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美しきの定義を、海と宇宙の関連性を、我が音楽を問う。
(神は悪魔よりも人を弄ぶ結構な趣味をお持ちらしい。目映い救いは己が認めた者にしか与えぬ、と。偏愛。
だがしかし、下手な博愛主義者とそれ等を比べるとすれば、言ふまでもなく信用出来るのは前者であろう。)
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カトラリイで舌を切る。味蕾一つ一つ噛み潰せば其処から言葉は溢れいづるのかしら?ナンテ幾許かの疑問に首を傾げているの、あたし。馬鹿ね。そんな事したって愚者へのアイロニが届く訳でも無いのに。......エ、そんなだから見放されるのよオ、オホ、ホ、ですッて、まア、趣味が悪いですコト、羊の腸詰め肉みたいな指にぎんぎら光る指環をお付けになって?ご覧になりました?キリストの肉をお食べとも言えませんわ、アア云うのッて天罰とやらが下るんデショ。ご存知。まるでAliceの追ったウサギの皮を剥いでいる老婦みたいでしたわ───蹲って満ちた潮にみづから溺れている様に見えたンですもの。カアイソウにラムプも揺れてました。ティー・カップを逆さにして平気で居られるなんて夢みたい。もう、イチ、ニイ、サン、ニイ、ニイ、サン。ア、ダメ、落っこちそう。
花火を上げると、うなばらの肌膚を玉皮が撫ぜる。
おわり、の、符丁だった。
かんばせをうかべ、Kは半身を岩礁に乗り出す。
女はべそをかく形相と繕いとを蹣跚する表情で、摺りあしのなみだが海岸へつたう。纏う衣服が柳絮のようで、かんばせに山茶花を彼方此方携えたさまが似合っていた。
「あちき、だめだったぁ」
うわずった、声音だった。
Kは自分のたなごころに視線を落とす。水滴がおちる箇所をさする、つぶす、殺す。しばらくして首肯いた。
「こなたさまだけ。こなたさまだけでござりんす。あちきが、間夫をあいしていると聴いても、わらわせん、また、非難せんで、…。こなたさまだけでやんす。ありがとうござりんした。あちき、こなたさまがおりんせんかったら、もう、…もう、。とかく。間夫とはおさればえ。」
女はKのほほをたなごころで包み、額と額とを、くっつけた。鉤爪で痛みを増悪させないよう、女を、やさしく、せいいっぱい、抱き締めた。長い尾びれと、粘液との居心地はさぞかし悪いことだろう。
腕のなかで、女が、すきでありんした、とささやく。
またがる彼女は膝上が肌蹴ており、毀瘠になってもなお、不幸にも淫靡であった。それが女の生涯であった。虚しくも動物、総排出腔のナミダが岸の凹凸をなぞる。
うなばらが粟立つ。
あちき。ーー。女がKの掻疵をなぞり、真皮と魚鱗とのあいだにゆびさきを差し込む。力をくわえて深く剥ぐ。束の間にしょう指の腫瘤目がけて穿つ。反射的に鉤爪が衣服を裂き、女はさいごに微笑した。
「虚妄でも構いやぁせん」
覚悟のある炯眼であった。
慮外なく脆弱な女の指をアと真一文字を解き喰らう。澎湃に揉まれよ飛んで火にいる夏の虫。糸にもなれない血のゆくえはいずこやら。夥しいうたかたに燃ゆる彼らの夏。
「アジサイの葉は毒をひめている」
寝腐り、あけはなれた。ぼくはたべても、きっとあまくはない。
まだ、まだ。死の幽香を懐孕していながらも、ねたりない。おやすみなさい。
(ラベンダーの香を身に纏いたい、今日この頃。オマエと絡めた小指。海を攫うのはムリだけど、海に包み込まれるのはカンタンでしょ。)
孤独な鯨、あの白鯨にすこし似ている。ベッドで御眠り。
******、オレたち一緒に行こうねえ。
なんて笑つてゐたのは何時の話だったかしら。あんまり窓の外が光るものですから其れも忘れて仕舞ったのでしょう。橄欖石やら翡翠やら瑪瑙やらの色をした草を風が撫ぜるばかりで、それでいて、どうにも厭きるということもなく、なんべんも光っている。さいわいというものが何たるかを教えようとしているようでした。そしてまた鼻腔を擽るとこれもばらの匂いがするのです。こんな綺麗なものいままで見ただろうかとうんうん唸っているうちに、うすくらい隧道へと入りまして、けれどもやはりその中も不思議に水の音がしました。ポチョリ、ポチョリ、何かに当たっているようで、ようく目を凝らしたはよかったのですが、存外に隧道が短かったらしくついぞその正体は分からずじまいに終わったという訳です。
わたし今夜は、とうさまと星宿のつらなりを眺めていましたの。天にこぼしたミルクの伝うのを、まばたき三度、その都度に余計伝って往くのを少しばかり濡れた草はらで見ていましたわ。あんまりにやさしくって、シルクみたいなやわらかさをともなっているものですから、 舐めてみたら甘いあじがするのかしら、水瓶座には満杯にミルクがつまっているんじゃアないかしら。 そう云ッたらとうさまに、笑われてしまった。もうわたし恥かしくって恥かしくって、くちの中に入れてゐた琥珀糖を黙って呑み込んだんですわよ。勿体ないことしちゃった。.....フン。......あのね、あのねエ。あとでわたしに海色のチョコレイトを渡して謝ってきたけど、許してあげないの!羊の人形を抱えて知らんぷりした。しろういやわらかい綿に顔うずめて、聞いてないですよッてしたんです。そしたらとうさま、しょんぼりしてた。さっき見た時も。今思い出したらわたし、チョッピリ可愛そうな気がしてきましたわ、しようがないから明日の朝ンなったら許してあげようかしら?はちみつ入れたホットミルク、持って行ってハグしてあげようっと。