「んばあ! あはは、ビックリした? 」
ピクリ、耳が突然の声の正体を探して動いた。
四方八方何処を探しても、声の正体は見つからないと分かっていながらそっと辺りを見渡す。
彼が現れたのは、ほんの1か月前。
自分は宇宙人だと主張する、とても美しい顏をした頭のおかしい人だった。少し暗い木陰の中で、薄茶色の髪の毛をゆらゆらと風に遊ばせながら私を見てにっこりと微笑んでいたから、思わず会釈をしてしまったのが始まり。
「おや。君は、私のことが見えるんだねぇ」
見えないことが当たり前だと言いたいみたいにそう呟いた彼は、星空みたいにキラキラと光る紫の双眸を私に向けていた。それなのに、私を見ていないのように思えたから不気味に感じ、少し後ずさる。
「あはは、私が怖いかい? 」
「……いいや。怖くは、ないです」
悲しそうに目を伏せる、その表情があまりにも孤独な少年のように見えたから慌てて怖くはないと嘘を吐いた。
そうしたら、またにっこりと笑ってふわふわと体を浮かし始めた。
「え"?!!! 浮かし始めた?!! 」
「おや、これは吃驚」
くすくす、耳の奥を擽るような柔らかい笑い声に絆されて、彼の体が浮いていることがぼんやりとしか感じられなくなった。というか、どうでも良くなった、の方が正しいのだろう。
「私は、宇宙人だからね。これくらいは朝飯前なのだよ」
「は、はぁ……」
「今宵この国では、仮装をして楽しむのだと聞いてねぇ。これは私も行かなくては、とね 」
宇宙人だろうが、宙に浮こうが、今日なら「凄いなぁ! 」という笑い話で終わると思っているのだろうか。笑い話で終わるのは現実的に理解出来るような事だけで、現実的にも科学的にも処理できないような現象は、凄いなぁの言葉の代わりに悲鳴を与えられるとは知らないのだろうか。
知らないんだろうな、宇宙人だもんな……。
「行ったとしても、私の姿が見える人間など居ないと思っていたんだけれど……あはは、君は私と相性がいいようだね。嬉しいな」
そう言った彼はそのまま、ふよふよと浮いて空へと飛んで行ってしまった。
何だったんだ。分からないが今日は帰って即寝よう……と帰って即寝た次の日から、奇妙な声が聞こえてくるようになった。
それは、私があの日のことを忘れようとした瞬間に。
「まさか、私のことを忘れようとしているのかい? 」とか、「あはは、そういえば地球の侵略日が決まったよ」とか。
地球の侵略日って何だ、とは思ったけれど、やっぱりまだ疲れが残ってるんだろうなと布団へダイブする日々が続いた。
しかし、ここ1週間その声がパッタリと聞こえなくなったのだ。
そりゃあ、聞こえなくなった最初の三日は声に悩まされる必要が無くなり健やかに、ふんふんと鼻を鳴らして歩くくらいには上機嫌だった。何なら存在すら忘れていた。
しかし四日、五日経つと私の心にも変化が起きた。
何だか、そう。明確な言葉にするのは癪なんだが、少し寂しいのだ。一人暮らしの女性の寂しさを唯一紛らわせていたのが、自称宇宙人で顏が美しいだけの、頭のおかしい男(しかも声だけ)ってのが本当に、嫌だ。私まで頭がおかしいと思われるんじゃないかっていう焦りと不安で苦しくなる。
しかも、見てくれだけで焦がれているような、そんな軽い女になってしまっているのも、何だか嫌なんだ。
もう一度だけ会ってあの耳の奥を擽るような笑い声を聞けば、私の心は落ち着くのだろうか。
◆
心細く、満たされない日々が続く。
少し不安になる。頭のおかしい人だと思われても構わない、そう思うくらいには心が疲れきっていた。
ぐらぐらと、地面が揺れる感覚がする。
ああ、遂に体も疲れ切ってしまったのだろうか。地面が揺れてるように感じてしまうほど、疲れてしまったのか。あの自称宇宙人と出会ってから何一つ上手くいかない。
「おや。人の……いや、宇宙人のせいにするとは罪な人だ」
ピクリ、耳が声の正体を探して動く。
何時も四方八方探していても見つからない声の正体が、今は目の前にふわふわと浮いていた。
「宇宙人……さん」
「そんな他人行儀ではなく、そうですね。気軽にダーリンと」
は、と声を出そうとして、二酸化炭素しか出ない私を他所に彼は細長い指を顎に当て考える素振りをする。前に会った時にはなかった角? 触覚? が頭から生えている。しかし、それでも美しいのだから、美しさは得だなと場違いなことを思った。
「私はあの日、君に恋をしたんだ。そして、君も私を恋焦がれるようになった」
そうだろう? と有無を言わさぬような声の圧に、反射的に頷いてしまう。私の答えなど聞いてもいないだろうが、事実焦がれてしまっていたのは事実なのだ。こんなにも、私をおかしくさせたのなら、しっかりと責任を取って貰いたい。
「私、貴方のこと好きになってたみたい。悔しいけれど、それが事実」
「それは嬉しいねぇ。君のためにこの地球を侵略することを決めたんだ。だから、ほら一緒に行こう」
