27(ツナ)

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8/9/2025, 11:17:38 AM

風を感じて

車窓から少し顔を出して爽やかな海風を感じる。
隣で運転している友人はずっと口を噤んだまま。車内には未だどんよりした空気が漂う。
「…運転お疲れ。なぁ、横見てみ!海!」
明るく振る舞うが、友人は顔面蒼白でしかめっ面をして運転をしていた。
しばらくすると、崖の近くで車が止まる。
「着いたぞ。」
そう言うと、トランクを開けた。
「手伝え。絶対に誰にも見られるなよ!周りを確認しろ。誰かに見られてたら俺らはおしまいだ。」
辺りはすっかり暗くなっていた。暗闇にどこからともなく不気味な波音がこだまする。
「ん。誰もいないから大丈夫だ。…さっさと終わらせよう。」
トランクからビニールシートに包まれた遺体を出して、急ぎ足で海に投げ棄てる。
崖の下を覗きこむと生ぬるくて気分の悪い風を感じた。

8/8/2025, 11:12:43 AM

夢じゃない

放課後の教室。
暖かい日差しに照らされて眠る君。
そっと隣に座って、あどけない寝顔を眺める。

「う、んー。ふ、ふへへへ。」
突然、笑いだした。
きっと面白い夢でも見てるんだろうな。
そのあまりの可愛さに君に近づいて呟いた。
「…好きだよ。」
「……ぁたしも。好き!ん〜んふふふ。」
「!?」
えっと、まさか、起きてる!?いや、完全に寝てる。それとも、これは俺の夢?
思いっきり自分のほっぺをつねった。

「…いっ、た。夢じゃ、ない。」

8/7/2025, 10:52:47 AM

心の羅針盤

心には羅針盤がある。
『胸に手を当てて聞く』という言葉があるが、それこそが羅針盤だ。

答えに迷ったら、胸に手を当てて見て欲しい。
心が反応していれば答えはYES。
心が動かなければ答えはNOだ。
進むべき道は常に決まっている、誰もが心の羅針盤を持って人生という大海原を航海しているのだ。

8/6/2025, 11:03:10 AM

またね
(※8/5 「泡になりたい」続きのお話)

泡になって消えてしまいたい。そう思って海に飛び込んだ。
海の中でひたすらもがく。潔く消えればいいのに本能が体が "生"に執着する。

だけど息は続かなくて意識が遠のいていく。
そんな時、不意に背後から抱き抱えられて海面に上昇していく。

「ぷはっ、うぇっ。ゴホッ、ヴ……ゲホ、ゴホッ。はぁはぁ…。だ、誰?」
そのまま浅瀬まで運ばれた。
「……なんでこんなことするの?あなたは人魚じゃないでしょ!?危ないよ!」
「に、人魚…?」
「荒れた海は私たちでも危険なの!だからもう二度とこんなことしないで!穏やかな海に戻ったらまた君の元気な顔を見せてね!それじゃ、またね!」
そう言うと彼女は荒れた海にまた戻って行った。
彼女の下半身は足の代わりに、まるで魚のような鮮やかなヒレが付いていた。

「また、ね。」
また。その言葉に僕は救われた。



8/5/2025, 12:24:43 PM

泡になりたい

友人も家族も頼れる人は誰もいない。
孤独だ。
人間として生きている意味がわからなくなってしまった。
泡になって消えてしまいたい。
泡になって消える……。
あれ、なんかこんな話、昔聞いたことがあるような。
人魚姫?だっけ。

どんな話か忘れたけれど、泡になって消えるんだよな。
そんな事を思い出しながら、僕は荒れた海に身を投げた。
人魚姫のように泡になって消える様に。

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