ねぇ、君。自分の事、見てるかい?
うん、君だよ。君は君自身のこと、ちゃんと見てる?
自分のことは自分が一番分かってる?
それは君自身の言葉かい?
君は何か決断するとき、なにを基準に考えてる?
なんでもいい、授業中にトイレが行きたくなった時とかでもいい。
君はどうする?
それはなにを基準に決断したんだろう。
誰かからの評価?評判?
それって誰?
先生?それとも友達?それとも別に仲が良いわけでもない同級生?
それともそんなの何も気にしてない?
それって誰かからそんなの気にする必要ないって言われたからじゃない?
それは誰だっただろう。
親?それともそれ以外の大人?それともアニメとかのキャラクター?
誰かが思い浮かんだ?
きっと君が何かを決めるときってのはきっと誰かから渡されたコンパスで決めてる。
でも色んな事を思い出して。好きなもの、嫌いなもの、夢中になったもの、理由はないけどやりたくなかったこと。
そしたら誰かが思い浮かばない事がある。
君自身はそこにいるよ。そこにいる君を大切にしてあげて。
悪いことなら背中はちょっと押せないけどね。
きっとあるよ。君が忘れてた素敵な君自身。
私は“つくる”のが好き
そんな事考えもせず時間も忘れてつくった。
そしたらキミがやって来て、
私の“つくった”を「好き」と言ってくれた。
もっとキミの「好き」が欲しくて一生懸命つくった。
キミはまた沢山の「好き」をくれた。
そしたら私の“好き”が分かってきた。
そして“嫌い”も分かってきた。
私は人の“つくった”を沢山見るようになった。
沢山の“好き”ができて、沢山の“嫌い”もできた。
私は初めて“嫌い”を口にした。
そしたらアナタがやって来て、
「僕もそれが嫌い」と言った。
アナタと嫌いを共有したらお互いを分かり合えて嬉しかった。
そしたらだんだん私の“つくった”が醜く見えてきた。
「嫌い」
私は“つくる”をやめてしばらく経つ。
そんなある時キミがやって来た。
私の“つくった”が気になると言う。
キミは私が断っても引かなかった。
私はヤケクソに“つくる”をした。
“きらい”が出来上がった。
私は情けなくて恥ずかしくて惨めだった。
目の前に広がる“きらい”の責任を押し付けるように私はキミを睨んだ。
キミは私の“嫌い”に目を向け口を開いた。
「やっぱり、好き」
…
私は私の“つくった”が嫌い。
でも、私は“つくる”が好き。
私はキミの側で“好き”に向かって走っている。
「誰かいますかー」
どこまで続いているのかわからない暗闇に向かって僕は声を投げた。
ぼおおぉぉん。暗闇の中で反響した僕の声が響く。
ああ、本当に僕ひとりなのか…。
暗闇が孤独と不安を僕に押し付けてくる。
それに反発するように僕は足を前に進めていく。
暗闇はますます濃くなっていく。そろそろ自分すら見えなくなってしまいそうだ。
それでも歩みを止めない。立ち止まればもっと辛くなるのは目に見えていた。
そんな時…
ぼおおぉぉん。
音が響く。なんの音だったものだろう。
孤独をまた押し付けられたとき心が保てるように、どーせ、と僕は希望を押し殺す。
風が響いてるだけだろう。
僕のさっきの声がどこかから跳ね返って帰ってきただけだろう。
どこか岩が崩れでもしたのだろう。
そんな考えとは裏腹に歩みは速くなっていく。
希望を押し殺す理由が思いつかなくなる頃にはもう我慢できなくなっていた。
「おーい!!だれか!!」
出し方など忘れていた大声が喉からはい出てくる。
ぼおおぉぉおおん。
いままでより大きな音が響く。
その先にあるのは…
「文系科目なんてやる意味あんの?」
「歴史とか覚えて将来使うの?」
声が変わり始めたガサガサ声の少年は言った。
少年は自然科学の実験が大好きだった。
魔法のような現象には明確に理由が存在し、手順を守れば誰でも魔法を使えるのだ。それは面白いだろう。
少年はパズルが大好きだった。たったひとつだけの正解に自分の力だけで辿り着けた時の達成感はたまらない。人より早く解ければ更に快感は増すだろう。
だから少年からそんな言葉が出るのは時間の問題だったのだろう。
そんな少年に私はある言葉を授けた。
「信仰なき科学は不完全であり、
科学なき信仰は盲目である。」
これは天才物理学者と呼ばれたアルベルト・アインシュタインの言葉である。
少年が好きな魔法は少年の身の回りに溢れ生活を便利にしている。だが、少年の好きな魔法は使い道を間違えば簡単に人を不幸にできる。
魔法がキラキラした魅力を保つには文系科目が持つ思想や歴史が不可欠なのだ。
世界には”知らぬ”が故に起こった不幸が沢山ある。
安全な物に怯えて人を傷つける人達は今も尚絶えない。
不幸の溝に足を取られず道を進むには理系科目が持つ論理や知識が不可欠なのだ。
明確な答えを出せるかどうかで点数を付け評価するという学校教育は理系科目との相性はよく、文系科目への疑問が湧きやすい構造だ。
少年が少年であるうちはどちらも注視するのは難しいだろう。大人と呼ばれるようになった私ですらそれは難しい。
でも少年、見ていない方向にあるものを無視したり卑下したりしては絶対にいけないよ。
少年は完全には腑に落ちていない様子だったが何かは伝わったようだ。
少し説教ぽくなってしまったな。あとで少年の好きなお菓子でも買ってあげるとしよう。