「普通の子になりたい」
少年は友達が多く、みんなの人気者でした。
少年は、周りのみんながいつもの様に話していて、
その話題を聞こうと話の輪に近づくと、
「お前、ホモだろ」
「ホモは嫌いだから近づくな」
と、捨てゼリフの様に言われました。
少年は「どうしたんだよ?」と、みんなに聞きましたが、
みんなは少年を避けるように離れました。
少年は、恋愛対象は少女なので、
少年が別の少年、つまり男性に恋愛感情はありません。
なのに、何で根も葉も無い噂が広まっているのか
少年は不思議に思いました。
少年から人が離れて行き、友達が一人も居なくなった頃、
少年の代わりに人気者になった第二の少年が、
「ざまあみろ」と、少年に言いました。
少年は、ゲラゲラ笑う第二の少年を見て、
自分の悪い噂を流しているのはそいつだと確信し、
少年は復讐を決意しました。
ある日、一人で廊下を歩いている
第二の少年を見つけた少年は、曲がり角に隠れて
すれ違いざまに理科室にあった
硫酸や塩酸を第二の少年の顔にブチ撒けました。
第二の少年の顔はケロイドの様に皮膚が爛れ、
少年は「コレでお前も結婚出来ないだろ!」
と、第二の少年に言い放ちました。
コレで普通の人間に戻れる訳じゃない。
でも、自分を不幸のどん底に叩き落とした奴が
幸せな人生を送るのが許せなかったんだ。
本当だったら幸せだったあの頃に戻して欲しい。
でも、もうあの頃は戻って来ない。
少年は一匹の大きな烏に姿を変え、
第二の少年を掴んで、地獄へ飛び去って行きました。
「背中の十字架」
目立たない子は、誰にも話しかけられない地味な子です。
イジメっ子達は、目立たない子をイジメの標的にして
暇つぶしのつもりで遊ぼうとしました。
目立たない子は、近くの席の子に話しかけようとすると、
その子達は、影で目立たない子の悪口を言いました。
他の子達が友達グループを作って行く中、
目立たない子は、一人ぼっちでした。
そんな中、目立たない子に話しかける子が現れました。
目立たない子は、
その子はイジメの黒幕だって事を知っていました。
目立たない子は、黒幕に
「何でそんな事をするの?」
と、問い詰めると黒幕は、
「この子は同性愛者だって!気持ち悪い!
近づかないでよ!」
と、大声で叫びました。
勿論、目立たない子は同性愛者ではありません。
でも、周りに居た子達は目立たない子を
虫ケラでも見るかのような目で見始めました。
その日以来、目立たない子は
「キモい」
「コロス」
「ウザい」
としか言われなくなりました。
そんな事を言うのは学校の人達だけではありません。
道や電車ですれ違う人、
映画館や図書館やお店の人にも
言われの無い差別用語を浴びせられました。
目立たない子は、
「私は女の子なんて大っ嫌い!
なのに、何で皆は女の子に
恋愛感情を持ってるって言うの?
私は普通の女の子なのに…」
と、いつも思っていました。
一方、イジメっ子達は、
「アイツ、何でスマホ持ってないんだろうね?」
「今はスマホのやり取りが当たり前なのに」
「まぁ、良いや。
ちょうど、憂さ晴らしの標的探してた所だったし」
「しかし、こうも引っかかってくれると
笑いが止まんないね!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
と、教室で大笑いしていました。
イジメっ子達は、ネットで
目立たない子が同性愛者だって言う
嘘の情報を広めていました。
目立たない子は、友達が出来ないから
流行の情報も知る事は出来ませんでしたし、
授業は、周りの席の子が
大声で叫ぶので聞き取れなかったり、
そのせいか、先生は
目立たない子を馬鹿呼ばわりしていました。
大人達は、目立たない子を
同性愛者ってレッテルを貼られただけで
人間扱いをしませんでした。
「お前はクズだ、役立たずの社会のゴミだ!」
目立たない子は、大人達にいつも言われて来ました。
目立たない子は、
「私は同性愛者じゃありません!」
と、いつも言っていますが、
人間達は聞く耳を持ちません。
ある人は、目立たない子に言いました。
「ネットに書かれた事は
永遠に消えないんだよ?
