こんな話がある。
都会で生まれ育った子供が、田舎の満天の星空を見て口々に「気味が悪い」と言ったらしい。
きっとその子供たちは、生まれた時から瘴気で覆われた空を見てきたのだろう。そして、他の地域の空には、こんなにもたくさんの星々が輝いていることを知らなかった。
こんなに残酷な話が、あっていいのだろうか。
誰の心も等しく照らしてくれる星は、誰にとっても美しいものであってほしいと、私は思う。
学校の帰り道、1人で見上げた空。夕焼けに夜の帳が下りてきて、一番星が光を放ち始める。
修学旅行の夜、友達とベランダで眺めた空。濃紺のベルベットの絨毯に、うっかり真珠をこぼしてしまったみたい。そう言って笑い合った。
星が溢れそうなこんな夜は、夢の中で星空の中を散歩してみたい。誰か、大切な人と。
こんなふうに、私にとっての星空は、いつまでも美しいままだ。
人を知ることは、その人の愛し方を知るということ。
その人の心を、ほんの少しだけ、自分の心と重ねてみること。
人を知りたいと思うことは、とても素敵なこと。
だから、私は、あなたをもっと知りたいと思うのです。
昔から、女の子扱いされるのが苦手だった。
家事の手伝いをすれば、流石女の子だねえと言われる。
久しぶりに会った親戚には、女の子にしては背が高いわねと言われる。
スカートが欲しいと言えば、女の子らしくて素敵だねと言われる。
おかしい。何かがおかしい。
どうして誰も気がつかない?
最初は小さな歪みだった。それが、じわじわと私の心を侵して行って、もう抑えが効かなくなってきた。
ふざけるな。
確かに私は女として生まれてきて、女として生きてきて、これからも女として生きていく。
性的コンプレックスを感じているわけではない。
スカートも、キラキラしたハートも、リボンも、ピンクも大好きだ。
でも、それが俗にいう「女の子像」として扱われるのが堪らなく嫌なのだ。そんなものには虫唾が走る。
私がおかしいのだろうか。だって、みんななんともないような顔をして生きている。
毎年三月三日、こちらを見つめる雛飾りは、私を縛り、閉じ込め、決して赦してはくれない。
あなたが欲しいもの。
私が欲しいもの。欲しかったもの。
何一つ満たせなくて、いつしかズレた歩幅。
ありがとう。
ごめんね。
光を纏った涙が、酷く美しいと思った。
恥の多い人生を送ってきました。
なんて、書き出してはみたものの。私はかの文豪のように文才豊かではないから、思いつくままに話してみよう。
幼稚園の頃から、みんなに合わせるのが苦手だった。だから、いつも1人浮いていて、先生にも嫌われていた。
小学校に上がってから、恩師に出会った。
私の人生を変えてくれた人。誰よりも特別で、大切な
人。どうしようもない私を受け止めて、私の居場所は確かにここにあると、教えてくれた。
中学生になってから、私は生きるのが上手くなった。ような気がしていた。自分の世界と周りの世界を完全に分けて、自分を使い分けていた。そうやって自分を守った気でいた。そんな私を、父も母も疎んでいた。
こうしてみると、何と恥の多い人生だことか。
お前ほど不器用で、自己中心的で、情けなく、長けている箇所がない人間はいない。だから、これからは慎ましやかに、せめて人様に迷惑をかけず生きて行かねばならない。清く正しく生きるなど、貴様には到底できやしないが、せめてそれくらいはしなければ。
そう言われ続け、最初は反発する気持ちもあったものの、心のどこかでは納得していた。
なるほど、私の生きづらさは、私という人間が原因なのだ。
その日私は、私を殺すことに決めた。