「約束だよ」
(※3/4「約束 」 別視点のお話。)
あぁ、私は最低の母親だ。
順風満帆だった人生が180℃変わったのは旦那が突然、消えたあの日から。
子供ができて、家も引っ越して、働き盛りのこれからと言う時、子供と家とたくさんのローン返済を残して旦那は忽然と消えた。
その頃の私は自分しか見えていなかった。
毎日、未来の見えない暗闇で足掻いているだけだった。
弱い自分に嫌気がさして、何よりも大切だったあの子のことが見えなくなった。
子供と離れて、返済のため身を粉にして働くことを決めた。
あの子は、実家に預けることにした。
「必ず迎えに帰ってくるからね、約束。」
最後の日、指切り約束をした。
その時やっと、あの子の事をちゃんと見れた。
泣いていた、きっと私がもう帰ってくることはないと気づいていたのかもしれない。
「傘の中の秘密」
お前の大きな傘の中でお前は俺に───
「うわぁ〜最悪だ。これから帰んのに、雨降ってきた。なぁ、誰か俺を傘に入れて〜?」
懇願する俺をよそに「はぁ?」「嫌だね。」「誰がお前とアイアイ傘するかっ」「走れ。」と、まぁ散々な言われようだ。
なんだか本気で泣きたくなってきた。
「…俺ので良ければ、入る?」
そう言ってきたのは昔からの腐れ縁のアイツだった。家も同じ方向だしちょうどいいか。
「おぅ!サンキュ。あんな奴らほっといてさっさと帰ろうぜ!」
俺は肩を抱いて、ヒューヒューと茶化す声を背中に受けながら帰った。
腐れ縁と言っても、2人きりになると何も話すことなく、終始無言の帰り道、もう少しで家に着く頃だった。
「…あ、のさ、好きな子とかいる?」
突然、訳の分からない質問に困惑する。
「は、はあ!?…いゃ、いない。つか男子校だと、出会い無くね?彼女とか欲しいよな…はっ!お前!もしかして、彼女いんの!?」
アイツは目をまんまるくして首を横に振った。
「いないいない!…好き?な人はいる。」
「ほぇ〜、お前も隅に置けないな!どんな子?」
不意に傘を傾けられた。ちょうど俺たちの上半身を隠すように。
顔を思いっきし近づけられ、無意識に目をギュッと瞑る。耳元でアイツの声が聴こえた。
「…好きな子、君って言ったら受け入れられる?」
「……ッ!?」
その後の記憶が無い。
でも、これがきっかけで俺はアイツを意識し始めた。
「雨上がり」
(※5/25の「やさしい雨音」つづき)
先生から傘を借りた次の日、私は借りた傘を返しに職員室へ向かった。
しかし、そこに先生は居なかった。
部活動だと言われ、私は音楽室へ向かった。
吹奏楽部の練習はちょうど終わって部員達が出てくる。人が居なくなったのを確認して部室に入ろうとすると、中からピアノの音が聞こえた。
まだ部員がいるのかと少しドアを開いて覗くと、先生だった。
綺麗な手つきで器用に両手で鍵盤を奏でる。
先生の演奏に夢中になっているとドア越しに目が合ってしまった。
「あれっ?どうしたんだ?」
「あ、失礼します。昨日借りた傘を。ありがとうございました!お陰様でびしょ濡れにならずに帰れました。」
「どういたしまして。そっか、それは良かった。……あと、何か?」
傘を手渡してなかなか帰らない私に先生は首を傾げる。
「あっ!いや、えっと、その。」
言えない。ピアノを弾いてる姿がかっこよくて魅入ってたなんて。口が裂けても言えない。
「…なんでもないです!帰ります!さようなら!」
音楽室から勢いよく飛び出ると、突然外からザーッと音が聞こえる。
いつの間にか先生が隣に立っていた。
「あ!まーた雨降ってきた。通り雨っぽいな?そうだ!雨が上がるまで少し雨宿りしていけば?」
「雨宿り?ですか?」
「俺趣味で小さい時からピアノやってるんだけど、雨が止むまで観客になってくれない?」
嬉しい申し出に間髪入れずに返事をする。
「いいんですか!?是非!!」
雨が上がるまでの間、特別な演奏会が始まった。
「勝ち負けなんて」
「「付き合ってください!!!」」
同時にそう叫んで手を差し出した。
俺と親友のあいつは同じ子を好きになってしまった。
勝敗は五分五分…のはず!
心臓の音で周りの音が何にも聞こえない。
「…ごめんなさいっ!」
結果は、残酷にも2人とも敗北だった。
帰り道、2人で公園に寄って、黄昏ていると「ちょっと待ってろ」といって親友はどこかへ行った。
「…ほい、今日は飲もうぜ。」
戻ってくると、缶コーラを俺に手渡した。
「おぅ、ありがとう。」
「勝ち負けなんて、関係ねぇ。お互いよくやったよ。今日は飲んで忘れようぜ!」
親友は俺の肩を抱いて夕日を見上げて1粒の涙を流した。
中学生にしては貫禄のありすぎる親友の姿に思わず吹き出した。
「まだ続く物語」
A) 卵が先!
B ) いいや!俺は絶ッ対に鳥が先だと思うね。
A)じゃあその鳥はどっから来たんだよ?
B) …え?
A) お前アホだなー。空から卵が降ってきたんだよ!そっから鳥が産まれてその…鳥が…卵を、産む?ん?あれ?その卵ってどうやってできんだ?
B) ははーっ!自分で墓穴掘ってやんの!
結局、卵を産まなきゃいけないから鳥の方が先に誕生したんだ!…でも、あれ?誕生するには卵…から?
A)なーんだよ!偉そうなこと言ってて自分だって墓穴掘ってるっつーの。
鳥がむき出しで産まれてくるわけないじゃないか?
どんな鳥だって必ず卵から孵る!
だから────