川柳えむ

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 足音が遠くから響いてくる。
 ――ついてきている?
 こちらが足を止めると、向こうの足音もぴたりと止む。
 怖くなって全速力で逃げる。
 息を切らして走る。
 しかし、一向に果てが見えない。一本道の通路がずっと続いている。
 いつの間にこんなところに迷い込んだのだろう?
 足音が少しずつ近付いてくる。もう逃げられる気がしない。
 意を決して、後ろを振り返った。
 視界の奥の方で、同様に後ろを振り返る自分の姿が見えた。


『遠い足音』

10/2/2025, 10:41:13 PM