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「クリスマスの日」

学校から家に帰ると、
オーブンでチキンを焼く匂いにつられて
台所に向かう幼き日の私。

台所のテーブルには、
グラタンや温野菜サラダが乗っていたけど、
肝心のケーキがどこにも無い。

お母さんが

「暖房の効いた部屋だとクリームが溶けるから
 階段に置いてあるよ」

と、ケーキの在処を教えてくれた。

私は早速、ケーキの元へ向かい、
ケーキの箱の覗き穴から
どんなケーキか確認しようとした。
だけど、暗くて分からない。

階段の明かりを付けようとしたら、
母がやって来て、

「これ以上ケーキに触ると、
 サンタさんが怒ってプレゼント貰えなくなるよ」

と、言いました。
私は、台所に戻りました。

夕食時になって、
家族みんなで団らんを囲って
クリスマスパーティーが始まりました。

チキンやグラタンや温野菜サラダを食べ終わり、
いよいよケーキが登場する時に
ケーキの箱を開けた父が、
ケーキのクリームを潰してしまいました。

母と妹と私は思いっ切り父を責めましたが、
父は、

「文句を言ってちゃ
 せっかくのクリスマスパーティーが
 楽しく無くなるぞ」

と、言いました。母は、

「じゃあ、潰した所はお父さんが食べ!」

と、潰れた部分のケーキを父に切り分けました。

私は、

「何だか、お父さん可哀想だな…」

と、父を憐れみました。
何だか、父だけ散々なクリスマスになったんじゃ…と、
幼心に心配しました。

ケーキを食べ終わった後、
私は父にケーキの事を聞くと、

「全然、嫌なクリスマスじゃ無いよ」

と、父は言ったので、
幼い私はホッとしました。

クリスマスの夜、
サンタさんにプレゼントが貰えますように
と、願いながら夢の世界に行きました。

12/18/2021, 11:39:11 AM