絞りと言った体のケアはさせてもらえません。

メスのチワワも、同じ檻のオス同様にワンワン吠えて餌やシャンプーを要求しますが、犬達を管理している人間が来て、犬達を怒鳴り散らし、犬達が吠えなくなるまで棒で殴り続けました。

体中は泥だらけのように汚れてしまい、突然同じ檻に入れられた見知らぬ犬と毎日のように交尾して、子供を産み続けなければならない日々。同じ仲間の中には、病気になり、治療もさせてもらえず天国に行ってしまう犬達もいました。

メスのチワワはいつしか鳴かなくなり、人間に何されても抵抗出来なくなったある日、夢を見ました。


いつも檻部屋に来ている人間の他に、見た事の無い人間が来ました。いつも来ている人間は、
「この犬、子供産まなくなったんで引き取って下さい」
と、見た事の無い人間に言って、見た事の無い人間は、メスのチワワをキャリーケースに入れました。メスのチワワは、
「どこに連れて行かれるんだろう?」
と、不安でした。保健所に連れて行かれた場合、殺処分される可能性が高いからです。メスのチワワは震えていると、見た事の無い人間は、
「キレイにしてあげるからね」
と、メスのチワワに優しく語りかけました。

着いた先は保護施設。メスのチワワは栄養価の高い餌をお腹いっぱい与えられ、トリマーの男性に生まれて初めてシャンプーやカットや爪切りや肛門絞りをやってもらいました。トリマーの男性は、モサモサに生えて、所々毛玉になっているメスのチワワの毛のカットに苦戦しましたが、見事にポスターに載っているチワワらしい外見に仕上がりました。メスのチワワは嬉しくて、思わず「ワン」と吠えました。

「これで新しい飼い主さんを見つけるだけ。もっと鳴いたりして犬らしく生きても良いんだよ」
トリマーの男性はメスのチワワに優しく語りかけました。すると、雲に乗った人間が現れて、メスのチワワを空の国へ連れて行ってしまいました。

「安心して下さい。雲の上の世界は苦しい事も辛い事も悲しい事もありませんよ」


朝になり、オスのチワワはメスのチワワを起こそうとしましたが、メスのチワワは動きませんでした。

4/13/2022, 8:00:49 AM