見つめられると
好きな人と話す時に目と目を合わせると効果的らしい。
幼なじみであり、好きな人でもある彼。
試験勉強の為に私は今日も彼を連れて図書室へ向かった。
彼は学年トップに入るくらい頭が良くて、対する私はビリから数える方が早いほどバカで。
いつも試験前は私の勉強を見てくれた。
「…ここは、この公式ね。あとは?」
いつもよりも間近にある彼の女の子みたいな可愛らしい顔に私が見惚れていると、彼の顔が赤くなっていく。
「……あ、あの。」
「ん?」
「そ、そんなに見つめられると…ちょっと、恥ずかしい、かも。」
「え?…うわあ!ごめんっ!」
思わず私も目を丸くして図書館で大声を出してしまった。
My Heart
「代償はお前の心臓だ。いいな?」
悪魔は僕の耳元でそう囁く。
「…あぁ、わかった。」
この国に、現実に、まさか悪魔なんてモノがいるとは思わなかった。
突然始まったいじめ。最初は小さな物を隠される事から始まった。
僕の反応を見て面白がった奴らは僕の私物を捨てたり、破いたり、燃やしたりと次第に酷くなっていった。
物だけに飽き足らず、奴らは僕自身を痛めつけ始めた。
痩せ型で非力な僕は奴らの格好のサンドバッグだったが陰湿で狡猾な奴らは顔だけには傷をつけないように気を回していた。
友達に助けを求めたが「次のターゲットになりたくない。」と僕を避けるようになった。
教師に助けを求めたが「指導しとくよ、けどお前にも非があったんじゃないか?」とあしらわれた。
親に助けを求めたが「仕事で忙しい、自分のことは自分で解決しろ。」と突き放された。
誰も助けてくれなかった。
あいつらの名前をノートに書きなぐった。
『憎い』とひたすら書きなぐって、表題に『遺書』と書いて机の上に置いて、ベランダに出た。
悔いは無い、できることはした。これで楽になれる。
「憎いんだろ?」虚空からおぞましい声が聞こえる。見渡す限り暗闇で人の気配はしない。
ソレはいつの間にか僕の背後に立っていた。
「!?」
「お!もしかして、お前、俺が見えるのか?」
見える。はっきりは見えないが真っ黒な人型の何か。ソレが話しかけてくる。
「憎いんだろ?俺の力があれば奴らを死ぬほど苦しめてやれるぞ?どうせ死ぬなら奴らに仕返ししてから死んだ方がいいだろ?な?」
「あいつらに…復讐ができる?」
「もちろん。」ソレがおぞましく笑っているのを感じて僕も思わず口角が上がる。
「どうすればいい?」
「簡単さ、お前の望みを叶える。それが終わった時に、お前の心臓を俺が貰う。願いを叶える代償はお前の心臓だ。いいな?」
そうして僕は、悪魔と契約を結んだ。
ないものねだり
人はどうしたって自分に無いものを他人にねだるものだ。
「いいな。」「ちょうだい。」「欲しい。」といくら言ったって手に入ることなんてないのに。
本当に愚かだ。
けれど、そんな自分も例に漏れず、ないものねだりするから滑稽だ。
「あ、いいなーあなたの人生、すごく楽しそう。わたしにちょうだい。」
好きじゃないのに
むしろ苦手だった。
人のことを見透かしてるみたいに余裕な態度で、どんな嫌がらせや嫌味にも涼しい顔して躱す。
極力関わらないようにしようと思っていたけど、気持ちとは裏腹に目で追ってしまう。
友達に「好きなの?」と聞かれてわたしは全力で「好きじゃない!」と否定した。
わたしはただ、あいつがボロを出すところを見たいだけ、あいつの悔しがる顔が、あいつの負けた姿が、あいつの余裕が無くなる所が見たいだけ。
断じて好きじゃない。
好きじゃないのに、なんか、気持ちがモヤモヤする。
わたしはどうしても、あいつから目が離せない。
その気持ちが「好き」だということに気づくまであと少し。
ところにより雨
君は晴れ女。僕は雨男。
君の周りはいつも晴れていて温かい。
僕の周りはいつも雨。
君はいう「晴れは好きだけど、ずっと晴れてると逆に気が滅入ることがある。たまには雨が降って欲しい。」って。
君は僕を必要としてくれる。
だから、僕は君に雨を届けるために君の元に現れる。
僕もいつも雨でどんよりして気分が落ち込むから、たまには明るくて温かい晴れの日が欲しい。
僕にも君が必要だよ。