そういえば、まだ地面が揺れている感覚がする。
そうか。私の体が疲れたのじゃなくて、地球が宇宙人によって侵略されているから、戦おうと揺れているのか。
そっと、細長い指を私に差し出す彼の後ろには大きな月と、それに対抗するかのような大きなUFOが地球に向かって飛んできていた。
目の前の美しい顏を持つ宇宙人が、その摩訶不思議な光景をどこかの国の物語かの様な光景に見せる。
吸い込まれるかのように、差し出された手に自分の手を重ねる。思ったよりも冷たい手のひらに驚く暇もなく、自分の体が浮き始めた。
「わ、私も浮けるんだ」
「私のハニーになったからね」
あはは、と懐かしく思える笑い声が、私の耳の奥を擽った。
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ハッピーエンドです。
ハッピーハロウィンです🎃
ハロウィンって人間界も、妖怪とか人外とか人間のまま本能を解放する奴とか有象無象の化け物たちが放たれる日なので、本物が混じっていても分からなそうだよな、と思う日々です。
もし、地球外生物が、地球に下見に来るなら今日ですよね。会いたいな〜
そこで、運命の人と出会うとか、なんかいいなと思います。しっかり侵略しちゃうのが、人間とは違うところだと思いますけど。
人外って、人間に対して物珍しいって感情だけで動くので食べたり殺しちゃったりとか、あると思うんですよ。その中で愛情が芽生えちゃったら、どうなるんだろうって。
人間からしたら人外は怖いから一生脅えて過ごすんですけど、人外は人外で愛情の伝え方が分からず、2人して拗れまくるのが好きですね。最後に人外が人間を殺めてしまって、闇堕ちとかしちゃうのも全然好きです。
一途で、手に入れたら絶対に何がなんでも離さなそうな、そんな執着質な人外たちが好きです……
すみません、人外好きが出てしまいました…。
ハロウィンは人外好きに取っては堪らない日でもあります。皆さん、決して人には迷惑をかけず怪我をさせず、自分も他人も楽しめる、そんな良きハロウィンを過ごしてください🎃
「また、来世で」と愛言葉を口にした。
これはきっと、私達だけの合言葉でもある。二度と会うことは出来ないと、それを理解した上で吐き出した言葉。
笹貫ほたる。黒髪ロングの姫カット。圧倒的な女子力。屈託のない笑顔。それが、彼女を表す代名詞。
どこかの、低くも高くもない、けれど夜の暗い気持ちの中で聞くと、心地よく聞こえる声で愛とか恋とか、タバコとか性行為とかの定番化したエモい歌のPVとかで出てそうで、それもまた彼女の魅力だと思った。
そんな彼女と私、川神ぱんだが仲良くなったきっかけなんて、ほんとに、単純で、だけど意味不明な事だった。
◆
「川神ぱんだって凄い名前だねぇ」
中学の入学式が終わった後。いきなり後ろから声をかけられた。
ヒラヒラと薄ピンクの桜と並んで、黒い髪の毛が空中を泳いでいる。そっと髪の毛を辿っていくと、白く小さな顔が目に入った。あ、
「笹貫ほたる」
入学式の時にかなり話題になった女の子。すらっとした手足に、綺麗な顔が乗っていて、それでいて成績優秀。神様が人一倍手間隙かけて造り上げた完璧な美少女、だと。
「あは、私の名前知ってるんだ? 」
「そりゃあ、貴女自分が思ってるよりも有名人だからね」
「ふぅん。ま、確かに」
にこにこ、屈託のない笑顔でずっと話しているその顔をじっと見つめる。疲れないのだろうか、ずっと笑顔でいるのは。それとも、やはり、神様が心込めて造り上げたら、そんな疲労は感じないのだろうか。気になる。
じっと見つめられていることに今更気付いたようで、少し居心地が悪そうな顔に変わる。
「えへ、そんなに見つめられると少し、困るなぁ」
頬を桜色に染めて、目を横に流す。その姿だけでも、十分にどこかの映画のワンシーンのように見えた。
きっと、私はただの通行人Bなのだから、勝手に映画なんて始めないで欲しい。
「ごめん。それで、なにか私に用?」
目の前の少女は、あぁ、忘れてた! とでも言いたげな表情をして、手をポンと打つ。
「私と仲良くならない? ほら、私は笹、貴女はぱんだ。それに、貴女は川、私はほたる。ね? 仲良くなるしかなさそうじゃない? 」
名案だ! と副音声が付いてきそうな表情に変わる。それと同時に私の表情も無に帰る。
くるくるころころと変わる表情は、私には対応していないのだから、もう少し落ち着かせて欲しい。と切実に思った。
これが、私達の出会いだ。
神様はきっと、必死に造り上げた事に満足して、笹貫ほたるの大事な頭のネジを二本くらい入れ忘れたんだと本気で思ってしまった。
◆
そんな、意味不明な出会いから始まった私たちの関係は、何やかんやと続いてしまって、もうすぐ25歳を迎えようとしている。
