胃弱

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5/27/2024, 9:40:12 AM

 こんなに寂しくて悲しくて泣きたくて仕方がないこんな夜ほど、私は夜空で一番光り輝く月を眺める。 

 だからと言って、別に月が好きな訳じゃない。 
どちらかと言うと、嫌いだ。

 なんでそんなにあなたは眩しいの。
 私と真逆だ。

 こんなに頑張ってるのに私は輝くことはできない。
 それなのにあなたは何もしなくてもずっと輝いていられる。

 羨ましい。
 憎いよ…

 願うならあなたがこの世界から消えてしまえばいいのに。

 私は、今も輝きを失わない月にそう言った。

              タイトル:月に願いを

5/4/2024, 10:34:58 AM

 薄暗いけれどここはとても落ち着く。
 耳を澄ませば聞こえてくる。
 冒険の音。

 草むらを走る馬のような音が聞こえてくる。
 『ドタドタバタバタ』

 お城のガラスが割れてドラゴンが!
 『パリーン、ガシャン』
 
 お姫様がドラゴンに攫われた!
 『キャー!たすけてー』
 
 勇者様は助けにくれるかな?
 『お願い、誰か』

 ドラゴンが暴れてるのかな?
 『バシ!ドス!パン!グサッ!!』

 お姫様は魔法が使えるみたい!
 『あの子さえあの子さえうぅ、、違う違う!
  お前が!お前が消えろ!消えろ!消え…!!』

 私はお姫様を助ける妖精さん!
 『でも、足がじんじんしてうごけない』

 勇者様はまだかなぁ?
 『いたいよ!やだ!やめて!』

 ゆう゛、じやま、、くらい゛よぉ


 押入れの中で見つかった少女はまだ6歳にもならない。それにしては顔の原型はあまりにも崩れ、目は潰れてしまってる。

 妻と娘は、日頃、夫から暴行を受けていた。
警察に被害届を出し、一時は逃れたものの、1年後、夫に見つかってしまい暴行はさらに加速していった。
 夫は、暴行により娘を殺害。
 妻は、それに激怒し、夫を殺害した。

 少女が描いたであろう絵本は、哀しくも苦しい本であった。
 少女は押入れで何を聞いていたのだろうか

             タイトル:耳を澄ませば

4/26/2024, 12:07:15 PM


 人種の差別に関して、善悪を問うのは難しい。

 誰かが悪いわけではない。

 ただ、歴史が変わろうとすることに歯止めをかけているだけだ。

 だからと言って、変わることに善悪を問うのもまた難しいことだが…

 とある学者はそう言った。

 そんな彼も虫を殺すことは悪くないと思っている。
                 タイトル:善悪

4/9/2024, 11:04:57 AM


 『誰よりもずっと貴方が羨ましいよ』

 
 誰よりも僕の事を分かってくれて

 誰よりも僕の話を熱心に聞いてくれて

 誰よりも僕のことを愛してくれて

 誰よりも僕を…見守ってくれてた


 なのになんで
 貴方は僕を置いていってしまったんだ

 遠く会える保証のないところへ

 ずっと貴方に僕は言い続けたじゃないですか
 早く、早く楽になりたいって

 でも、貴方はそれを止めてくれた
 だから今、こうしてまだ生きていたいと思えるようになったのに

 貴方が羨ましい
 あれほどいくなと言ったのに
 何故、貴方が先にいってしまうんだ

 ……。
 でも、僕はまだいく訳にいかない
 貴方との約束くらい守りたいから…

 どうか僕のこと
 また、誰よりも見守ってくれませんか?

 先生。
        タイトル:誰よりも、ずっと
 

4/3/2024, 3:41:55 PM

『一つだけ、お願いがございます
  満たしてほしいものがあるのでございます』

 そう言うと、彼女は襖の奥に手を伸ばした。
ガコンという大きい音ともに掛け軸が反転し、奥へと続く階段が出てきた。

 
 彼女は、代々この家に仕えてきた家政婦の一人だ。
 有能であるくせに美しい容姿を持っている。
彼女がこの家に来てから数年が経ち、不慣れだった彼女は今やどこかへ行ってしまった。

 性格は、天然でよく柱に頭をぶつけたり、何もない所でコケたりもする。
 数年ではあるが僕は彼女をずっと見てきた。

 どうやら、僕は彼女に惹かれてしまっているらしい。

 だからと言って、彼女に手を出すほど僕は愚かじゃない。

 そう言いつつも彼女が夜な夜な一人で家を歩いて
いるものだから気になって後をつけていた。
 彼女は、どうやら僕に気付いていたらしく、何をしているのかと聞いてきた。
聞きたいのはこちらなのだが…

 正直に話すと、彼女はクスッと笑い、付いてきて ほしいと僕に言った。
 後に続くと、そう滅多に入らないお爺様の部屋だった。
 
すると、彼女はいきなり『私も旦那様にお話しなければならないことがございます』
 彼女の美しい笑顔でそう言われたものだから少しよくないことを考えてしまった。
 着物を口に当て、ゆっくりと唇を動かす。


 空いた掛け軸の奥に進むと、やけにそこがゾワッとなるほどひんやりとしていた事に気づく。
 何を言っても言い返さなくなる彼女がただただ不気味で堪らなかった。

 彼女が突然その場で止まる。
階段は、続いているしまだ先があるのに

彼女は、右の壁に指を指し、笑顔で言う。

『あれは旦那様の一族の皆様でございます。』

壁には、大量の骸骨が飾られていた。
思わず、声が漏れる。

彼女は、そんなことも気にせず、話続ける。

『旦那様の席はあちらにございます』

そこには、何も飾られていない台が一つ。
どこからか空腹を迎えただろう音が鳴り響く。
同時に冷や汗が止まらない。

足を前に逃げようとした。
でも、無理だった。
その時には足は…

体制がすべて崩れる。
情けない声が漏れる。

彼女は、笑顔になる。
振り上げたそれな鋭い爪なのか牙なのか、はたまた凶器なのか。
わからな…


           タイトル:たった一つだけ

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