秋風🍂
私と彼の間に秋風が吹く。
少し肌寒いその風は肌に刺さってくるような嫌な冷たさ。
「涼しいね…もうすっかり秋だ。」
私が何を言っても反応しなくなった彼。
その態度がより鮮明に終わりを告げているように感じる。
昔、祖母から聞いたことがある。
『秋風が立つ』という言葉がある、仲睦まじい男女の間に亀裂が入り、縁が切れる事だと。
今この瞬間、秋風が私たちの縁を切った。
「秋(飽き)風…か。」
私たちは秋の落ち葉のように儚く終わった。
予感
この世に超能力者なんていないと誰かが言った。
本当にそうだろうか?
なんか、電話が鳴りそうだなと近づいた瞬間、本当に着信が来たり。
今日は別の道で帰ろうと回り道したら、いつもの道で事故が起きたり。
どこからともなくお線香の匂いがすると思ったら、その晩に祖母が他界したり。
世にいう『予感』『虫の知らせ』『勘』
これは超能力的な現象ではないのだろうか?
普段は動かない第六感が動いて少し先の未来を予知、回避する。
超能力者は実在する。
予感もある種の能力なのだ。
friends
たまに思うことがある。
私と君たちは出会うべくして出会ったのだろうかと。そういう運命だったのだろうかと。
途切れる縁もあったが、君たちとの縁は途切れなかった。
これが本当の友情なんだなと実感する。
家族愛とも恋愛感情ともまた違った、深い絆。
私は君たちに出会えて本当に良かった。
気恥ずかしくて、なかなか面と向かっては言えないけれど、
「友達になってくれてありがとう。」
親愛なるfriends.
君が紡ぐ歌
僕は猫。もともと野良猫だったところを君に拾って育ててもらった。
君は僕を膝に乗せて窓辺で歌を歌ってくれた。
優しくて、暖かくて、とても心地の良い歌。
僕は君の歌声が聴こえるとすぐに君の所へ行く。
でも、君はいつの日からか窓際のベットから動かなくなった。
ゴホゴホ咳き込んで苦しそうで、歌もあまり歌わなくなった。
君はいつもベットから僕のことを眺めていた。
笑った顔と君の紡ぐ歌が聴きたくて、君の所へ行くと君は眠ったまま全然動かなかった。
歌が聴こえない。寂しいよ。
君のママがすごく泣いてる、パパもすごく悲しそう。
そっか…もう、君の歌は聴けないんだね。
僕の目から涙が出てきた。
光と霧の狭間で
友人がある日、突然仕事をやめて消えた。
人づてに半月も色々と探して、ようやく居場所を突き止めたが、友人は地方の山奥にいた。
「おい、探したんだぞ!急に連絡がつかなくなって心配したんだ。お前ひとりなのか?奥さんはどうしたんだよ。連絡つかなくてさ。」
「…。」
「おい、おい聞いてるのか?もう少しで捜索願い出すとこだったぞ?」
「…。」
友人がおかしい。目が据わったまま口角だけ上げて、ずっと山の方を見ていた。
俺の質問には全くの無反応で、しばらく俺も無言で様子を伺っていると突然口を開いた。
「…光と霧の狭間で。」
「は?光と、霧?狭間?なんの事だよ?」
「光と霧の狭間で。」
顔は俺の方を向こうとせず、口だけが動いた。
俺は気味が悪くて、逃げるようにその場を後にした。
友人は「光と霧の狭間で、光と霧の狭間で、光と霧の─────」まるで壊れたロボットのようにそれだけをずっと繰り返していた。