仲良くなるしかなさそう、だなんて飛んだ口説き文句だったのに、それに絆されてずっと一緒にいたのだから、私も大概ほたるに甘いのだろう。
その事実は、あまり受け入れたくは無いし、ほたる自身にも打ち明けたくは無いが、頭の良いほたるの事だ。気付いて、にこにこと笑って、またいつも通り隣に立つのだろう。
あぁ、腹が立つ。この心地良さが。
私達は、永遠にはいられない。永遠の好きも、心地良さも、存在しないのだ。
「好きだよ」
「私も」
そんな、種類も沢山ある好きの中から、より一層特別で重たい好きを選んだ私達に存在しうる未来はそう明るくは無い。
初めから、分かっていた訳では無い。
子供の見る世界と、大人になった今見る世界の広さは違う。そらでいて、世界が私達の持つ、特別で重たい好きに対してどれだけ厳しいのかも、今となっては手で、足で、耳で、目で、全てで取るように分かる。
だから、私は笹貫ほたるの為に。
笹貫ほたるは、私の為に、別れを決めた。
川に揺蕩うほたるは、いつか消える。
笹を食べて生きるぱんだも、いつかは滅びる。
そういう世の理なのだ、形あるものはいつか消える。それが、ただ今だっただけなのだ。なのに、何故こんなにも胸が締め付けられるのだろう。
出会う日が違ったら、もっと世界が先に進んでいたら、名前が違ったら、そう何度も願ったけれど、でも出会わなかった方が良いとは思わなかった。性別が違えばいいとも、一度だって思わなかった。私達は、私達だから、出会えたんだって思うから。
「あぁ、ぱんだ。泣かないで」
今も変わらない屈託のない笑顔を見せるほたる。
黒髪ロングの姫カットは、いつからか、年齢が……とかなんとか言って伸ばし始めた。
変わらない事は、勿論あったけれど、変わったことの方が多かったと思う。
例えば、白いドレスに身を包むほたるの、左手の薬指にきらきらと光る指輪とかね。
過去の私達は、もうすぐ消える。
笑って、お別れを迎えることが出来るのならば、これは良い失恋なのじゃないだろうか。
「幸せになるんだよ、ほたる」
「……うん。はは、もう、ぱんだの為の笹は無くなっちゃっうんだ」
眉尻を下げるその姿も、まさに神様が人一倍手間隙かけて造り上げた完璧そのものだ。しかし、もう美少女と言える年齢では無いから、そうだな。美女、だろうか。
そんな美女、ほたるの苗字から笹貫が消える。私達にあったギリギリの繋がりは、もう儚いものになってしまっていた。
私の苗字も、そろそろ変わる。そうすれば、完全に私達は断ち切られる。
「仕方がないよ。でも、ほらね。また来世に期待しよう」
こんなにも愛を込めて造り上げたのだから、ほたるの願いなんて神様は、たった一言で承諾してしまうだろう。
ただ、それだけの望みに賭ける。
そんな、たった二人の愛言葉だ。
────────
幸せなんて、当人達だけの間で共通認識として存在してたら、それでいいんじゃないかなと思います。
湊かなえさんの少女という小説の中の、おっさんに恋をしてました、こんばんは。
久しぶりに覗いて見ました。
あまりにも、文才力が何処かに旅立ったまま帰ってこないので、諦めが勝ちそうです。
そう、友達が浮気性で脅迫しまくりの彼女と別れたと言っていた数週間後によりを戻してました。失望しました。普通に。
幸せがどうのこうの言っていた私が、素早い手のひら返しをして申し訳ないですけど。
でも私と友達との幸せの共通認識は、一体どこなんだろうと、ちょっと考え直しましたね。
都合のいい時に、都合のいい話が出来る、だとしたら、まあ面白いですね。
別れた時に、もう恋愛はいいとか、もうきっぱり終わりにすると調子のいいことを言っていたのに。と、少しだけモヤってしましたけど、まあもう幸せなら良いや〜と思うことにしました。その分、不幸になっても思う存分笑ってやろうとも。
私も不幸になればなるほどどこかの誰かに笑われてるんでしょうか。その人が幸せならいいんですけど別に。
今思ったんですけど、友達に失望って何にしたんでしょう。特に期待なんてしてないんですけどね。
あぁ、友達が以前恋愛とかわかんないと言っていたからでしょうか。
分からない癖に、ズブズブに周りが見えなくなるほど依存してしまう。やはり、恋は盲目。そして、愛は1番の身勝手。
でも、恋する人を美しいと思うし、愛して愛されてを見ると羨ましいとも思う。
幸せなら、ほんと、それでいい。
愛程、身勝手で自由になれるものなんてありませんから。
好きな人を好きなままで、世間が私達や皆に追いつくまで、色んな感情に飲み込まれるかもしれませんが、それでも、好きでいてくれたらいいなと、思います。
今日は、何となく日記というか、自分語りとやらにしてみましょうか。いつもそうかもしれませんが。
最近、した事。
そう、そういえば、この間母と都道府県の問題を解いてたんです。なんて事ないただの47都道府県を埋めていくだけの、そんな簡単な問題。
