#刹那
パシャリ
シャッターをきり、刹那の君の表情をフィルムに収める。
小さなレンズ越しに見た君の笑顔、泣き顔、キョトン顔。どれもこれもが愛おしい僕の宝物。それだけでも幸せだったのに、これからはもっとその幸せを感じられるんだと思うと僕は明日にでも死んでしまうんじゃあないかと不安になる。それでも、君と君と僕の愛の結晶のこれからを撮り続けられるなら何があっても、今、死ぬことは出来ないけれど。
#幸せに
好きで好きで堪らなくて、ちまちまと時には大胆に愛を伝えたのに、僕の愛に気付かなかった彼は今日結婚する。
彼が隣に立って共に歩むことを決めたのは僕の双子の妹で。
初めて聞いた時には悔しくて悲しくて、どうして僕ではいけなかったの?なんで僕の愛に気付いてくれなかったのと、ひと月ほど毎晩のように枕を涙で濡らした。
それでも、愛憎は紙一重。いくら憎く思っても20数年共に過ごした妹と、僕に愛を教えた男のことを恨みきることは出来なくて、最後はただ幸せになって欲しいと心が叫んだ。
だから今日、僕は彼らの披露宴でいつものように笑って見せた。自分の心が軋むのすら無視をして。
#特別な存在
僕にとっての特別は、ひとつだけ。
幼い頃からずっと一緒のぬいぐるみ。
柴犬のぬいぐるみ。可愛くて暖かい。大好きなお友達。でも、ずっと一緒だから少しだけ端がほつれたり、汚れたりしちゃった。それでも、ずっと僕の大切な存在には変わりない。
#愛と平和
愛なんか知らない。両親はいつも俺を見る度憎々しそうに睨んでいた。
平和なんか無い。誰も彼も俺を見ると罵詈雑言を浴びせ、時には暴力をふるった。
愛を、平和を謳うくせに皆みんな俺の助けを乞う声を無視して聞こうとすらしなかった。
俺にとって愛も平和も別の世界のこと。
そんな人を選んで与えられる愛と平和なんかクソ喰らえだ!
#欲望
あれがしたいこれがしたい。あれが欲しいこれが欲しい。けどこんなのは嫌。
ひとつ欲しいものを手に入れると、次から次へと新しく欲しいものが出来て、欲しくて手に入れたはずのものには目もくれない。
私が本当に欲しかったものは、何なのだろう...