川柳えむ

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12/16/2025, 8:02:29 AM

 君が笑う。あまりにも眩しい笑顔で。
 それは、僕を照らしてくれる。
 毎日生きるのが苦しい僕をその先へと誘う。明日への光だ。


『明日への光』

12/14/2025, 10:38:33 PM

 ベルが鳴り響く。

 受話器の向こうの声が、私には理解できなくて。
 世界は深い闇に覆われて、そのまま夜が明けなくなった。

 思い出を綺麗に仕舞いたかった。
 でも、そんな簡単にはいかなくて。
 今は何もかもがぐちゃぐちゃに散らばっている。

 長い長い夜が続く。

 静かな煙が空へ立ち昇る。その煙は空に融け、星になった。

 深い闇の中で、あなたの星が輝いた。
 思うより、あまりにも綺麗に輝き出したから、このまま夜が明けなくてもいいや。と、そう想った。


『星になる』

12/14/2025, 6:34:04 AM

 随分と日が沈むのも早くなったものだ。
 よく、この高台から日が沈むのを眺めていた。
 街の全体が見渡せる高台。僕はここが大好きだった。
 ここは落ち着く。見渡せるすべてが自分の手の中にあるようで。
 世界の全てが今ここにあるようだ。

 そろそろ完全に日が沈む。
 暗くなってきていることに気付いていないのか、未だに公園で遊んでいる子供達がいる。
 遠くから鐘の音が響く。
 子供達も慌てて帰り支度を始めた。
 こうして、人々が少しずつ姿を消していく。
 それは、この世界から消えてしまったわけではない。自分のいるべき場所へと戻っていっただけだ。

 僕もそろそろかえらなければいけない。
 僕のいるべき場所は、視界に広がる世界のその先だ。
 空に融けた闇色に、身を委ねて飛び込んでいく。


『遠い鐘の音』

12/12/2025, 10:58:14 PM

 世界各地で環境破壊が行なわれていた。極めつけに戦争まで起きた結果、地球は人間が住める場所ではなくなってしまった。
 それでも、各地にあるシェルターに逃げ込んだ人は今もその中で暮らしていた。外に出ることはできないけれど、それなりに快適だった。

「これは何?」
 女の子が近所のお兄さんに尋ねた。
 手の上にはガラスでできた容器がある。容器の中には今では見ない形をした家があり、白い粉が降り積もっている。容器を揺らせば、その粉が中でキラキラと舞った。
「あぁ、スノードームだよ」
「スノードーム?」
 女の子がきょとんとした顔をする。
 お兄さんは優しく答えた。
「この白い粉はスノー――雪と言って、空気中の水分が凍って結晶になったものなんだ。このスノードームの中身は違うけどね。昔、地上では、寒いとこの白い粉が降ったりしたんだって」
「へぇー!」女の子は目を輝かせて言った。「雪、見てみたい!」
「えぇー……?」
 お兄さんが困った顔をする。
 このシェルターはドーム型をしていて、天井の一角がガラスで出来ている為、外の様子を見ることはできた。
 しかし、雪なんて見たことがない。
 見えるのはくすんだ色をした空と、荒廃しきった地表だけだ。
「俺も見てみたいけど……いつか見られたらいいな」
 女の子の頭にぽんと手を置き、優しく撫でた。

 ……やけに冷える。
 くしゃみをしてお兄さんは目を覚ました。
 時刻は深夜。しかし完全に頭が覚醒してしまい、散歩がてら外が見える場所まで歩いていくことにした。
 そこに辿り着くと、お兄さんは目を丸くした。
 外に、どうやら雪が降っている。暗く広がるガラスの向こうに、白いものが激しく舞っている。
 それはこのドームを飲み込む勢いで、あのスノードームの雰囲気とはだいぶ様子が違う。
 初めて見る光景に、ただただ立ち尽くした。


『スノー』

12/11/2025, 11:41:45 PM

 ここはたくさんの動物が暮らしている森。いろんな動物が、いろんなことをしています。その中に、魔法が使える猫がいました。
 ある日、なかなか朝がやって来ませんでした。夜が明けないので、動物達はそのままずっと眠り込んでいます。
 唯一活動していた魔法使いの猫が、夜の女王である月に、なぜ朝が来ないのか尋ねると、月はこう答えました。
「知らないわ。太陽が寝坊でもしてるんじゃないかしら?」
 猫は箒に跨ると空に飛び上がり、東へと全速力で向かいました。
 夜空を越えて、少しずつ空が白んできます。
 そうしてその先に、朝と昼の王である太陽が眠り込んでいるのを見つけました。
 起こすと、まだまだ眠い太陽は一瞬ムッとした顔をしましたが、時計を見て飛び上がりました。
「まずい。遅刻だ! 起こしてくれてありがとう!」
 そうして、ようやく森に朝がやって来たのでした。
 動物達が時計を見て、「おかしいなぁ。なんでこんなに時間が経っているんだろう?」と不思議がる中、猫だけがその真実を知っていました。


『夜空を越えて』

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