私は、恥ずかしい事なんですけど、本当に7問とか、そんなちょっとしか解けなかったんです。母は、全問正解してました。行ったことのある都道府県はちゃんと覚えてるからね、お前と違って。と言われました。
私は形で覚えるタイプなんです。例えば、静岡県なら、金魚。北海道なら、人魚のお姫様。奈良なら、バンザイおばけ。そんなふうに、面白く覚えたいんです。というかそんな風にしか覚えられないんですよ。私の頭は。今は全ての都道府県の形に名前をつけて、しっかり覚えました。嘘です、まだ九州が微妙に覚えられてません。今日覚えます。
私の家族って、まぁ全員中卒なんです。私も含めて。
両親がいつも言うんです。「どれだけ頭が良くて、大学に行ってても、愛想が無ければ、元気がなければ、どこいっても一緒。」って、まぁ一理ありますけどね。多分。
けど、やっぱ学校は行ってても良かったんじゃないかって今では少し思ってます。後悔はしてないですよ。私は、努力ができない人間なので、学校に行っても何も変わらずに大人になってたと思うんです。変わらず誰かの足を引っ張って、のうのうと生きていく、そんな人生だったと思う。
成長するには、人と出会うしかないんですよ。
私は人に出会うことを避けているんです。学校に行っていれば、もっと同年代と触れ合うことができていたんだと思います。大人と触れ合いすぎた私は、子供を心に飼ってるんです。
だからきっと、成長しない。受け入れられない、何もかも。嫌なことから逃げ続け、誰かのせいにして、いやでも私のせいだって思ってますよってちゃんと謙虚で、自己批判能力が高くて、悲劇の役を演じ切れる、そんな愚かで無様な所もあります。
1番人間に近い感情を持っているのに、人間になり切れない、そんな感覚がずっと付き纏うんです。いつも1歩後ろで私を私が見ている、そんな気がしてならない。
寝れば忘れると言う割に、ふとした瞬間その感情がその時の何倍にもなって帰ってくる。「遊びに来たよ」なんて声が聞こえそうなくらい、気軽に。時間も場所も弁えず友達かのように。
でも、そんな状態も私は好きなんです。今寝れば、明日にはまた忘れているだろう。なら、この状態をずっと楽しんでたい。って、ちょっと好奇心がマゾヒストな所あるかも知れませんね。
私って涙脆いんです。いや、ちょっと違うな。喜怒哀楽が激しい?って言うんでしょうか。感情を表に出すことを覚えた子供のように、すぐ泣いて怒って笑って楽しむ。子供のままなんですよ、一向に成長出来ずにいる。どこかに大人の私を隠してきたんでしょうか。今からでも出てきていただきたい。
何でこんなに、つらつらと皆さんが、読みたくもないだろう私のことを書き連ねているかって、考えてみたんです。
私、ここが大好きになってるんだろうな、と。好きな人達には脳をかち割って、体を引き裂いて私の全てを見て欲しいと思うんです。実際はしませんよ?勿論、感情面でのみの話です。
ここは何も分からないけど、確かな存在と暖かさがある。
もしかしたら、今これを読んでる貴方はどこかの惑星の宇宙人だったり、もしかしたら獣人だったり、するんじゃないだろうか。そんなワクワク感がふよふよと漂っている。匿名は怖いばかりではなく、きっと体温だけを感じれる良い場所でもあるんですね。
あぁ、あと、何か書き残したいこと。
エンディングノートって知ってますか。私はあれを今度書こうと思ってます。死ぬ死なない、どちらにせよいつか残す人のために書いていた方が良いのだろうと。私に見送ってくれる人が居るのかなんて、分からないけど、ちゃんと在るべき形で死んでいたらいいなぁ。
人間なんていつ死ぬか分からないんです。祖父の死に際が昨日の事のように思い出せるから、私もきっと今この瞬間にも死が襲い掛かるんだろうかと。
死は唯一の平等。後悔のない死は誰にも訪れない。幸せに生きたってきっと、最後は後悔がちょっぴり生まれる。だからこそ、救済でもある。
人間が嫌いです。他者がいるから私が劣る。でも人間が好きです。他者がいるから、私が幸せになる。うざったいし、悔しいなぁと思います。もっと、大人だったなら割り切れて、屈託のない笑顔で生きれるのかな。
あぁ、もう何が書きたいのか、分からなくなりました。
頭が悪いんです。言いたいことが沢山出てくるから、纏められない。次々と話が変わる。
桜の似合う彼は、私のなりたい完璧な人でした。あの人のように、なれる日はくるのでしょうか。変わりになんて、なろうとは思ってない。ただ彼をこの世に引き止めていたい。
ああ、既に消したい。何もかも。恥ずかしくて今までの作品もあんまり見返せてないんです。書かなければ、良かったと酷なことを思ったこともあります。
生きていれば、良いことはあるんです。でも辛いことの方が多く感じる。それは、きっと不幸の定義が世の中の大体で決まっているからだと思います。
