君の成長は、人より少しだけゆっくりのようだ。
すぐに泣いてしまうし、ちょっとしたことで癇癪を起こす。
教室に蝶々でもはいってきたのなら、君はもうそこにはいない。君はどこまでも、君だけの世界を生きている。
クラスのみんなが、段々と物事の「分別」をつけられるようになってきても、君だけはいつも苦しそうだ。その小さな胸の底で、君の魂は灰のようにいつまでも燻り続けているんだろう。僕たちが子ども時代に、とっくに置いてきてしまったそれを。
「はやくおとなになりたい。」
君はいつだか、泣いていた。溢れそうな瞳からいっぱいに流れる水滴は、本当は誰よりも繊細な心をもつ君そのものだ。
「どうして?」
「おとなになって、わたし、あなたとケッコンしたい。」
いつからか。君の涙はとても綺麗だけれど、できるだけ泣いているとこはみたくないなと思うようになった。
だって君の笑顔は、神様からの贈り物のようなんだ。僕と結婚したいのなら、君は、君を壊してまで大人にならなくてもいい、君は君のままでいいのにと、ひそかに思っている。
5/13/2023, 2:41:01 AM