ー眠りにつく前にー
眠い、とにかく眠い。もう、意識が落ちようとした時、胃から脳に掛けて不安と言う熱が、せり上がる。何かを忘れている。上半身は、こんなに熱いのに、下半身が、寒い。眠いと不安が、ごちゃ混ぜになって、体にも、影響が出ているようだ。直前の行動を振り返っても、ご飯を食べて、風呂に入っただけ。敢えて言うなら、風呂で寝ぼけて、お湯の水面にキスしたくらいだ。「もう限界、もう無理、落ち••る」眠気の限界を迎えた私は、妙にスースーする、下半身を布団に隠し、そのまま眠りに落ちる。
ー幻の理想郷ー
喉が渇けば水を飲む。腹が減れば、飯を食べる。眠くなれば、布団で寝る。それだけの環境があれば生きる事は出来る筈なのに。人ってやつは、一つの欲求を満たしたら、また次の上を求めようとする。水が、味のついたジュースに。食べれるだけで幸せだったご飯が、より濃いジャンクフードを食べたくなったりする。無限に続く欲求。求めれぱ、求めるほど、理想が遠のいてしまう。まさに、幻の理想郷
私は、記憶喪失である。自分が何者で何処に住んでいたかも分からない。気がついたら、冷たいコンクリートの上で寝ていたのだ。周りを見渡して見るが、横に田んぼが広がるだけで、後は田舎道しかない。手掛かりと呼べるか、分からないけれど、さっきから頭痛がひどい。記憶を失った事に関係があるのかもしれない。とにかく歩こう。気持ちを切り替えて3、4時間、歩いていると、病院の前に立っていた。何かに取り憑かれるように病院に足を運ぶ。404号と書かれた部屋で止まると、ドアに自然と手が伸び、そのまま入っていった。そこには、ベットの上に包帯が巻かれた男が寝ていた。何故か、懐かしく思う、既視感を覚えるのだ。どうしても、他人事には思えなかった。私は、部屋の風景だけを映す鏡を見ながら、忘れてしまった記憶を必死に思い出そうとする。
寒い、凍えるほどの冷たい風が肌を突き刺さる。家もない、お金もない。あるのは、拾ってきた段ボールと、ゴミ箱から漁った、賞味期限切れの弁当だけ。
俺は、選択を間違えたのだ。別にお金が無かったわけでわない。むしろ、一般家庭の平均貯金額よりは、持っていたはうだ。ただ、欲をかいて、もっとお金が欲しいと思ってしまた。それが、地獄への切符を買うことになるきっかけになってしまう。
もし、もう一つの物語があったなら幸せに成れたのかな。こんな、惨めな思いしなくて済んだのかな。今更、遅い後悔を抱き、役目を終えた馬券を握り閉める。
暗がりの中でコッペパンを喰らう。特に意味がない。ただ、気づいたら外が暗くなっていて、近くにコッペパンがあったからだ。むしゃ、むしゃ、まだ足らない。闇に手を伸ばして近くにあった、コッペパンを手に取る。暗闇の中、ひたすらにコッペパンをしゃぶり尽くす。特に意味はない。