幸せは人それぞれなら、不幸も人それぞれでいいんじゃないでしょうか。私はそれがいいと思います。こんな、恥ずかしい惨めな人生でも、私は結構楽しいと感じるんです。感情が、安定しなくて1歩後ろの私が、たまに前に出てきて、「それは無いんじゃない、笑」って嘲笑って恥ずかしくなる時があるんです。それでも、私は楽しいと感じてるから、幸せって事にしませんか。
もう、今日はやめにします
束の間の休息、でしたっけ。今日のテーマは。
それをテーマに、ただ何も考えず思ったことを書いていたら、書いていくうちに書きたかったことが消えていきました。記憶力が悪いのか、脳内お花畑なのか、分かりませんね。
(凄くダラダラと長く、ながーーーく続きます。ついでに言うと、人によるとあまり受け付けられないと思います。よろしくお願いします。)
過去の自分は、一体未来の自分に対して、何を思っていたのだろう。今の自分は、未来の自分に対して何を思うのだろうか。パッと思いつくような具体的な何かは無かったけれど、ただ1つ、確かな事がある。
きっと、何年何十年と経っても私は大丈夫。確かな証拠は何も無いけど、確かな信頼はそこにあった。
春。出会いと別れの季節。
私は高校を卒業したばかりで、もう既に生きることに苦しんでいた。ただのバイトだけど、正直もう嫌って言うほど沢山社会の嫌な事や嫌な人を見てきた。汚い所も見てきたし、このまま這いつくばって生きていくほど良い世の中じゃないって思う。まだそう思うには早いって言われるかもしれないけど、私はそう思ったのだから、そっとしておいて欲しい。
人の笑う基準も、怒る基準も違うのだから、生きることについての基準も違うのなんて当たり前でしょう?
友達もいなくなった私に対してとやかく言う人は、バイト先のおばちゃんくらいになったから、どうでもいいけど。
友達がいなくなった理由は、バイトの方を優先していたから。それは私が悪いだなんて言われるかもしれないけど、私の言い分も聞いて欲しい。
私の家は、母と父。そして私の3人家族。
けど、去年の初めくらいに母と父が離婚した。原因は父の浮気だった。家での父はいつも通りで、いつから浮気してたのか分からない。気付いたきっかけは、私が父と連れ添って歩く若い女性を見かけたから、だったと思う。
「そういえば、今日お父さんが若い人と歩いてた〜。いや、そっくりさんかも知れないけどね、」なんて本当に何気なく零したら、母が目を見開いて、それからキツく唇を噛んだから、言わなければよかったってその時にちょっと思った。
そこから、母と父が離婚するまでは早くて、目まぐるしく変わる生活に少し苦しさを感じてたのを覚えてる。
母はきっちりしてる人で、浮気の証拠をしっかり揃えてて、そのおかげで慰謝料を貰えると笑っていたけど、その笑顔がどこか貼り付けたような顔だったから、その時に間違ったんだ、と気付いた。
そこからは、母と私の二人暮し。
最初は働きに出てた母だけど、ずっと専業主婦だったからか会社の人に馬鹿にされる事が多かったらしい。
「夫に浮気された可哀想な女」とか「相手より魅力がなかったんだろう」とか。帰ってくる度に、お酒を一気に飲んでそのまま息を吐き出す勢いで「可哀想だとか、相手より魅力がないとか、勝手に言うな!」って叫ぶから、私は耳を塞ぐしか無かった。
母が母では無くなった。
きっと、沢山のことを一気に進めすぎたから、壊れたんだと思う。いや…私が、壊したんだ。
部屋にこもり、働けず、家事も出来なくなった母の代わりに、元々していたバイトの時間をギリギリまで増やした。家事も役割分担を無くし全て私がするようにした。辛かったけれど、それが私に出来る唯一の母への償いだと気付いたのだ。
あのね、父と連れ添う女の人と、浮気の証拠に写ってた女の人ね、違う人だったんだ。もしかしたら、あの時見かけたのは本当に誰か別のそっくりさんだったかもしれないんだ。
浮気は本当にしてたかもしれないけど、それでも、私はきっと暖かかった家庭を壊したんだ。母の幸せを壊したんだと思う。
私があの時、黙ってれば良かったのかもしれない。ごめんなさい。
今更謝っても、きっと母を余計に傷付ける事を分かっていたから、殆ど機能を失い、私と母を隔つだけの役割になった扉を、ただただ見つめるしか無かった。
私の友達の居なくなった?んー、いや、バイトに明け暮れる日々になった経緯はこんな感じかな。あれ、結局私が悪いのかな?って笑う私に、ただ一言、目の前の彼女は「長い。」と遠い目をして零した。
黒髪ショートで、細長く凛とした力強い目をしていて、まつ毛は長く、きゅっと結ばれた口は、血の様に赤く潤んでいた。
鼻は横から見ると、どこかの国の美術館にある人型の彫刻作品が持つ鼻の様だった。要は高いってことね。私の例えが良すぎるわ!天才かも!いいや、そんなことはどうでも良くて、兎に角目の前の彼女はとても美しい顔をしていた。
