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5/15/2023, 1:34:16 PM

カムパネルラの死を知ったザネリは、あれからどんな夢をみたんだろう。

たとえばジョバンニのように、銀河を1周するほどの時間をかけたとしても、果たしてその現実を受け入れて、自分の人生に向き合うことはできるのだろうか。

あるいは、彼の心は、いつまでもあの川を揺蕩いながら、沈みきることもできずにいるように思う。

ザネリの真意は知るよしもないことだ。案外、けろっとして生きていったのかもしれない。

それでも、不条理な死を遂げたカムパネルラと、生き残ったいじめっ子ザネリ。潰えたひとつの人生と、変わりなくやってくる明日。その心とリンクしようとするたびに、後悔とは何か、考えてしまう。




5/15/2023, 9:52:32 AM


楓にも花がある。とても遠慮深くて仄かな色をつけているから、目立たないけれど。

種はかわいいんだ。竹とんぼみたいにくるくるまわりながら、風のままに飛んでゆく。風媒花っていうんだよ。

風に流され、楓はまた奥ゆかしい花を咲かせて、目が覚めるような緑から鮮やかな紅葉、そしてまた、その種はくるくると飛んでゆく。

花の香りもしないから虫や鳥を惹きつけない。
だから誰も気づかないんだけれど、こういう生き方をしてみたいものだね。

ある人が言っていた。


5/13/2023, 1:38:52 PM


「何もしない」をしたいなあ。自分のために誰かのためにと何かを生産することもなく、忙しない日常の余白を繋ぎあわせたみたいな、まっさらな時間を過ごしたい。


心が暇になったな、て思ったら本でも読もうか。


レ・ミゼラブル、ノートルダム・ド・パリ……辺りの長編小説をじっくりと読んだりして、ポール・グリモーの『王と鳥』も久しぶりに観たい。

何だか、すごくフランスな気分。


5/13/2023, 2:41:01 AM

君の成長は、人より少しだけゆっくりのようだ。
すぐに泣いてしまうし、ちょっとしたことで癇癪を起こす。

教室に蝶々でもはいってきたのなら、君はもうそこにはいない。君はどこまでも、君だけの世界を生きている。

クラスのみんなが、段々と物事の「分別」をつけられるようになってきても、君だけはいつも苦しそうだ。その小さな胸の底で、君の魂は灰のようにいつまでも燻り続けているんだろう。僕たちが子ども時代に、とっくに置いてきてしまったそれを。


「はやくおとなになりたい。」


君はいつだか、泣いていた。溢れそうな瞳からいっぱいに流れる水滴は、本当は誰よりも繊細な心をもつ君そのものだ。


「どうして?」

「おとなになって、わたし、あなたとケッコンしたい。」


いつからか。君の涙はとても綺麗だけれど、できるだけ泣いているとこはみたくないなと思うようになった。

だって君の笑顔は、神様からの贈り物のようなんだ。僕と結婚したいのなら、君は、君を壊してまで大人にならなくてもいい、君は君のままでいいのにと、ひそかに思っている。





5/11/2023, 10:17:18 PM

初めて彼を見たとき、妖精の子どもみたいだって思った。私たち、やっと6才になったばっかりだったから。でも、よく覚えている。

幼かった彼の耳には、丸くてつやっとしたものがいつも入っていて、先生はそれを「ホチョーキ」といった。


「大きい声をだしてびっくりさせちゃダメだよ。」


有り余るエネルギーをこれでもかと放出する男子たちの中で、彼だけがゆっくりと呼吸をして生きているのだと思った。

小学4年生のとき、彼の世界から音は閉ざされた。それでも私は彼と、囁きあうような会話を重ねた。どちらも筆談、私は少しだけ手話も覚えた。

もう聞こえていないのはわかっていたけれど、ときどきこぼれる、彼の妖精みたいな声を思いがけず拾うその時間が、私の宝物だった。

4月になれば、私は公立の中学、彼はろう学校へ通うことになる。やさしくてかっこいい彼のことだから、きっと彼と同じ景色のみえる、天使みたいな女の子たちからモテるのに違いない。

もう背丈も違う。歩くスピードも違う。私たちの生きる世界は少しずつかけ離れてゆく。
数歩先の、今にも羽ばたいていってしまいそうな彼の背中へ、声のままに叫んでみる。


「私を置いてかないでよ」








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