27(ツナ)

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7/17/2025, 10:35:37 AM

「揺れる木陰」

休日の公園で彼を見かけた。
一人で木陰に隠れるように座って、本を読んでいる。

先月、隣のクラスに転校してきたばかりの男の子。都会から越してきたその子は、端正な顔立ちで、なんだか妙に雰囲気があって一瞬見ただけで記憶に残るような、そんな子だった。

しばらく彼を眺めていると、風がそよいで木陰が揺れた。
その様はまるで、舞台上でスポットライトを浴びて輝くアイドルのようだった。
その拍子にこっちを向いた彼と目が合ってしまい、しまった!と思った瞬間。
揺れる木陰の下で彼は私に向かって微笑んだ…。

7/16/2025, 10:59:13 AM

「真昼の夢」

たまにものすごく現実的な夢を見ることがある。
そういった夢を見るのはたいてい昼間にウトウト微睡んでいる時だ。

夜中に見る夢は覚えていないのに、真昼の夢は起きた後もはっきりと内容や会話まで覚えている。
僕はその夢の内容を日記につけてみることにした。
読み返すと、夢の中の自分は普段の自分とはだいぶかけ離れた行動をとっていた。

酔って人に殴りかかったり、隣の住人に暴言を吐いたり、人にわざとぶつかって怪我をさせたり。
迷惑行為ばかりをしていて呆れたが、普段ならできない不道徳なことを夢の中で思う存分できて気分が良い気もしていた。

そんなある日、自宅に警察が来た。

「貴方の数々の迷惑行為は全て防犯カメラに残っています。署で詳しくお話を聞かせていただけますね?」
映像を見せながら警官は僕に詰め寄った。
全く身に覚えがなかったが、日記に書いた夢の内容とあまりに酷似していた。
僕が見ていたのは真昼の夢なんかじゃない、紛れもなく現実だったのだ。
一体いつから、夢と現実の区別がつかなくなっていたんだろう……?



7/15/2025, 10:47:12 AM

「二人だけの。」
(※7/9「届いて……」の続きのお話。)

彼女が居なくなってから1ヶ月が過ぎた。
学校中探し回っても人に聞いてもなんの手掛かりもなかった。

放課後、気分転換に屋上へ上がると珍しく誰も居ない貸切状態だった。フェンス越しに景色をぼんやり眺めて溜息をつく。
「なぁに?まーた悩み?溜息つくと寿命縮むんだよ?知ってた?ヤバくない!?」
突然後ろから声をかけられてビクッとなる。
聞き覚えのある声色と調子のいい話し口調にピンときた。
ずっと探し回ってた金髪派手ギャルのあの子だ!

「…も〜びっくりさせないでよ!ずっとあなたを探してたのに…。今までどこに居たの?学校中探したのにどこにもいないし誰も知らないし。」
「え、えぇ〜っとぉ、休んでた!ははっ。」
「そんなの嘘。あなたこの学校の人じゃないでしょ?」
「うげっ!んー…あ〜ってか、なんで私の事探してたの?」
図星なのか、あからさまに動揺して話題を変えようとした。

「それは、あなたにお礼を言いたかったから。おかげで彼と付き合うことができたって!…で、あなたどこの学校の人なの?」
逃げられないようにフェンスに追いやって問い詰める。
すると観念したのか彼女は重い口を開いた。
「言っても絶対笑わない?」
「もちろん。」
「…私、実は人間じゃないんだよね?」
「……(ん?)」
「あー、えっと、お化けとかでもなくて、あの〜その…か、神様、代理?みたいな?」
「……。」
「キャー言っちゃった!ねぇ、これ絶対他の人に言っちゃダメだよ!!!ふたりだけの秘密、ね!」
「……は?」

7/14/2025, 10:54:18 AM

「夏」

夏と聞くとなぜか物寂しく感じる。
皆さんは「夏」と聞くとどういう感情が湧きますか?

上手く言葉に言い表せないけれど、私にとって夏はまるで俯瞰的に見ている誰かの夢のように、現実離れしていて。
沢山の楽しいできごとがあったはずなのに、なぜか心には寂しさが残る。
そんな奇妙な相反する感情がどこからともなく湧き上がる季節なのです。

もっと直接的にいうと、私にとって夏は夢見心地で気持ちの悪い季節だということ。
そして、そんな気持ち悪い季節が好きだということ。

7/13/2025, 11:30:20 AM

「隠された真実」

俺の仕事は社会の裏で動くこと、すなわちスパイというやつだ。
所属の無い野良スパイの俺は表向き"探偵"として個人的に依頼者の依頼を請け負っている。

ある日、事務所に1人の女子高生が来た。
「…オセロ。」
彼女はポツリと呟く。俺はニヤリと笑って応える。
「…あ〜はいはい。オセロね。で、依頼は?」
「消して欲しい人がいる。」
「ほぉ。女子高生からなかなか物騒な言葉が聞こえたけど、まぁ、ご依頼とあれば。」

オセロとはごく一部の人間しか知らない暗号。表向きの探偵の依頼ではなく、裏のスパイ活動の依頼ってことだ。
数日後、ある政治家が自宅で急死したニュースが流れた。持病の悪化で事件性はなく不慮の事故死、と。
まぁ、俺の仕事だけど。

今日も平和のため探偵 兼 スパイとしての非日常のような日常は続く。

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