私と彼女の出会いは、なんて事ない。私のバイト先に新しく入ってきたのだ。スラリと細長い手足を、だるそうにぶらりと垂れ流して、眠たそうな目で店長と入ってきた時は、本当に驚いた。
言い方は悪いけれど、彼女のような人なら、こんなパートのおばちゃんに煩く言われるような職場じゃなくともやって行けそうな感じがしたから。
モデルでも食っていける、その位のレベルだった。
「それで、私が死にたい理由もここで沢山働いてる理由は分かったでしょ?約束通り、あんたも教えてね!」
「あんたって、私の方が歳上なんだけどな。別に一緒だよ。私もね、生活が苦しくて。」
目を細めて言う彼女はやっぱり、どこか遠い目をしていた。
諦めと、絶望と、それから少しの期待も詰め込んだような、真っ黒な瞳を隠すように彼女は笑う。目を見られないように、精一杯目を細めて。
「歳上感、無い!」
「無いって言うな!」
怒ったように言う彼女にごめんごめんって笑いながら、すっと階段に座る彼女の隣に腰掛ける。
「そっちも家庭の事情でなの?」
ジッと、タバコに火をつける姿を見ながら呟いた。何となく、聞いては行けなかったような、そんな気がした。
彼女は私をチラッと見て、
「…祖父が人を殺したんだ。随分前だけどね。ちゃんと捕まってムショに入って、出てきて今はもう死んだ。」
そう言って、タバコを吸って煙を吐き出した。ふわふわと上へ昇る煙が彼女の瞳を見えにくくする。
「瀬文(せぶみ)はさ、人を殺した奴の家族がどんな目にあうか知ってる?」
風が、煙を蹴散らしても尚、彼女の瞳が見えにくい気がした。彼女は返事を待ってなかったのか、そのまま話し続ける。
「人殺しの家族って言われて、永遠に指を刺され続けるんだ。少しでも何かをすると、「やっぱり人殺しの血が」って。殺した本人が死んだ今も、監視対象が残された側の私達になる。」
私がひといき息をつけるのなんて、死んだ後だけかもな。そう言ってまたタバコに口をつけた。
「死にたく、ならないの。」
その姿が見てられなくなって、自分の靴を見た。買い替えるお金も時間もないから、汚れて穴が空いている。雨の日なんかは、靴下が結構濡れてしまう。
「私はさ、生きたいんだ。」
どこか、生きることを諦めたような声色だった。
地面に落ちたタバコの吸殻が燻る。人を殺した人の孫という、彼女と重なった。上がることさえ許されない。誰かの娯楽や安心の為だけに監視される日々。彼女は、何を思って生きているのだろうか。
「死ぬ予定でもあるの、」
「いいや、無いよ。無いけどね、上手く行けば死んじゃうかも。」
精一杯目を細めて、笑った。随分と減ったタバコを、携帯灰皿に押し込めて、また1本新しく出し火をつけた。
「それでもいいと思ってるの?」
「…良いと思っちゃった。上手くいってほしいって、それで生きれるなら。」
と、よく分からないことを言う。
ふわふわと、また彼女を隠した煙は、今度は風に蹴散らされず少しの間そこに漂っていた。
高校を卒業して以来、時間が有り余ってしまったからその時間を全てバイトに当てた。そのお陰で、高校の時よりかは少し生活が楽になった。もっと早くこうしていたら良かったと、心の底から思ったと彼女に言えば。
「瀬文、学歴が全てとは言わないけど、高校は卒業しといて正解だったと思う。」
と言われた。そういえば、彼女は何歳なんだろうか。聞いてみても、「瀬文よりもうんと歳上」だとしか言われなかった。
私たちの定番になった、バイト先にある裏側の階段での密会。
冬は寒く、夏は暑い。虫も多く、薄暗い。そのせいで、誰もいないのだ。だから、ここは私と彼女だけの秘密の場所。幸せだった家庭を自ら壊してしまった私と、家庭を壊されてた側の彼女。その全てを放って、ただの私の彼女になる。
また今日も、彼女はタバコに火をつける。まるで、寿命をわざと縮めるみたいに。
無言で、ただ、暗くなる空を見つめている。
隣でタバコが怪しく燃えたのが、目の端でうつった。
「瀬文、私が他人の未来を除き見れるって言ったらどうする。」
え?って聞き返した。あまりにも非現実的だったから、聞き間違えたか、それとも冗談だと思ったから。
でも、彼女の顔を見たら冗談じゃないんだと、理解してしまった。そもそも、彼女は嘘をつかないのだ。
「私は、他人の未来を除き見れる。」
タバコを一吸い。最近気付いたんだけど、彼女はあまりタバコを美味しそうに吸わない。ただ、事務的に、火をつけて口をつけて吸って吐く。その繰り返しのように見えた。何のためにタバコを吸ってるのか分からなかった。
「そう、なんだ。じゃあ、私の未来も見える?」
「うん。」
「へへ、そっかぁ。どんな未来だった?」
笑ってそう言うと、困ったように眉を下げた。瞳には、やはり諦めと、絶望と、少しの期待が詰め込まられていて、その全てが私に向けられてる気がした。
