眩しくて目を細める。
強い陽射しの下、笑う君。
ずっと見ていると、目が潰れてしまいそうだ。
触れてはいけない神の領域のような、そんな神聖さを感じて。
きっと赦されない想いだ。
伸ばしかけた手を、ゆっくりと戻す。
強い光の前で、闇はきっと存在できないから。
今、君の傍にいられるだけでも、幸せだ。
限りある時間を、最期まで君と共に。
『眩しくて』
――死ぬのかな、と。ぼんやり考えていた。
意識が遠退いていくのがわかる。
君の切羽詰まった声が聞こえる。
「絶対に死なせない!」
――もういいだろ。うん。大丈夫。ちょっと休むだけだから。
そういえば、君は「会いたかった」って言ってた。あれは、どういう意味だった?
たしかに。なんだか久しぶりに会った気がするのに、ごめん。
でも、会えて嬉しかったな。なんでかわからないけど。
唇に熱いものが触れた。
止まりかけていた心臓が、再び熱く鼓動する。
瞼を開くと、目の前に初めて見る君の泣き顔があった。
『熱い鼓動』
知ってる人に話し掛けられた。
一方的に話してくる。
挨拶をし損ねてしまった。
「あっ……え……」
挨拶しなきゃ。
「こ、こんにちは!」
「え、急にどした? それよりさ――」
またどんどん話していく。
どうだろう? 僕は何か間違えた?
でも、何もなかったように話していくから、たぶん大丈夫。
タイミング、間違ったかな? って、いつも後で思ったりする。
たまに間違って、相手がどこか行ってしまう。そんなこともある。
それでも、君はいつも気にせず話してくれるから。ただの知ってる人じゃなくて――なんか、そう。一緒にいて、ちょっと楽しい知ってる人。
君と会える日が楽しいって思ってる。
『タイミング』
とても小さな頃、あの虹の麓には宝が埋まっているんだよ。と教えてもらった。
だから、僕は旅に出た。
その宝を見つけ出すために――。
初めて訪れた町で、僕は一人の男と出会った。
彼は冒険家を生業としていて、いろいろな町を転々としている人だった。
僕の話を聞くと、「面白そうだ」と笑いながら言い、同行すると申し出てくれた。
僕としても、冒険に慣れている人が一緒にいてくれた方がいい。
そうして、僕に仲間ができた。
次に訪れた町で、今度は怪しげな格好をした女と出会った。
彼女は魔女の末裔で、最近は魔女に対する偏見が増え、この町では暮らしづらいと愚痴をこぼしていた。
じゃあ僕らの旅についてくるかと尋ねると、彼女は「喜んで」と、笑った。
道中、なぜ宝を求めているのかと尋ねられた。
僕が虹の麓を目指しているのは、病気に苦しむ母を助ける為、宝――お金が欲しかったからだ。
あの虹の話をしてくれた母を、優しい母を、失いたくなかった。
今、空に虹は出ていない。
元々、虹なんて常に出ているものじゃない。
けれど、旅立つ日に見上げた空に架かっていたあの虹の方向に向かっていれば、きっといつかは辿り着けると信じていた。
虹の端を、虹の始まりの、その麓に辿り着ければ、きっと母は――。
雨上がりの青い空に、虹が架かった。
白い鳩が、あの空に向かって翼を羽ばたかせた。
あまりにも幻想的で、僕はきっとこの光景を一生忘れないだろう。
その鳩のうちの一羽が、僕の元へとやって来た。町から送られた伝書鳩だった。
そこには、母が亡くなったことが記されていた。
どこまで行っても、虹の麓には辿り着けなかった。僕の願いは叶わなかった。
でも、宝は手に入れていた。
今、僕には、悲しい時、こうして一緒に泣いてくれる仲間がいる。嬉しい時、抱き合って喜べる仲間がいる。
この旅は決して無駄ではなかった。宝はすぐそばにある。
『虹のはじまりを探して』
カラカラに渇いていた。愛に飢えていた。
遠くに蜃気楼が見える。
そこへ向かって、手を伸ばした。
あぁ。あれは、オアシスだ。
心を潤す水が欲しかった。
甘い密に誘われるように、力を振り絞って、辿り着いた。
でも結局、そこには何もなかった。
蜃気楼は蜃気楼で、オアシスなんて幻だった。
余計にカラカラに渇いた心は、灼けるような陽射しの下で、このまま朽ち果てていくのだろう。
『オアシス』