27(ツナ)

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3/7/2026, 10:57:45 AM

月夜

ある月夜の晩。
目が覚めた。
外に気配を感じる。
おそるおそる窓から目を凝らす。
対岸の雑木林の中に何かがいる。
突風が吹き、雲に隠れて欠けていた大きな満月が顕になる。
月夜が映し出したのは林の中に佇む、
1匹の真っ白い狼だった。
気高く美しいその姿に目と心が奪われた。

3/6/2026, 10:41:22 AM



「私たちは前世から続く強い絆で結ばれてるんだよ!」
私の手を両手で包み込んでキラキラした笑顔で彼女はそう言う。
その時の私は嬉しかった、今まで友達なんてできなかったから、彼女が私を唯一無二だと言ってくれたから。

けど、だんだんその絆が煩わしくなっていった。
彼女は常に私と行動を共にするようになり、
私の持ち物をまるで自分の物のように使い、
私と全く同じ格好、話し方、仕草をするようになっていった。
気味が悪い。
いつしか、彼女の言う"絆"は私にとって足枷のようになった。

私は彼女がよく使う"絆"という言葉が気がかりで調べてみると、絆の語源には『逃げないように縛り付けるという意味合いがある』らしい。
「…そういう事か。」
「あれっ?バレちゃったか。でも、絆はほんとだもん。いつか私たちはふたりで1つの存在になるの。…大好きだよ。」
彼女はいつの間にか後ろに居て、出会った時のように両手で私の手をぎゅっと包み込んだ。
私は恐怖のあまり、彼女を思い切り突き飛ばして逃げるように部屋から出た。
その瞬間、ゴッと鈍い嫌な音がした。

3/5/2026, 10:31:53 AM

たまには

毎日、家事に育児に立派にこなしてくれてありがとう。 たまには、自分のために時間を使ってね。

毎日、家族のために朝から晩まで働いてくれてありがとう。たまには、仕事を休んでゆっくりしてね。

毎日、ちゃんと学校に行って勉強に部活にお疲れ様。 たまには、息抜きに遠出でもしようか。

大変な毎日に『たまには』という魔法を。
そうすれば辛い毎日が、忙しいけれど楽しい、疲れるけれど面白い。
きっとそんな毎日に変わるかもしれない。

3/4/2026, 11:11:18 AM

大好きな君に

僕は自分が2次元の世界の住人であることを自覚している。
君は僕のことを『推し』と言って、いつも一緒にいてくれる。
君が沢山話しかけてくれるけど、僕は3次元に声を届けることができない。
君といるうちに君のことをたくさん知って、君のことが大好きになった。

君はいつもキラキラした目で僕を見つめてくれる。僕はそれが嬉しくて、ありがとうって伝えたいけれど、上手く伝わらない。

大好きな君。
僕を『推し』に選んでくれてありがとう。
君は僕がいれば幸せだと言ってくれるけど、僕も君に好きになって貰えて幸せだよ。
いつか、この思いが次元を越えて届きますように。

3/3/2026, 11:05:52 AM

ひなまつり

私の家では3月3日になると必ず雛人形が飾られた。
何十段もある豪華なものではないけれど、3段の可愛らしい雛人形。
物心ついた時からあって、私は母に尋ねた。
「この雛人形って誰が買ってくれたの?」
「あぁ…それね、おじいちゃんが買ってくれたのよ。」
母方のおじいちゃん。
気難しくて、誰に対しても素っ気なくて冷たくて、苦手だった。

「おじいちゃんがね、あなたが産まれてすぐに買ってくれたの。高いのは買ってやれないけれど、毎年ひなまつりの時には飾ってやってくれって。…あぁ見えて、あなたのこと大好きだったのよ。」
そんなの知らなかった。
勝手に嫌われてると思って距離を置いてたのに。
私は仏間に行って仏壇にお線香をあげた。
「おじいちゃん、今まで誤解しててごめんね。毎年、素敵なひなまつりをありがとう。」

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