川柳えむ

Open App
10/3/2025, 10:19:34 PM

 誰か……誰か、助けてほしい。
 いや、マジで。
 昔治療した歯の奥の方が膿んで、痛みと共に顔が腫れ上がりました。まるでこぶとり爺さん。
 若干熱もあるし、しんどい。それなのに仕事はある。
 治療してもらってるけど、まだ痛いしブサイクだし、最悪。
 助けてー!
 この痛みと腫れをどうにかしてくれー!


『誰か』

10/2/2025, 10:41:13 PM

 足音が遠くから響いてくる。
 ――ついてきている?
 こちらが足を止めると、向こうの足音もぴたりと止む。
 怖くなって全速力で逃げる。
 息を切らして走る。
 しかし、一向に果てが見えない。一本道の通路がずっと続いている。
 いつの間にこんなところに迷い込んだのだろう?
 足音が少しずつ近付いてくる。もう逃げられる気がしない。
 意を決して、後ろを振り返った。
 視界の奥の方で、同様に後ろを振り返る自分の姿が見えた。


『遠い足音』

10/1/2025, 11:04:12 PM

 昔、秋の精を見たことがある。
 その子が秋の精だという確信があるわけではない。しかし、そうとしか思えなかった。
 その姿を見たのは一瞬だったが、こちらの視線に気付くと、すぐに姿を消してしまった。そして、冬が訪れた。
 その残像が忘れられなくて、ただひたすらに再び秋が訪れるのを待っていた。

 ようやく、空気全体が色づき始めたように涼しくなり、待ち望んだ秋の気配が濃くなってきた。
 もしかしたら、また会えるんじゃないかと、以前出会った場所へと赴いた。
 そこで姿を探してみたが、見つからなかった。
 それはそうか。警戒されているのかもしれない。
 残念な気持ちになって、空を見上げる。
 すると、視線の先から、一枚の葉がひらひらと舞い降りてきた。
 それを手にする。見事に赤く染まった紅葉の葉だった。
 まるでそれが君からの贈り物のようで、ポケットに大事に仕舞った。


『秋の訪れ』

10/1/2025, 4:50:57 AM

 俺達は魔王を倒して世界を救った。いわゆる勇者のパーティーだった。
 旅の目的は果たされた。
 だから、本来ならそこで俺達の旅は終わるはずだった。
 でも、おまえがずっと旅を続けたいって叫んでいたから、きっと、みんなも心では同じように思っていたから。一緒に旅を続けることにしたんだ。

 魔王の意志を継ぐ者が現れた。
 俺達は当てのない旅を終え、再び魔王を倒す為の旅を始めた。
 すぐこの旅も終わるだろう。そう信じていた。俺達なら――。

 今まで誰も失わずにやってこられた。だから慢心していた。こんな生死を懸けた戦いに身を投じているのに。
 ――おまえを失うなんて思ってもみなかったんだ。
 きっと何も変わらずに明日を迎えると、旅を終えると信じて疑わなかった。
 初めて気付いた。絶対なんて存在しない。そこに変わらず永遠に在り続けるなんてことはない。どんなに願っても、叶わないことだってあるんだ。
 ずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいられると思っていた。変わらずに。

 俺達は魔王を倒して世界を救った。大切なものと引き換えに。
 一人欠けたパーティーで、変わらずに当てのない旅を続ける。――いや、また再びおまえに出会えるんじゃないかって、そんな無謀なことを願いながら。

 旅先で、ある噂を聞いた。
 その噂を辿って、そして――。
 その先で、再び巡り会えたんだ。まるで奇跡のように。
 でも、おまえは全ての記憶を失っていた。
 それでも構わない。その笑顔を見られただけでも。
 もう一度、ここから始めよう。

 俺達はまた旅を続ける。
 おまえがずっと旅を続けたいって叫んでいた。あの時抱いた俺達の気持ちは、今も変わらないから。
 そしてきっと、おまえも一緒にいたいと思ってくれて、だから今ここにいるんだろう。
 旅は続く。いつまでも、どこまでも。


『旅は続く』

9/29/2025, 10:57:25 PM

 君がいなくなった世界は、色を失って、全てがモノクロに見える。
 あれだけ鮮やかだった世界が、一瞬で消え去った。
 どれだけ叫んで渇望しても、もう二度と手が届かない。
 どうかまた、モノクロの世界に色を足して。
 君がいないと、もうどうしようもないんだ。


『モノクロ』

Next