君は同性愛者だって、ネットで物凄く
書き込まれてるみたいだけど」
目立たない子は、酷い悲しみに暮れました。
数十年後、同窓会で
社会的地位がある仕事に就いているイジメっ子達が
思い出話をしていた時、
突然、目立たない子が入って来て、
銃を乱射して、その場に居た人間達を
地獄へ送りました。
「ファンタジーの世界」
「私、何でそっち側の人間になれなかったんだろう?」
アバターゲームの住人を見ながら、
ロールプレイングゲームの女戦士は思いました。
アバターゲームの住人は
お洒落な洋服を着て、
着飾ったコーディネートで
光り輝くステージの上を歩く
自分の様な
泥臭く、命懸けな殺伐とした戦いは無くて、
お姫様の様に
お茶を楽しみ、お喋りを楽しみ、
自慢のファッションを披露するのが日課。
自分が怪我を負い、
痛く、苦しい思いをしている時に、
アバターゲームの住人は
動物と遊び、お祭りに参加して、
お遊戯をして遊んでいる。
「私だって、お姫様みたいな生活を
送りたかった。
でも、私は
国の命運をかけて戦う勇者の
仲間の一人。
本当は勇者に
一人の女性として見てもらいたい。
お姫様は
地獄の囚人のように切り付け合うとか
拷問の様な修行は縁が無いのね」
そんな弱音を言う事は
戦士の私には許されない。
弱音なんて言ったら、
いつ、モンスターに攻撃されるか分からない。
平和の無い世界に油断は禁物。
少しの油断が命取りになる。
私は、何でロールプレイングゲームの
キャラクターになったんだろう?
私だって、
選べるんだったらアバターゲームの
キャラクターになりたい。
女戦士は
キャンプの見張りの時に
一人、月明かりに照らされながら思いました。
「クリスマスの日」
学校から家に帰ると、
オーブンでチキンを焼く匂いにつられて
台所に向かう幼き日の私。
台所のテーブルには、
グラタンや温野菜サラダが乗っていたけど、
肝心のケーキがどこにも無い。
お母さんが
「暖房の効いた部屋だとクリームが溶けるから
階段に置いてあるよ」
と、ケーキの在処を教えてくれた。
私は早速、ケーキの元へ向かい、
ケーキの箱の覗き穴から
どんなケーキか確認しようとした。
だけど、暗くて分からない。
階段の明かりを付けようとしたら、
母がやって来て、
「これ以上ケーキに触ると、
サンタさんが怒ってプレゼント貰えなくなるよ」
と、言いました。
私は、台所に戻りました。
夕食時になって、
家族みんなで団らんを囲って
クリスマスパーティーが始まりました。
チキンやグラタンや温野菜サラダを食べ終わり、
いよいよケーキが登場する時に
ケーキの箱を開けた父が、
ケーキのクリームを潰してしまいました。
母と妹と私は思いっ切り父を責めましたが、
父は、
「文句を言ってちゃ
せっかくのクリスマスパーティーが
楽しく無くなるぞ」
と、言いました。母は、
「じゃあ、潰した所はお父さんが食べ!」
と、潰れた部分のケーキを父に切り分けました。
私は、
「何だか、お父さん可哀想だな…」
と、父を憐れみました。
何だか、父だけ散々なクリスマスになったんじゃ…と、
幼心に心配しました。
ケーキを食べ終わった後、
私は父にケーキの事を聞くと、
「全然、嫌なクリスマスじゃ無いよ」
と、父は言ったので、
幼い私はホッとしました。
クリスマスの夜、
サンタさんにプレゼントが貰えますように
と、願いながら夢の世界に行きました。
「作られたお姫様」
王様とお妃様は、
なかなか子供が出来ずに悩んでいました。
王様とお妃様は、
結婚してから長い年月が経っていたので、
お妃様は、王様が自分以外の若い女性と不倫してしまうのでは無いか不安に思っていました。
お妃様は、腕利きの研究者に頼んで、
自分に結婚してすぐに産まれた場合の子供を
作ってもらいました。
研究者は、人間を作った例は無かったので、
自分の知恵を絞る限りの人造人間を作りました。
人造人間は、
若い娘の髪や皮膚や臓器を繋ぎ合わせましたが、
若い娘の新鮮な状態の遺体だけじゃ足りないので、
罪人の遺体の臓器も使って作り上げられました。
一人の人間を作るのに、
何十人もの研究者が携わり、
遂にお姫様が出来上がりました。
王様は娘の生誕祭を祝うべく
大規模の式典を開催しました。
式典は順調に進み、
薔薇のベッドに眠るお姫様を民衆に披露し、
お姫様を起こしました。
王様が不倫する心配が無くなったお妃様は、
お姫様を抱きしめると、
肩に激しい痛みを感じました。
お妃様は肩を見ると、
血が激しくドクドクと流れていました。
お妃様はお姫様を見ると、
お姫様の口は血だらけでした。
お妃様は出血多量で倒れてしまい、
お姫様は王様や家来、式典に参加していた民衆を
噛みつき始めました。
お姫様は物凄く早く動くので、
皆は逃げる間も無くお姫様に噛み付かれ、
血だらけになって倒れてしまいました。
研究者は、
「人間を作るとはそう言う事か…
魂が無いと魔物になるんですね」
と、手記を残しました。
お姫様は出会う人々を噛み付いて行き、
国中を血だらけにして行きました。
軍隊はお姫様を攻撃しようとしましたが、
王家の人間なので傷つける事は出来ず、
お姫様の噛み付きの犠牲になりました。
お姫様は、国中を周った後に
隣の国に行きましたが、
隣の国の兵士に攻撃されて動かなくなりました。
世界各国の研究者達は、
人間は作らないと誓いました。