目の前で羽根が揺れる。
 フリフリと。お尻の上で。
「ミーちゃん、お尻に羽根ついてるよ」
 そう言って、ミーちゃん――飼い猫のお尻から羽根を取り除く。立派な白い羽根だった。
「もー。どこで付けてきたの、こんな羽根。天使かと思っちゃったよ」
 でも天使なのは間違いない。だってこんなにかわいい。天使過ぎる。この世のかわいいを全て詰め込んだようなかわいさだ。
 ミーちゃんは体をペロペロと、どこか得意げに毛づくろいした。
 飼い主は知らない。
 その羽根が、その辺を飛んでいる鳥を狩って付いたものだということを。
 他の生物から見たその姿は、まるで悪魔のようだった。
『揺れる羽根』
10/26/2025, 2:41:16 AM