「瀬文が。幸せに、なる未来、」
嘘だと思った。嘘をつかない彼女が、私に嘘をついた。その理由は何となく分かってしまったから、くすくすと愛おしさが全身を駆け巡って笑い声になった。
「嘘つき。あーあ、私死んじゃうんだ。」
「嘘じゃない。嘘じゃないよ!私、ちゃんと見たんだから!」
急に叫ぶから吃驚して体が飛び跳ねた。隣の彼女も吃驚したような顔をしていたから、多分無意識に出たんだろう。いつもの彼女からは想像もできない、少し子供っぽい言葉だった。
あまりの必死さに、私もそれから彼女も黙って、その日は過ぎ去っていった。
ある日、彼女が必死にこの日のシフトを変わって欲しいと、言ってきた。嫌だった。何故か、本能的に、直感的に断らなければ、二度と彼女に会えないと思ってしまったのだ。
それでも、必死に頼んできた。「嫌だ、絶対に変わってくれ、」そう何度も痩せ細った青白い顔で、言う彼女は美しさこそは無くなっていなかったけど、目を離すと消えてしまいそうなそんな危うさが漂っている。
私と彼女の戦いは、最終的には一緒にシフトに入るという事で、その場は終戦を迎えた。店長は、「おかしな子達だな〜」と禿げかけた頭を撫でていたけど、数秒後には発注ミスを発見したようで焦っているのを、2人して困ったように笑って見ていた。
「瀬文。瀬文は今日ね、死ぬ未来なんだ。」
そんなことを、彼女は異例のシフトゴリ押し当日に言った。
私は笑って「ほら、嘘つき。あの時私は幸せになるって言ったのに。」と呟く。別に、悲しくは無かったし、変わらず機能を無くしたままだった扉は、前と変わらず、ただたまに暴れるような音が増えただけの生活から、逃げられるならまあ良いかと、心のどこかで感じているのだ。
幸せを壊した私が、逃げたいと感じるのは悪だろうか。許されないだろうか。それでも、死んでしまえば終わりなのだから、どうでもいいとすら感じる。
「違う。今日、私は未来を変えるから。だから、そうしたら、瀬文は幸せになれる。」
前よりも力の失くした声で話す。タバコの吸いすぎで、掠れて若さを失ったような、それとも別の何かでかは分からないけど、随分と変わったなと思う。声だけじゃなく、姿も。
元々細かった体は、もっと細くなっていた。骨と皮だけ、と言っても良いほどに。凛とした瞳の奥に、沢山の感情が私に向いているところだけは、変わっていないようだったけれど。
そんな、彼女が何となく好きだなと思う。友達と言っていいのか分からないこの関係を、ずっと続けたい。けれど、彼女が言うことが本当ならそれは今日で終わりなのだろう。
「強盗だ!手を上げろ!」
店内が悲鳴と恐怖で埋め尽くされる中、隣の彼女はただ真っ直ぐと強盗の顔を見ていた。未来を見ているのだろうか。それとも、私の死を知ってるくらいならば、この未来も見ていたのだろうか。あまりにも不自然すぎるほどに落ち着いている。
彼女は、私の方を見向きもせずに、コソッと囁いた。
「このまんま、何もせず、あいつの言う通りにすれば、最後までは何ともないよ。」
私は彼女を信頼している。彼女は私に確実な嘘をついたことは無い。顔だけで頷いてから、近付いてくる強盗を見つめていた。
「そこの女!このバッグに金を詰めろ」
銃を向けられる。鈍く光る物体は初めて見たけど、怖くはなかった。ここで死んだって、私は彼女の隣にいるだけで何だか幸せだったから、あながち彼女の言うことは間違っていないと思う。乱暴に手渡された糸が所々出た安そうなバッグに、レジから出したお金を全て詰めてやった。
この強盗も、きっと誰かの幸せを壊すんじゃないか。捕まっても刑務所に入って、そして出てきて誰かと出会い幸せになって子供を産むんじゃないか。子供は、監視の目に晒されないだろうか。そんなことを思うと、隣の彼女の姿が、どこか重なって悔しくなった。
けれど、きっとそんなことをすれば、誰かに危害が及ぶ。それは私の本意では無い。
お金を詰め切ったバッグを、しっかりきっかりと閉めてから、渡してやる。恨みと呪いをありったけ詰めて、この呪いがいつかお前の全てを蝕むように、そう願って。
その呪いに気付いたかのように、いや、私の鋭い視線に気付いたのか、沸点の低かったらしい強盗は私に向かって銃を振り下ろした。
ゴンッ、鈍い痛みが頭から全身に拡がった。
熱い何かが頭から流れてくる。赤い、彼女の唇のような色をした血だった。こうやって死ぬのだろうか。
隣の彼女が動いた気がした。血が目に入って上手く開けられない。
「卑怯者!弱い奴にしか!手をあげられない卑怯者!弱虫!」
激しい怒り声が聞こえる。彼女の声だ。
少し掠れた、けれど、今度は力強い声だった。
私に向いていたらしい銃口が、ゆっくりと彼女に向けられたのが、赤くなった視界から見える。
