#七夕
今年も天気は曇り。
毎年毎年、七夕の日は曇ってばかり。
天の川なんてもう何年、いや何十年と見ていないかもしれない。
まあ、今日の主役2人は1年に1度しか会えないのだから、今日くらいは我慢しようか。
今日という日もあと僅か。
最後まで楽しめよ、織姫と彦星。
#友達の思い出
小さい頃に離れ離れになった友達がいた。
彼女のお父さんの転勤だった気がする。
彼女が居なくなる時にお家にお呼ばれして、お別れ会をした。
何人かのその子と仲良くしてた子達と私。
小規模のお別れ会。
寂しくて最後は泣いてしまった記憶。
お別れ会が終わり、他の子達が全員帰ったあと、私も帰ろうとした時彼女のお母さんに呼び止められた。
「〇〇、アレ渡さなくていいの?」
なんのこっちゃと思っていたら、涙で顔をぐしゃぐしゃにした彼女が何かの包みを持ってきた。
「さきちゃん、なかよくしてくれて、ありがと!だいすき!わたしのこと、わすれないでね。」
そう言って渡された包の中には可愛らしい絵が描かれた陶器製のコップが入っていた。
「もちろん!〇〇ちゃんもわたしのことわすれないでね?」
私と彼女はまた泣いて、そして最後に笑いあった。
またいつか、会える日まで。
そう約束した。
その後、20年程経ったが、彼女と再会出来てはいない。それに、彼女にもらったコップは兄に割られた。
悲しくて沢山泣いた。友達に貰ったものだったのに、と。泣いて、泣いて、泣いて。
未だにその事は許していない。
それでもまだ、私は信じている。
いつかまた、彼女と再会出来る日が来るということを。
#星空
下を向いて適当に歩いていたのに、目の端には星空が映る。
何故だろう、と横を向くと自分が歩いていたのは、川に架かる橋の上で、水面に星空が反射していた。
キラキラと輝く星空は風によって揺蕩っていて、ここに飛び込めたらどれだけ楽しいだろうか。
そう思った瞬間、私は橋の上から身を乗り出して、下の星空に飛び込んでいた。
ドボン
ゴポゴポ、ゴポゴポ
川の水はいきなり牙を剥き、私を水底へと引き摺り込む。
抵抗もできず、私はただ引き摺り込まれる。
目を開くと、遙か上空の星空がキラキラと輝いて、私は手を伸ばす。
それすらも意味は無く、私はそのまま意識を手放した。
#神様だけが知っている
なぜ、産まれたのか
なぜ、生きるのか
なぜ、食べるのか
なぜ、寝るのか
なぜ、心があるのか
なぜ、思考するのか
なぜ、死ぬのか
なぜ、私は私なのか
この世界には分からないことが多すぎて、毎日毎日疑問が浮かぶ。
でもそれに答えてくれる人は居ないからひとりで黙々と考える。
きっとこの疑問の答えは神様だけが知っている。
#この道の先に
ある時、見渡す限りの草原の中に立っていた。
いきなりの事なのに疑問すら抱かず、ただこの道の先には何があるのだろう。
きっと何か良い物がある筈だ、と確信めいたものが頭の中の考えを占めた。
そんな考えの元、歩き始めたはいいものの、どこまで行っても草原、草原、草原で民家どころか、山や空すら見えない。
ただ一面が草原で、それ以外は何も無い。
こんなのはおかしい。それに何時間も歩いている筈なのに、疲れも無く、喉の渇きすら感じない。
私はだんだんと怖くなってきた。
何故、いきなり草原の中に立っていたのか。
何故、草原しかないのか。
何故、山や空すらも見当たらないのか。
まず、ここは何処なんだ?
そう思った瞬間、男の体から力が抜けた。
生気が無くなり、血の気が引き、体の至る所から水分が抜け、呼吸はどんどん浅くなり、脈は弱まり、ついには心臓が止まった。
それでもまだ体の変化は終わらない。
目は落ちくぼみ、肋が浮き、骨と皮だけの状態になり、最後には骨すらも塵となり、風に吹かれてどこかへ飛ばされた。
男がどこから来たのか。
何故ここに呼ばれたのか。
それを知るものはどこにも居ない。