画面の中の君。
スポットライトに照らされたステージ。舞い散る銀テープ。波打つペンライトの光。君の笑顔。
その全てがあまりにも眩しくて、目が眩んでしまいそう。
君は人たらしだ。3次元に興味もなかった私を、いとも容易くオタクに仕立て上げた。
画面の中の君。
誰か知らない人の肩を、大事そうに抱いていた。華やかな衣装と対照的な、地味なシャツにくたびれたジーンズ。つけているのを見たことがないサングラス。
その全てが仄暗い影を秘めていて、いっそ目が潰れてしまえば楽なのに。
本気の恋は、大量のうちわと雑誌とアクスタと共に、フリマサイトで売られていった。
「初恋」
彼女は、まるで重力を感じさせない動きで、ふわりと僕の前に降り立った。そう、降り立ったのである。
「そのお花、私好きなの。おひとつくださる?」
幼さを残した顔にそぐわない、ちょっと斜に構えた話し方。黄色のワンピースをふわりと揺らして、唇に笑みを湛えた。
「贈り物…ですか?」
「ええ。今日、私お誕生日なの!だから、自分への贈り物」
その日は11月28日。僕の誕生日の前日。
「分かりました。では、お包みいたしますね」
巻いたリボンの色は、花と同じ弾けるような黄色。
それを受け取った彼女の笑顔が、あまりにも眩しく、軽やかで。僕の瞳には、ワンピースと重なった、花びらの鮮やかな黄色が焼き付いてなかなか消えなかった。
弾むような足取りで、家路を急ぐ。今日は11月29日。20数年前、この世界で1番愛しい人が生まれた日。
手には、見ているだけで頬が緩む、濃いオレンジカラーのマリーゴールド。花図鑑を開いたら、そこにあった花言葉。
「変わらぬ愛」
こうも単純でいいんだろうか。そう心配になる程、彼にぴったりな言葉だ。初めて会った日、丁度一年前の今日。ふわりふわりと、どこに寄りつくわけでもない、糸の切れた風船のようだった私。そんな私を、暖かい愛情で繋ぎ止めてくれた彼。
私と彼で過ごす時間は、まだイントロだ。家に着いたら、彼の手を引いて一緒に踊ろう。
私は私の人生を、彼と共に踊るように歩いていく。
(余計な一言)11月28日の誕生花は、オンシジュームです。花言葉は「あなたと踊りたい」
今日、ふと空を見上げたら、随分と秋の空に近づいていることに気づき驚いた。真夏の濃い青空はもうすっかりなりを潜めていて、代わりに色素の薄い秋晴れが視界に飛び込んできたのである。
片隅には、崩れかかった入道雲。小さい頃読んだ、夏の終わりの詩を思い出した。
甘く蕩けるような、ポンとはじけるような夏の煌めきが、段々と遠ざかっていく。
なぜ、姉はああも毎朝嬉しそうに鏡を眺める?
なぜ、姉はむっつりとした顔をしていても大勢に好かれる?
なぜ、姉は生まれながらに両親に愛されている?
私にはできない。
なぜなら、私は生まれながらに不完全で、大事なものをいくつもいくつも姉に盗まれて生まれてきたからだ。
※突然の君の訪問。 保留です。いつも❤︎をくださる方、ありがとうございます。ちゃんと届いております。そして1人小躍りしています。