神埜

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#この道の先に

ある時、見渡す限りの草原の中に立っていた。

いきなりの事なのに疑問すら抱かず、ただこの道の先には何があるのだろう。

きっと何か良い物がある筈だ、と確信めいたものが頭の中の考えを占めた。
そんな考えの元、歩き始めたはいいものの、どこまで行っても草原、草原、草原で民家どころか、山や空すら見えない。

ただ一面が草原で、それ以外は何も無い。

こんなのはおかしい。それに何時間も歩いている筈なのに、疲れも無く、喉の渇きすら感じない。

私はだんだんと怖くなってきた。

何故、いきなり草原の中に立っていたのか。
何故、草原しかないのか。
何故、山や空すらも見当たらないのか。

まず、ここは何処なんだ?

そう思った瞬間、男の体から力が抜けた。
生気が無くなり、血の気が引き、体の至る所から水分が抜け、呼吸はどんどん浅くなり、脈は弱まり、ついには心臓が止まった。

それでもまだ体の変化は終わらない。
目は落ちくぼみ、肋が浮き、骨と皮だけの状態になり、最後には骨すらも塵となり、風に吹かれてどこかへ飛ばされた。

男がどこから来たのか。
何故ここに呼ばれたのか。

それを知るものはどこにも居ない。

7/3/2023, 10:36:23 AM