苑羽

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彼女は、まるで重力を感じさせない動きで、ふわりと僕の前に降り立った。そう、降り立ったのである。
「そのお花、私好きなの。おひとつくださる?」
幼さを残した顔にそぐわない、ちょっと斜に構えた話し方。黄色のワンピースをふわりと揺らして、唇に笑みを湛えた。
「贈り物…ですか?」
「ええ。今日、私お誕生日なの!だから、自分への贈り物」
その日は11月28日。僕の誕生日の前日。
「分かりました。では、お包みいたしますね」
巻いたリボンの色は、花と同じ弾けるような黄色。
それを受け取った彼女の笑顔が、あまりにも眩しく、軽やかで。僕の瞳には、ワンピースと重なった、花びらの鮮やかな黄色が焼き付いてなかなか消えなかった。

弾むような足取りで、家路を急ぐ。今日は11月29日。20数年前、この世界で1番愛しい人が生まれた日。
手には、見ているだけで頬が緩む、濃いオレンジカラーのマリーゴールド。花図鑑を開いたら、そこにあった花言葉。
「変わらぬ愛」
こうも単純でいいんだろうか。そう心配になる程、彼にぴったりな言葉だ。初めて会った日、丁度一年前の今日。ふわりふわりと、どこに寄りつくわけでもない、糸の切れた風船のようだった私。そんな私を、暖かい愛情で繋ぎ止めてくれた彼。
私と彼で過ごす時間は、まだイントロだ。家に着いたら、彼の手を引いて一緒に踊ろう。
私は私の人生を、彼と共に踊るように歩いていく。

(余計な一言)11月28日の誕生花は、オンシジュームです。花言葉は「あなたと踊りたい」

9/7/2023, 10:36:06 AM