目の前で羽根が揺れる。
フリフリと。お尻の上で。
「ミーちゃん、お尻に羽根ついてるよ」
そう言って、ミーちゃん――飼い猫のお尻から羽根を取り除く。立派な白い羽根だった。
「もー。どこで付けてきたの、こんな羽根。天使かと思っちゃったよ」
でも天使なのは間違いない。だってこんなにかわいい。天使過ぎる。この世のかわいいを全て詰め込んだようなかわいさだ。
ミーちゃんは体をペロペロと、どこか得意げに毛づくろいした。
飼い主は知らない。
その羽根が、その辺を飛んでいる鳥を狩って付いたものだということを。
他の生物から見たその姿は、まるで悪魔のようだった。
『揺れる羽根』
昔、天界に優秀な二人の天使がいました。
二人の天使がいれば、世界は安泰だと思われていました。
しかし、二人の天使のうち、一人は、もう一人の天使に嫉妬していました。自分と並ぶ、いや、自分よりも優秀な天使がいるなんて。
天使はある日、天界の禁止区域に立ち入りました。
禁止区域の奥には、箱が眠っていると言われていました。
その箱は、ずっと昔に、ある人間が自分を犠牲に、悪魔を閉じ込めものだということでした。箱の奥底では、犠牲になった人間の魂と悪魔が、今でも戦い続けているという話です。
その話を知っているにも拘らず、天使はその箱を開けてしまいました。
その責任を、もう一人の天使に擦り付ける為に。
そうして、再び悪魔が解き放たれ、世界には憎悪や悲嘆、苦痛などといったものが溢れてしまいました。
もう一人の天使は管理責任ばかりか、開けた犯人とまで疑われ、天界から魔界に堕とされてしまいました。
彼は、天界の光を拒絶するかのように、闇を纏いました。
それから、優秀だったその天使は魔界を納め、魔王として君臨したということです。
『秘密の箱』
この世界には魔法や魔物といったものが存在している。
人々は、魔法の恩恵を享受し、また、魔物の影に怯え生きていた。
「わぁー! 海だー!」
「これが海……」
「すげー!」
「本当に大陸って海の中にあるんだな……」
仲間達と旅を続けるうちに、新しい大陸へと進むことになった。
他にも大陸が存在していることは知っていた。海を跨いだその先にあることも。しかし、知識として知っていても、実際に初めて海を目の当たりにすると、なんとも不思議な感覚になる。
「この向こうに、新しい大陸が……」
目を凝らすが、ただ広い海が広がっているだけだった。
「相当遠いみたいだから、見えるわけないよ」
「船に乗っていくんだよね!」
港に止まる大きな船を見上げる。
本当は、仲間に、変身して人を空に乗せて飛べる生き物がいるのだが、それはそれ。一度船に乗ってみたいという大多数の希望で、船に乗ることなった。
出発は明日。
ワクワクしながら宿で一晩過ごす。
「無人島に行くならば」
「はい?」
「無人島って知ってるか? 海には大陸以外にも小さな島がいくつかあって、その中には誰も住んでいない島もあるらしい」
「へぇー」
「で、無人島に一つだけ持っていけるなら、何を持っていく? って定番の質問があるらしい」
「なんで一つだけ」
「荷物増やしたくないんじゃね?」
「まぁでも魔法使える人なら荷物なくても大体なんとかなりそう」
「人と連絡取れるアイテムかなー」
宿での夜、興奮して眠れず、みんなで集まってそんな話をしていた。
まさか、こんなことになるとは思わなかった。
「魔物が現れて、魔物に捕まったり、海に落とされたり、飛び乗って戦っている間に、まさか船に置いていかれるとはねー!」
「文句言っても仕方ねぇ」
長らく旅を続けている彼らは、魔物にも慣れていた。
だから、当然乗客を守る為に(自分達も乗客ではあるが)魔物と戦った。
船員も戦ってくれたが、大勢の乗客の命が優先だ。魔物慣れしている彼らは大丈夫だろうと踏んだのか、一瞬の隙を狙って、船はその場から逃げ出した。
彼らは置いていかれたのだった。
そうして、いつの間にか無人島に流れ着いていた。
「まぁでも良かったよ。みんな一緒で」
幸い、パーティーメンバーは揃っていた。むしろパーティーメンバーだけだった。
「本当に無人島に着いちゃったね」
「どうする?」
「うーん……」
旅をしているだけあって、野宿にも慣れている。別段困ることはない。島内以外に行く場所がないことを除けば。
「…………あ」
そもそもだ。
船に乗ったのは、乗ってみたいからだった。
彼らには足があった。どこにでも行けてしまう足が。
「そうだよ。背中に乗っていけばいいんじゃーん」
変身できる仲間が、翼を持つ大きな生き物に姿を変え、みんなを背に乗せる。
そんなこんなで、あっという間に無人島生活は終わったのだった。
「一泊くらいしても良かったかなー」
「たしかに」
遭難したとは思えない気楽な会話。
彼らは、仲間がいれば、どこへ行っても無敵だ。
『無人島に行くならば』
風が吹く。それが今までとは違い、肌を撫でると、体が芯から冷えていくようだった。
とうとう秋が来た。それどころか、秋を越えて冬になろうとしている。
まだだ。まだ待ってほしい。まだ秋でいてほしい。
だってまだ、秋を堪能していない!
栗、さつまいも、かぼちゃ、きのこ、サンマ、柿……まだまだある!
秋は美味しいものがいっぱいだ。食欲の秋。秋って最高……!
だから、まだまだ秋でいてね。
秋の風に吹かれながら、出来立ての焼き芋を頬張った。
『秋風🍂』
「今日はいい日になる予感がする!」
私の予感は当たらない。
さっきまで晴れていたのに大雨に降られたし、車に泥を引っ掛けられた。何がいい日だ。こんなことばかりだ。
でも、予感がしてしまうのだから、どうしようもない。止められるものでもない。
一度くらいは当たってほしいものだ。
「あ、今日は特段にいいことが起きる気がする!」
今日も予感がする。
今度こそは、この予感が当たりますように!
『……現在、直径およそ10キロメートルと推定される小惑星が、地球との衝突コースにあることがわかりました。衝突確率は99%。日本時間で本日午後8時20分と予測されています。世界各国は時間を争う形で、迎撃作戦の立案と実行を――』
『予感』