「きらい」
とある小学校に、人気のある男の子と人気のある女の子がいました。
そして、男の子は人気のある女の子、女の子は人気のある男の子が好きでした。
女の子は、お友達に人気のある男の子とお近づきになりたいと相談しました。
お友達は、
「男の子の方がお似合いだよ」
と、口々に言って、女の子と男の子と無理矢理引っ付けようとしました。
女の子は、男の子はひょうきん者で、いつも先生を困らせる悪ガキだったので、男の子の事はあまり好きではありませんでした。
女の子は
「困るよ」と、お友達に言っても、お友達は
「大丈夫、お似合いだから!」
と、言って、聞く耳を持ちませんでした。
バレンタインデーの日、女の子は勇気を持って人気のある男の子に告白をしようとしました。
女の子は、人気のある男の子にチョコレートを渡そうとすると、お友達の一人がチョコレートを取り上げて、男の子に女の子のチョコレートを渡しました。
男の子は
「オイ、アイツがチョコを渡したぞ」
と、不機嫌そうに言うと、クラス中が大騒ぎになりました。
女の子は
「違うよ!このチョコは人気のある男の子に渡そうとしたの!」
と、言いますが、クラス中が大騒ぎになった以上、誰も女の子の聞く耳を持ちません。
それからと言う物、男の子は女の子に嫌がらせを始めました。
上靴をゴミ箱に入れたり、
女の子の机に落書きをしたり、
黒板消しをぶつけたり、
冬にホースの水をかけたり…
男の子は毎日の様に女の子を攻撃しました。女の子を虫ケラでも見る様な目で…
女の子は担任の先生に相談しましたが、
「バレンタインに参加したアンタが悪い」
と言う返事しか返って来ませんでした。
ある日、男の子は理科室に忍び込み、理科の実験で使う塩酸を持ち出しました。その塩酸を廊下に居た女の子の顔にかけました。
「お前、陰キャだしブサイクだから大っ嫌いなんだよ!コレで学校に来れねーだろ」
男の子は今までの憂さを晴らす様に言いました。
顔の皮膚が爛れた女の子は入院して、毎日の様に
「男の子なんてきらい。元からきらい」
と、言いました。女の子のお母さんは、
「小学生の間は、好きだって気持ちは誰にも言わない方が良かったのよ。告白しても男の子は困るだけよ」
と、遅れたアドバイスをするしかありませんでした。
「コレでライバルも減ったし、良い気味。人気のある男の子は私の物だから」
お友達の一人が携帯電話をイジりながら言いました。
「アイツ、馬鹿だよねー。アンタの恋に協力するって思ったの?」
4/7/2022, 11:44:18 AM