胃弱

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3/28/2024, 8:45:56 PM

 そんなに見つめられたら、恥ずかしいわ

 私、あなたの事は確かに好きよ
イケメンで声も良くてスーツがよく似合ってる
でも私、彼を忘れられないの。
 
 私のことをちゃんと見てくれて、話しかけてくれて優しい彼。

 彼が私を愛してくれるように私も彼を愛していた。

 見てしまったの。
 ある日、彼が他の女といるところ。
 子供もいた。
 
あぁ、彼は私のこと何にも思ってないんだって。
仕事だけの関係。そんなの…
私は、愛してるのに

 でも、結局彼はここに来る前までずっと私のことを見てくれたわ。嬉しかった。
だから、お願い。

 彼を返してよ


全く、この女。やっぱり気が狂ってやがる。

 一家全員を殺した挙句、旦那さんの死体を持ち帰るなんておぞましいことをしておきながら、反省どころか自分は悪くないと思ってやがる。
          
とある刑事は、そう言って部下の一人に愚痴を零した。
            タイトル:見つめられると

3/26/2024, 5:14:04 AM

なんでかな
こんなにも見慣れてしまったのにまだ、好きになれないなんて…。

ここに来てから何年経ったかな、

狭いようで広いこの部屋から見えるのは、毎日変わらない同じ景色。

周りからは、悲痛にも似た叫びと早くここから出たいという悲願の声。

周りの人間は、そんなことも知らずにただニコニコ笑っている。

でも、僕らはそんな人間達に必死に呼びかける。

声なんて届かないのに。

あぁ、やだな。
早く僕をここから出してくれないかな
好きじゃないよ。こんなとこ。

ずっとここにいるから分かるんだ。
この先に待ってる僕の運命。

たすけて。そんな言葉もきっと届かないよね。


ショーケース越しに見えたのは、不貞腐れたように下を向く年配の犬だった。
ペットショップに犬を見に来ただけだったんだ。
でも、どうしてもこの子が目から離れなかった。

ありがとう。とても楽しかったよ。
○○。ゆっくり休んでね。

好きじゃなかった人間が好きになれたような気がする。

          タイトル:好きじゃないのに

3/13/2024, 6:32:32 AM

 『貴方の事、もっと教えてちょうだい。
 とても興味があるわ』
 
 こんな事を聞かれたのは初めてだ
 
 私はこの仕事を長くやってきたつもりだ。
 だからこそ、こういう仕事は早く終わらせてしまいたいと考えている。

 だが、そんな純粋な瞳で見られてしまってはその質問に答えなくてはならないではないか。

 本来では、こんな事は仕事上許されない。
 
 だけど何故だろうか。
 君とは長く話をしていたい。

 私は気付くと、君に色々な事を教えていた。
 好きな食べ物、最近ハマっていること、仕事の事…。
 時間はあっと言う間に過ぎていた。

 久々に楽しいと思えた。
 同時にこの仕事を遂行しなくてはいけないという苦痛がやってきた。

 慣れない。いや、慣れてはいけないのかもしれない。

 ついに時間がやってきた。
 
 時が来たことを伝えると君は何故か笑顔を見せた。
 何故、そんなに嬉しそうなのか聞いてみた。

 『ふふ、だってずっと待っていた人がようやく迎えに来てくれたんだもの。嬉しいに決まっているわ』
 
 わからない。だって君と私は今日初めてあったばかりではないか。
 
仕事を始める前の記憶はもちろん覚えていない。
だからといって、これとはきっと関係は無い筈だ。

『ねぇ、死神さん。聞いて。私ね、ずっと前にとある約束をした人がいたの。
 その人は、とても勇敢でどんなに危険な場所でもお国の為に頑張ってくれてね、ある日その人に言われたのよ。
 必ずこの国を守って、君が安全だと思える場所にする。だからそれまで待っていてくれって。』

『だけど、結局その人とは会えないままだった。哀しくて泣きたかったわ。
でも、この年齢になるまで頑張ったのよ。ふふ。
あの人と一緒に残した宝物。今ではすっかり大きくなって、私に孫まで見せてくれたわ。
貴方にも見せたかったわ…』

 最後の方だけは、小さな声で言われてしまったので聴き取れなかった。

 彼女の話は、何故か分からないが胸に響く。

 そろそろ本当に行かなくてはならない。

 さぁ、一緒に逝こう。なるべくゆっくりと。
 次は君の事を教えてくれ…
 君といると何故か安心するんだ。

 そう言って、私は美しい彼女の手をとった。
           
            タイトル:もっと知りたい
 


3/10/2024, 10:39:23 AM

 誰かを愛せば平和を求めてしまう。
 では、誰も愛さなければずっと平和なのではないか?

 そう考えた私は、長年の研究で生み出した兵器を手に取り、外に出た。

 外は私の思ったよりも残酷だ。
皆が平和という言葉に惑わされ、自らの為に誰かのために戦っている。
 母国のため、家族のため、恋人、友人…沢山の思いを

 安心したまえ。私が全てを終わらせよう。
そもそも平和など願わない事が平和というものではないか。愛など

 手に持った兵器を使えば、世界はきっと静かになるだろう。
 
 そう言って、私は兵器を空へと打ち上げた。

愛することを忘れなさい。
              タイトル:愛と平和

2/29/2024, 9:09:16 PM

 この列車は、どこへ向かっているのだろうか?

 私は、なぜこの列車に?

 古びた屋敷のような木の匂い。
 薄暗い車内。飛び回る蛾のような蟲。
 まばらに座る人達。
 年齢層は、バラバラで
 顔は暗くてよく見えない。

 行き先の名前は表示されていない。
 代わりに終点という文字だけが配列されている。

 そのせいか列車は、一切止まらずに走り続ける。

 頭が痛い。
 お腹が空いた。
 家族は、どこに居るの?
 友達は?
 みんな、どこ?

 私は、なんでここに?
 思い出せ。
 頭はどんどん痛くなる。
 
 不意に列車の扉が開く。
 奇妙にもそこには誰もいない。

 気付くと、周りにいたはずの人達も居なくなって 
 いる。
 すると、車内にアナウンスが流れる。

 お客様。お忘れ物御座いませんように
 お降りください。
 
 
目が覚めた。
 ここは、病室?

 あ、そうか私…
 あの時、急いでいてそれで車に…

            タイトル:列車に乗って

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