27(ツナ)

Open App

「願いが1つ叶うならば」

病室の窓から日がな一日、空を眺めるのが日課になっていた。
わたしはもうすぐ、妻の待つあの空へと行くのだろう。
といっても、あちらで妻が待っているかどうかはわからない。

「願いが1つ叶うなら、何をお願いしますか?」
病室のテレビからそんな文言が聞こえてきた。
願い…か。
普通ならば、もう少し長く生きたいだとか、せめて苦しまずに、などと思うのだろうか。

わたしの願いはただ1つだ。
「どうか、空へ行った時、愛する妻が迎えてくれますように。」



いつの間にか意識が遠のいて、気づくと妙に明るく温かい空間にいた。
目の前には先立ってしまったはずの愛する妻。

「おかえりなさい。あなた。お勤めご苦労様でした。」

あぁ、願いが…叶った。

3/10/2025, 11:31:21 AM