川柳えむ

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 ここはたくさんの動物が暮らしている森。いろんな動物が、いろんなことをしています。その中に、魔法が使える猫がいました。
 ある日、なかなか朝がやって来ませんでした。夜が明けないので、動物達はそのままずっと眠り込んでいます。
 唯一活動していた魔法使いの猫が、夜の女王である月に、なぜ朝が来ないのか尋ねると、月はこう答えました。
「知らないわ。太陽が寝坊でもしてるんじゃないかしら?」
 猫は箒に跨ると空に飛び上がり、東へと全速力で向かいました。
 夜空を越えて、少しずつ空が白んできます。
 そうしてその先に、朝と昼の王である太陽が眠り込んでいるのを見つけました。
 起こすと、まだまだ眠い太陽は一瞬ムッとした顔をしましたが、時計を見て飛び上がりました。
「まずい。遅刻だ! 起こしてくれてありがとう!」
 そうして、ようやく森に朝がやって来たのでした。
 動物達が時計を見て、「おかしいなぁ。なんでこんなに時間が経っているんだろう?」と不思議がる中、猫だけがその真実を知っていました。


『夜空を越えて』

12/11/2025, 11:41:45 PM