鈍く光る物体が、光を反射しながら彼女の方を向く。まるで映画を見てるようだった。痛みで上手く体が動かない私を、嘲笑うかのように強盗は引き金を容赦なく引く。
風船が割れたような音がした。
いや、きっともっと重たい音だったけど、例えられる物が見つからなかった。
ふっと隣にどさり、と何かが座り込んだのが分かった。
悲鳴と恐怖が、犇めき合う。
そんな騒ぎがどこか遠い場所で行われているような、そんな気がした。私と彼女、それだけしかその場に存在していないと思う。
隣にいる彼女に抱きついて、話しかける。
「馬鹿、馬鹿。私はそんな事してもしあわせにならないよお、」
血ではない、何かが次々と頬を伝い顎を伝い、彼女の頬っぺを濡らしていく。胸の当たりが真っ赤に染まっていて、それを抑えた私の手も真っ赤に染まった。
「あのね、瀬文。聞いて。他人を殺した奴でさえ、のうのうと生きてたんだ、当たり前に家族と、笑い合う日を過ごした日もあった。しょうもない大人ばっかりだ、けど、それでいい。そんな大人もいるんだから、瀬文も生きろ、」
腕の中で、力をなくしたように横たわりながらも、必死に私に話しかけてくる。声は、やはり掠れていた。
返事も出来ずにただ、彼女の頬っぺを濡らし続けている私に向かって彼女は、困ったように笑った。
初めて見た、期待だけが詰め込まれた瞳だ。これは、彼女の言う、未来を変える方法なんだろう。そして、ずっと瞳に詰め込んでいた、唯一見た希望だったんだろう。
「泣くなよぉ、私、ほんとは病気で死ぬ未来だったんだよ、瀬文はさ、私の未来を変えてくれたの。ほんとは、私の横で死ぬ瀬文を思い出しながら、病室で息を引き取るんだよ。
未来はさぁ、ちゃんと変えられたよ。ありがとう。だからね、せぶみ、生きて、ちゃんと未来の自分の過去を変えてあげて、ね?
私も、いきるから、きっと。」
そう言った彼女は、眠るように目を閉じた。
その光景を最後に私も意識を失った。
次に目を開いた時は、病院だった。
強盗は、どうやらその後すぐに逃げて捕まったらしい。今は刑務所の中だそうだ。
教えてくれたのは、母だった。少し痩せたようにも見える、だけど前と変わらぬ母がそこにいた。
「今まで、ごめんね。」小さな声だったけど、ちゃんと私の耳にまで届いたその声は、少しだけ彼女のようだった。
後から、警察やバイト先の店長から聞かされた話だけど、彼女は、まだ高校2年生だったらしい。
履歴書だけで通したからと、警察にこっぴどく怒られていた店長を、ぼんやりと見ていた。
なんだ、私よりも年下じゃん。そりゃあ、年上になんて見えないよ…。てか、私よりもうんと年上なんて嘘じゃんか!しかも!未成年喫煙!!ダメなことばっか!なんて、ちょっと怒りも生まれた。
けど、そんなことよりも、彼女がなんで私を助けたのか。助けたいと思ったのか、聞きたくなった。
彼女は今どこに居るんだろうか。警察に聞いても、「ごめんね、秘密にしなきゃいけないんだ」と、はぐらかされてしまったけれど、その言い方が、彼女が言ったみたいで、何となく生きてるんじゃないだろうか、と。
どちらにせよ、もう二度と会えない気がした。きっと、会わない方が良いとも感じた。
「あの時さぁ、私たちには世界は狭すぎたよね。きっと、もっと他に生き方があったのに、私たちだけで生きようとしてた。」
風の当たる屋上が、今の仕事先での秘密基地だった。
あれから5年、今でも私は母と二人暮し。
私と母を隔てていた扉は、最近はほぼずっと開いている。家事も2等分。生活はうんと、楽になった。
私は今生きている。血を吐きたくなるような苦しさはたまにあれど、それでも生きている。きっと、何年何十年経っても、私は大丈夫なのだ。
だって、彼女は私に嘘はつかないのだから。
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長くてすみません。紙に、あらすじとか書いてまとめたら、こうなりました。反省はしておりません。こういう時もありますよね!
そうそう、お家で買っている猫の、母猫が亡くなったと父から聞きました。私のお家の猫は、拾い猫で、そのお母ちゃんは、父の仕事先にいる野良猫。
いつも寝ている格好で、眠るように亡くなったみたいです。
それをお家の猫に伝えたら、どこか悲しそうに見えました。言葉が分かるようです。
黒い毛並みで「クロ」と呼ばれていたそうです。皆から愛されていたことを感じてくれていたらいいなと、思いました。
因みに初めて人物に名前をつけました。瀬文(せぶみ)、ドラマのスペックに出てくる人から取りました。
あと、今日、横断歩道がない所を渡ってる人を見て、よくそんな簡単に知らない人を信用できるな、と思いました。もし止まってる車に、殺人願望のある人が乗っていたら、たちまち引かれてしまうだろうに、と。
そう言ったら母に、ひねくれ過ぎやねんって言われました。