川柳えむ

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 俺達は魔王を倒して世界を救った。いわゆる勇者のパーティーだった。
 旅の目的は果たされた。
 だから、本来ならそこで俺達の旅は終わるはずだった。
 でも、おまえがずっと旅を続けたいって叫んでいたから、きっと、みんなも心では同じように思っていたから。一緒に旅を続けることにしたんだ。

 魔王の意志を継ぐ者が現れた。
 俺達は当てのない旅を終え、再び魔王を倒す為の旅を始めた。
 すぐこの旅も終わるだろう。そう信じていた。俺達なら――。

 今まで誰も失わずにやってこられた。だから慢心していた。こんな生死を懸けた戦いに身を投じているのに。
 ――おまえを失うなんて思ってもみなかったんだ。
 きっと何も変わらずに明日を迎えると、旅を終えると信じて疑わなかった。
 初めて気付いた。絶対なんて存在しない。そこに変わらず永遠に在り続けるなんてことはない。どんなに願っても、叶わないことだってあるんだ。
 ずっと一緒にいたかった。ずっと一緒にいられると思っていた。変わらずに。

 俺達は魔王を倒して世界を救った。大切なものと引き換えに。
 一人欠けたパーティーで、変わらずに当てのない旅を続ける。――いや、また再びおまえに出会えるんじゃないかって、そんな無謀なことを願いながら。

 旅先で、ある噂を聞いた。
 その噂を辿って、そして――。
 その先で、再び巡り会えたんだ。まるで奇跡のように。
 でも、おまえは全ての記憶を失っていた。
 それでも構わない。その笑顔を見られただけでも。
 もう一度、ここから始めよう。

 俺達はまた旅を続ける。
 おまえがずっと旅を続けたいって叫んでいた。あの時抱いた俺達の気持ちは、今も変わらないから。
 そしてきっと、おまえも一緒にいたいと思ってくれて、だから今ここにいるんだろう。
 旅は続く。いつまでも、どこまでも。


『旅は続く』

10/1/2025, 4:50:57 AM