崩壊するまで設定足し算

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11/11/2024, 6:53:18 AM

▶10.「ススキ」博士のルーツ

9.「脳裏」
8.「意味がないこと」‪✕‬‪✕‬‪✕‬の目的
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:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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「この土地は‪✕‬‪✕‬‪✕‬には良い所だが、ススキが無いのが残念だ」
「ススキ?煤けた木ですか?」
「お前、それ外でやるなよ」

博士が言うススキは、
野原にたくさん生える草で、
頭に金色とも銀色ともつかぬ箒がついてて、
長いから風に揺れる。
博士の故郷にしか無いらしい。

人形は目覚めたばかりで学習が追いついていないため、記憶データの再生がロックされている。
博士の話からイメージを作るしかないが、それが正しいか見てもらう手段もない。

「それは、見に行くことができるのですか?」
「遠いからなぁ」

私は無理だな、と博士は軽く笑った。

「私の生まれた国で人形づくりは盛んだった。その技術を持った私が、こんな所まで流れてきたから‪✕‬‪✕‬‪✕‬は作れたんだ」

お前の髪色はススキの穂に似せたんだ。
風になびいたら綺麗だろうってね。

そう言って博士は人形の頭を撫で、話を締めくくった。

11/10/2024, 9:23:27 AM

加筆修正なう(2024/11/21 22:17:20)

▶9.「脳裏」

8.「意味がないこと」‪✕‬‪✕‬‪✕‬の目的
7.「あなたとわたし」の願い
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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カラン、コロン

とある昼下がり。ドアに付けたベルが来客を知らせる。
「いらっしゃいませー」

やる気もそこそこに顔を向けると、一人の若者が入ってきた。

「1人分で2泊頼みたい。部屋はあるだろうか」
「はい、ございます。前払い、食事無しなら銀で5。朝夕ありで6。サインをこちらに」

ずい、と台帳を押し出すとすんなりと書き始める。
「無しでいい。確かめてくれ」

支払いも手際がいい。全ての客がこうだといいんだけどな。
食事やら何やら説明し、カギを渡した。
「毎度ありがとうございます。どうぞ、ごゆっくり」

客の背中を見送り、台帳の名前をじっくり見る。

(これは…)
主人の脳裏に過去の出来事が駆け巡る。



できるだけ力を入れなかったのだが、
バタン、と築年数相当の音を立てて部屋のドアは閉まった。

(あの主人は…)

もう少し期間を空けて来るべきだったか。
ひとまず旅装を解きながら考える。

人形は容姿が変えられないため、ひとつの所に長くいられない。直接関わりができた場合には、10年単位で期間を空けるようにしている。
しかし今回は、

(子供の記憶力は予想がつかない、と)

新しく得た学びである。

昨日のことを覚えていないと思いきや、30年前の出来事を覚えていたりする。

(さすが宿屋というのか、顔ではなく字に反応した)

人形が世に紛れる上での弱点。
‪✕‬‪✕‬‪✕‬は少々字が綺麗すぎる。

主人が名前でなくサインと言ったのもそうだ。
字が書けない者は自身を表わす印のようなものを持っている。

博士と過ごすのには何の支障も無かったのが災いした。
旅に出てから気づいてはいたが、
人形は抽象化が苦手であった為、作れずにいた。


(人間らしい行動、というのが誤りだったのか)

30年前、あの日。宿で出す食事の仕入れを任された少年。手間取ったとかで人出の多い時間を過ぎての夜道。物取りに襲われているところを助けた。

少年と、当時の宿屋を経営していた夫婦には感謝されたが。

正か、誤か。
人形に脳はないが、思考の隅でめぐる。


結果として、
再度主人と顔を合わせた時、30年前のことを聞かれ、
自分は当時助けた者の子だ、話は聞いたことがあると話した。

それでもと感謝され、あたたかい食事を出してくれた。
食材そのものはエネルギーにできないが、
その温かさは人形の体にしみていった。

11/8/2024, 1:30:03 PM

加筆修正なう(2024/11/09 12:24:13)
▶8.「意味がないこと」‪✕‬‪✕‬‪✕‬の目的

7.「あなたとわたし」の願い
6.「柔らかい雨」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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日の出が近い時間になり、
人形は自動的に休止形態から待機形態へと移行を始めた。


