複雑怪奇の羅針盤

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 私は、記憶喪失である。自分が何者で何処に住んでいたかも分からない。気がついたら、冷たいコンクリートの上で寝ていたのだ。周りを見渡して見るが、横に田んぼが広がるだけで、後は田舎道しかない。手掛かりと呼べるか、分からないけれど、さっきから頭痛がひどい。記憶を失った事に関係があるのかもしれない。とにかく歩こう。気持ちを切り替えて3、4時間、歩いていると、病院の前に立っていた。何かに取り憑かれるように病院に足を運ぶ。404号と書かれた部屋で止まると、ドアに自然と手が伸び、そのまま入っていった。そこには、ベットの上に包帯が巻かれた男が寝ていた。何故か、懐かしく思う、既視感を覚えるのだ。どうしても、他人事には思えなかった。私は、部屋の風景だけを映す鏡を見ながら、忘れてしまった記憶を必死に思い出そうとする。

10/30/2024, 2:52:22 PM