「星」
仕事から帰宅した時、たまに暗くなった夜空を見上げる。
あまりにも雄大で綺麗な星空に自然と感嘆の声が漏れる。
と同時に、自分の小ささを思い知らされる。
辺りの暗闇を利用して美しく強く輝きを放つ星。
私も夜空に光り輝くこの星達のように、もう少し強かに生きてみようと思った。
「願いが1つ叶うならば」
病室の窓から日がな一日、空を眺めるのが日課になっていた。
わたしはもうすぐ、妻の待つあの空へと行くのだろう。
といっても、あちらで妻が待っているかどうかはわからない。
「願いが1つ叶うなら、何をお願いしますか?」
病室のテレビからそんな文言が聞こえてきた。
願い…か。
普通ならば、もう少し長く生きたいだとか、せめて苦しまずに、などと思うのだろうか。
わたしの願いはただ1つだ。
「どうか、空へ行った時、愛する妻が迎えてくれますように。」
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いつの間にか意識が遠のいて、気づくと妙に明るく温かい空間にいた。
目の前には先立ってしまったはずの愛する妻。
「おかえりなさい。あなた。お勤めご苦労様でした。」
あぁ、願いが…叶った。
「嗚呼」
「嗚呼、タイクツダ。」
貧乏書生は神田の街をフラフラ彷徨う。
今日も今日とて平和で退屈な、くだらない。
なにか事件が起こらないかとフラフラ彷徨う。
「おい!そこの。」
突然、誰かに呼び止められた。
「ワタシの名前はソコノではない。」
「そんな事はどうでも良い。暇なら手貸してくれ!」
「お?ナンダナンダ。事件か?事故か?」
「は?いや、この荷を運ぶのを手伝ってくれ。絶対に落とすんじゃねぇぞ!あーあと、絶っ対に中は見ないようにな。」
「ナンダ、荷運びか…。ん?何かクサイぞ。」
チラッと荷を盗み見ると、切断された人の四肢のようなものが見えた。
「嗚呼…オモシロクナッテキタ。」
「秘密の場所」
俺の小学校には、自称・魔女の女の子がいる。
みんなは怖がったりバカにしたりしていたが、俺はなぜかその子が気になって仕方なかった。
ある休日、たまたま街中でその子を見かけ、不意に追いかけた。
街をぬけて草むらの中に入っていく、進むにつれ草は俺の身長よりも大きくなっていく。
すると、急に辺りが開けて1軒のレンガ造りの家があった。
その子はその家に入っていった。
ぼーっと眺めていると、玄関からその子が出てきて、俺に手招きした。
気づかれてしまい焦ったが、恐る恐る家に入った。
「あ、あの。お邪魔します…。」
「どうぞ。…手、貸して。怪我してるから。それくらいなら私でも治せる。」
「え?」
見ると、手の甲に切り傷があった。さっきの草むらで怪我したのだろう。
その子が、俺の手の甲に手を当てて少しすると、スパッと切れていたはずの皮膚が綺麗に繋がっていた。
「え!?」
「学校のみんなには内緒にして欲しい…。家の場所も。今日のことも。」
それ以来、彼女の秘密とあの秘密の場所は俺の秘密になった。
「ラララ」
「ラララ〜ラララ〜♩」
どこからともなく、透き通った綺麗な少女の歌声が聴こえてくる。
声の主を探して部屋から外を覗いてみる。
外は真っ暗で何も見えない。
「ラララ〜ラララ〜♩」
また、聴こえてくる。だんだん意識が遠のいていく気がする。
「ラララ〜ラララ〜♩」
いつの間にか部屋の外に出ていたらしい。
「ラララ〜ラララ〜♩」
「あれ、ここは?」
気づくとアパートの屋上の柵の外にいた。
次にこの歌声を聴いてしまったら、私は一体どうなってしまうんだろう。
「ラララ〜ラララ〜♩」