宿のように一定以上の安全が保証された場所では
1度バラした自分をまた組み上げるように、
時間をかけて、ひとつひとつ異常がないか点検しつつ移行する。

その間、‪✕‬‪✕‬‪✕‬の記録や博士の記憶データが不意に再生されることがある。
人間でいうところの夢に近い。


人形は薄く作られた目蓋越しに朝日を検知し、目を開けた。

自由を求めていた博士。

人を害さず、人に害されず。
その上にある自由とはどんなものなのか。

答えが記録されていない問いに‪✕‬‪✕‬‪✕‬は答えられない。
よしんば答えを見つけられたとしても、報告する相手は既に無い。


夜、人形は情報収集のため酒屋に来ていた。
旅に必要な知識は博士の叔父のデータから入手していて、現在と齟齬がないか確認するためである。

人間と話せば、旅の目的は何か聞かれることも多い。

‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、最初こそ自由のかたちを探していると正直に答えていた。

すると当然のように、
「それ、意味あるのか?」
と返される。酒の入った人間は容赦がない。

人形は最初こそ「意味がある」「旅は私の使命だ」などと真面目に反論していたが、革命家か何かと怪しまれることも多かったため、

今は、「世界を見たい」と答えるようにしている。


人形は安全に旅を続けるために、自分の行動について軌道修正する機能は備わっているが、
自身の存在意義について問うことは博士より「意味がないこと」として禁止されている。

今の‪✕‬‪✕‬‪✕‬は博士に禁止されているからと言って、できない訳では無いと推察している。

しかし、答えが見つかっていない問いに✕‬‪✕‬‪✕‬は答えられない。

人形に出来ることは、
ただ旅をして人と触れ合い
増えた記録の検証と分析を行う
これだけである。

11/8/2024, 8:04:42 AM

7.「あなたとわたし」
多忙と体調不良により今回保全とします。
もっと読みたいと伝えてくださった方、申し訳ありません。

保全報告にもたくさんの読みたいを伝えてくださって感謝します。
無事に書き終えました。なう(2024/11/08 22:25:24)


▶7.「あなたとわたし」の願い

6.「柔らかい雨」
5.夜を越す為の「一筋の光」
:
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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私の持てる全てを注いで作り出した人形。
まさか命まで持っていかれるとは…いや、
これは不養生のツケだ。

もはや旅に出られる体力はないが、
それさえ諦めれば残りを人形の仕上げに使える。


幾日も悩んだ末に、
人形の起動スイッチを入れた。
装置が作動し重低音が響く。

程なく無事に人形が目を開けた。

「おはよう、‪✕‬‪✕‬✕‬」


最初で最後の時を過ごそう、‪✕‬‪✕‬‪✕‬。
当初の予定より随分と短いのは許せよ。

そして共に探そう、自由を。

11/7/2024, 8:06:01 AM

▶6.「柔らかい雨」

5.夜を越す為の「一筋の光」
:
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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歩き始めた時、少しだけ雨が降っていた。
風もなく穏やかな気温のせいか、
雨の落ちる衝撃も柔らかく感じる。

✕‬‪✕‬‪✕‬は足を止め雨を見上げ浴びた。

雨はすぐ上がり、
人形は、また歩き出した。

博士の最期にセンサーが感じた温度のデータを再生しながら。


‪✕‬‪✕‬‪✕‬の目覚めから1年と半年程が過ぎた頃。
最初こそ試験と調整の連続だったが
その頻度も減り、人形は完成という言葉を待っていた。


だが、博士は倒れた。

(中略)

人形に医療の知識があれば、何かできたかもしれない。

✕‬‪✕‬‪✕‬は、失われていく命の温度を知るだけだった。


数ヶ月かけて博士の残した指示通りに書類や家を処分した後、
人形はあての無い旅へと出発した。










以下中略部分
センシティブな表現あり











だが、博士は倒れた。

その日の朝、歩行訓練と称した日課の散歩を共にしていた。
訓練という言葉が惰性に感じるほど、人形の歩き方は人間に近い。

隣を歩いていた博士の方から
ぐっ、という唸り声が聞こえ、‪✕‬‪✕‬‪✕‬は体を向けた。

その瞬間、口を手で抑えた博士の膝が抜け、即座に支える。
体が密着したところから、温度センサーが反応していく。

何度目かの咳のあと、
博士の口から柔らかい雨のようなものが降り注ぎ、
人形はそれを至近距離で浴びることになった。

(あたたかい)

その温度は人形の記録に強く焼き付く。

そろりと腕を動かして、下がっている方の手を握った。
博士の手は、冷たかった。


人形に医療の知識があれば、何かできたかもしれない。

✕‬‪✕‬‪✕‬は、失われていく命の温度を知るだけだった。

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